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Tony Leung in OSAKA02

Report  受け身から制作者へ ・トニー退場


M:まあこれからもますますご活躍いただきたいと思いますが、今度はどんな役にチャレンジされたいですか。
T:(生き返ったように)実はいつも思うんですが、我々役者はどちらかと言いますと、非常に受け身の立場にいると。なぜかというと、監督は大体脚本があって、ひとつの役があって、この役はトニーに合うんじゃないかと出演を依頼してきます。もうひとつには自分自身がこういう役をやりたいと、そこで自分がいろんなことを考えて監督に(働きかけて)役を取るというやり方もあります。いずれにしても非常に受け身な立場にいるわけなんですね。そこで、この映画に出演後に、昨年、私もいろいろ考えました。これからどんな役をやるのかについてはあまり考えないことにしますけれども、これからどちらかというと役者以外の仕事、たとえば現場の制作とか、そういう仕事も多少携わっていきたいなあと考えています。実はちょっと下心がありますけれども、こういうことがだんだん解ってきますと、今度自分がこういう役、いいんじゃないか、と思うときに、積極的に、これもやりましょうということになれるんじゃないか、というふうに思っているからです。

 この少し長い言葉を言い終えたとき、あからさまに(はー、全部言えた、終わった)とホッとした表情になったのが笑えました。ほんとに俳優なのかしら、くくくう。カメラがないとふにゃふにゃなのね……。

M:それはとても楽しみにしていますし、大阪でもこんなにたくさん、もっともっと今日は入れなかった人がいっぱいいらっしゃって、ファンが応援していますので、ますますいいお仕事をして、素敵なトニー・レオンさんをどんどんスクリーンで拝見したいと思います。
T:多謝(ありがとう)。
M:ありがとうございました。どうぞ大きな拍手をお送りください!(拍手)

 退場していくトニーに、最前列右手の女性がすばやく黄色い封筒のファンレターを渡した。何気なく受け取るトニー。あーーーーん、いいなあ! 羨ましい〜〜!!
M:周さんどうもありがとうございました! 周さんでした!(拍手)

 Wish you were here...


 トニーが右手にマイクを持って話しているとき、左手の落ち着きのないこと! 脇腹をいじる、ジーンズを抑える、胸のあたりを触ると、ちっとも落ち着かない。「ああもうちょっと、じっとしときなさい! 活動亢進症の小学生ですかあなたは!」と叱り付けたくなるくらい。あーたはカンヌ映画祭まで行ってて、こんな小さな会場で緊張する必要全然ないのに、何でそんなにモジモジ、そわそわしちゃうの?  本当に38歳の大人の男性には見えないのだった。

 周さんが日本語訳中、一応会場をまんべんなくキョトキョト見渡すのだが、目の焦点が合っていなかった。講演会のエキスパートともなると、3列目か10列目ぐらいでリアクションの大きい人を見つめながら話すと落ち着いて話しているように見える、というテクニックを身に付けているのだが、トニーってほんとに不器用……(^_^;)

 ここまで虚勢やツッパリや男の威厳に縁がなく、純粋培養された人間ってのも珍しい。いろんな人に可愛がられ、守られてここまで来ちゃったんだろうなあ。だんだんリラックスしてくると、後ろにもたれかかって、だれーんとなってしまう。80歳の爺さまと化して「男だったらシャンとしろ、シャンと! 近頃の若いのはまったくなっとらん。軍隊に入れて性根を叩き直す必要がある! ワシの若い頃はおまえ……(以下略)」とぼやきたくなるというものだ。

 2回目の挨拶のときは、当初中央に立っていたのに、少しずつ通訳の周さんにへばりつき、周さんもとまどってどんどん司会の森川さんの方に体をずらし、右に右にと3人とも移動してしまったそうだ。まったくもう、飼い主にへばりつかないと安心できない甘えんぼの子犬なのよトニーってやっぱり(T_T)

 でも。nancixは思ってしまった。この瞬間が永遠に続けばいい。永遠にトニーが目の前にいてほしい。彼の一挙一動を見つめているときが最高に幸せ。トニーがnancixのことなんか全然気がつかない、見つめない、透明人間みたいに感じててもいい。見させてほしい。笑顔だけじゃなくて、怒り顔もしんどそうな顔も不機嫌で人殺しさえしそうな険悪な顔も、全部ひっくるめて、ずううううっと見とれていたいのに。どうせ触れることもかなわない、下手に声かけたらびっくりして怯えてしまわれそうな相手だから、そうっとそうっと、ただ見つめていたいのに。

 そういえば2回目は映画上映前だったので、退場のときに客席に向かって「睇戯呀(映画見てね)」と小さく言って去っていったらしい。お得意の「掌を結んで開いて、イ尓好(ねいほう)と小声で囁く」攻撃も出たらしい。あーあ、いーなー、1回目はとてもそんな余裕がなかったトニーだった。取材で小難しいことばかり聞かれた後で緊張してたんだろうか? 李登輝前総統についてコメント求められたか? まさかね(^_^;)

 良識と”得する”ということ。


 舞台挨拶後、いったん外に出る。2回目の観客らはとんでもない非常階段に押し込められていた。そこからだと控え室を出入りするトニーが見えないから、キャーキャー言う声が中まで聞こえないと踏んだのだろう。その非常階段に、外から回りこんでPさんに渡したいものがあったのに、外に出て見るとその非常口が見当たらない。仕方なくいったん職場に戻って、経理の目を盗んで掲示板に第一報を発信した。1時にシアタードラマシティに行くつもりだったのに、そうこうしているうちに1時になってしまった。あーあ。再度茶屋町のテアトル梅田近くまでとぼとぼ戻った。紫乃香さんらと合流でき、みんなでまたまた中華料理店へ。トニーの服装や挨拶内容をみんなで思い出す。…意外に思い出せないものである。あんなに見つめていたのに、前髪を右、左、どっちに流していたかさえ思い出せない。スケッチすればよかったと心から後悔した。

 「最前列だからと、禁止されてたファンレターを渡したり握手してもらった人もいた」とBさんが表情を曇らせて言う。トニーも慣れた手つきで、ファンレターをちゃんと自分の手で受け取っていたそうだ。「私は、注意されたことをちゃんと守らなきゃ、トニーが信頼してくれてるならその信頼に応えなきゃと思うタイプ。でもなかにはサインでも握手でもやっちゃった方が勝ち、ぐちゃぐちゃ言うならあんたもやればと勝ち誇る人もいる。ヤリ得が許されるんなら、私が我慢しているのは何のためなんだろ。考えてしまう」

  ……そうだね。誰もが「ヤリ得」と自己中心的になったら、あんな狭い会場ではたちまちパニックになってしまう。nancixの隣の女性がいきなり立ち上がって両手を振り回したときも、上着の端を引っ張って座らせようかととっさに身構えた。
  群集心理は確かに怖い。つられてみんなが立ち上がったら、スタッフは怒鳴って鎮圧に取り掛かるだろう。立たなかった人も嫌な思いをさせられる。もうレスリーコンサートの握手タイムみたいに、少しでも自分がいい思いをしようと殺気立った群集の中にいるのはまっぴらごめん。
  …昔、東京での映画祭での行列で、いろんな有名人と並んで撮った写真のアルバムを見せびらかして自慢してた人もいたっけ。憐れにしか感じなかった。有名人は人一倍のあらゆる努力をし、それなりの犠牲を払って有名になった。で、あなたは何なわけ?

 良識なんて、しょせんは人によって基準が違う。ただ、自分だけがいい思いできたら、他の人が不快な思いをしても平気、関係ないとはnancixは思えないだけ。自分を嫌いになる、みじめな気分になるようなことだけはしたくない。人間としてのプライドはあるから。
 Bさん、いまのnancixはそれだけしか言えないの。自分でよく考えてみてね。 自分で考えて「私はこうする」と決めること…それがきっと、あなたの人生をよりよいものにするはずだから。

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