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Report |
司会はシネマコミュニケーターを名乗り、試写会司会や新聞・雑誌の映画評執筆、来日記者会見の司会などをこなす森川みどりさん。朝日新聞夕刊に月1回程度「森川みどりの金曜日はシネマナイト」という連載を持っている。まあ、ひところの木村奈穂子さんのような存在だ。でも東京のそういう関係の女性よりはよっぽど突っ込みが鋭い。頭がいいのだろう。ことアジア映画に関しては、彼女の中央進出を心から願う。
彼女に続いてトニーか?と首を伸ばすが、まだ来ない。(偉仔、快的らー!快的快的來!)と口の中で呟く。森川さんのコメントは、悪いけどほとんど聴いてなかった。
スーツの男性がスタンバイ。その横に、あっあのグレーのジャージ素材パーカーは! ぱりっとしてるけど素材がカジュアルなあの姿は間違いなくトニーだ!!と直感した。早く来てええええ!
やっとトニー入場。ジャージ素材のパーカー、その下にオレンジ色のTシャツがのぞく。下半身はストレートのブルージーンズ。インディゴブルーが鮮やかだ。靴は見えなかったけど、2回目に入場した友人の話によると皮革製スニーカーだったという。はああ、とりあえず体育教師のようなジャージに靴下にサンダルじゃなくてよかった。まったくもう、舞台挨拶の服装までファンに心配させるのってトニー、あーたぐらいよ?
トニーはひょこひょこひょこひょこ…と効果音をつけたいほど軽い足取りで森川さんの横へ。続いてスーツ姿の真面目そうな中年男性が入ってきた。通訳さんだ。
森川さんが「通訳は周さんです」と言ったので、直感的にあーチャウ・ガーサム周家[王探]さんだ!と思った。東京の文京区かどこかで中文研究所を開いていて、友人が広東語や北京語を習っていたはずだ。京都大学卒業なんだって。滑らかな日本語は折り紙つき。安心できるなあ。
以下は質疑応答の採録である。
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トニー登場!
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森川(以下M):みなさんこんにちは、雨の中大変だったと思います。ただいまから舞台挨拶を始めさせていただきます。司会の森川みどりです。どうぞよろしくお願いします。
昨日聞いてましたら、この発表が夜だったでしょ、確か。新聞の夕刊に出てたん違います、「整理券配布」って。みなさんはそれから、整理券を取りにここまで来られたんですか? 来られたんですか。あっりがとうございます、もうトニーに成り代わりまして、お礼を申し上げます。あーそうですか。じゃあもう入れるのがわかったときにはむちゃむちゃ嬉しかった(のでは?)…このへん(最前列)なんかはものすごく大変そうじゃなかったですか? 大丈夫でした? そうですか(客席、ノリが悪い)。
今日は結構大人の女性が多いのでしっとりしたムードで、この「花様年華」にふさわしい、チャイナドレスかなんか着て来ていただければなおよかった、思われるような、そういう感じですか(反応なし)。そういう雰囲気で行きたいと思います。…あんまりお待たせしても何ですので、それではさっそく、お迎えいたしましょう。(色めきたつ客席)えーいいんですか、拍手の準備は。よろしいですか?(ここで扉の向こうにトニーがちらりと姿を見せる。ああああーーーと声にならない声……あ、nancixの声か、これ)
トニー入場。黄色い歓声上がる。拍手と「トニー!」の声。森川さんの声聞こえず。男の声でも「トニー!」の声が混じる。愛されちゃってるよトニー、たはは。
M:…思い切り今の間に発散させてください。…ご声援ありがとうございます。よろしいですか、もうそろそろ? 始めさせていただいて。
それでは周さんの通訳でよろしくお願いいたします。
周:こちらこそ、ありがとうございます。
M:まずそれでは、トニー・レオンさんからご挨拶をお願いいたします。
トニー(以下T):(周さんからマイクを受け取るが広東語で何か小さく一言言ったきり、客席に向き直り、言葉に詰まっている)…(笑い)
T:マイド。
客席爆笑と拍手。トニー照れてれ。「郷に入っては郷に従え」を一生懸命実践してくれたんだなあ。できれば対になる言葉「おおきに」もマスターして欲しかった!
T:あー、(後は広東語)今日、ここで大阪のみなさんとお会いできて大変うれしいと思っています。大阪で仕事をするのは僕にとって初めてのことなんですが、今後またたくさんの機会があって、また大阪のファンのみなさんとここでお会いできれば、うれしいなと思います。
通訳さんは律儀に「毎度」から訳し始めて観客の笑いを誘う。森川さん、「それは訳さんでもわかります」と突っ込む。
通訳が終わると森川さんら二人も観客も、トニーの次の言葉を待つが、トニーは(これで僕の挨拶、終わり。言うことないよー)と目で訴える。客席、笑う。
M:ありがとうございます、もうあとは、よろしいですか、ご挨拶のほうは。
T:終わります。(笑)
トニーの言葉が「ごーやう」と聞こえたような気がするのだけど、没有(もうやう)って言ったのかな? 我唔有(ごーんーやう)?
M:さあそれでは、いろいろとご質問をしていきたいと思います。みなさん映画をいまご覧いただきまして、もうね、すっごい大人の愛を感じていただけたことと思いますけど、こういう役は初めてですね?
森川さんが話し終えるや、周さんの通訳も終わる。すごい。見事な同時通訳。事前に質問事項についてかなりの打ち合わせをしていたに違いない。
T:えー、若干浮気、不倫というようなニュアンスの役、そして中年の役というのは、僕にとっては初めてのチャレンジでした。
M:しかも60年代が舞台ですから、多分トニー・レオンさんが生まれはった頃が舞台になってるんじゃないかと思うんですが。役作りというのは結構大変でした?
T:えー、確かに僕は生まれたのは60年代でした。小さいとき、この60年代というのはまだ結構印象に残っています。その当時の住宅環境だとか、近隣の人たちはどんな姿をしていたとか、自分の父母が会社に出掛けるときにはどんな服装をして行ったというのも、はっきりと印象に残っています。ですから幸い、60年代に対する印象は結構ありますので、役作りに関してはそれほど苦労はありませんでした。いちばん苦労したのは、映画のなかの衣装を着るときと、何より大変だったのは、この頭の髪型をジェルをつけてこう固めてですね、臭いが染み込んで何日洗っても取れないのにはほんとに参りました。(笑)
いろいろ言った後に「まあそう言えば…そうだね(おっしゃる通りですね)」と訳わからんしめくくりをするトニーに、客席思わず笑う。「トニーの両親が会社に出掛ける」ときは…のくだり、もしかしたら「返工」で「仕事に出かけるときは」じゃないのかな? トニーのママは外に勤めに行ってたけど、パパの方は家内制手工業か何かやってたと…。周さんはおそらく企業トップの通訳などもするので、つい「会社に行く」と訳してしまうんだろう。
またまた髪をポマードで固めた(ジェルじゃないのよ周さん)苦労の話が出ましたよ。この話を世界中で繰り返してるな、きっと。しかし我々が生トニーの口から聞くのはこれが初めて! じーん。ちゃんと笑ってさしあげました。
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| ヒゲの謎とショートフィルム |
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M:あのー、ホームページを拝見したら、ひげを生やしたシーンをちょっと見まして、で、このシーンから映画が始まるみたいなこと聞いてたんですが、映画の中にはなかったですねえ。そのへんのいきさつを伺いたいと思います。
森川さん…びっくり。いったいどこのHPを見たの? 香港の?
T:実は花様年華という映画のストーリーは、撮影している間にどんどん変わったんです。当初はこ ういう構想もあったわけなんです。映画の構成が、60年代を主軸に撮ってるのですが、90年代の部分も撮ってそれで(1本の)映画を作ろうという考え方だったんです。映画の中で実際僕とマギーは(この)二つのパートにおいて、二つの役をやるという設定もありました。ストーリーも違いました。
しかし60年代の部分については先ほどみなさんがご覧になった映画でじっくりお楽しみいただけたかと思うんですが、90年代の部分は実は私がひげを生やして出演することになりまして、スーパーの中で買い物をして、どちらかというとフェイ・ウォンが(「恋する惑星」で)やったような役の感じの演出だったんですけれども、しかし撮影していくうちに、何となく60年代の方がより面白いなあということで、どんどん60年代のほうの撮影の方が中心になってきました。
で、90年代の部分を実際に撮影したのは、ほんの2、3日だけでした。そこで撮ったフィルムが実はあるんですが、王家衛監督はこの部分については一本のショートフィルムに編集し直して、今年のカンヌ国際映画祭に出すことに決まりました。そこでまた、いずれ近い将来、みなさんの目に触れることができればいいなあと思っています。
この話に出てきた現代編、実は韓国版のスタイリッシュなコラージュポスター(左)に登場していた。右のヒゲトニー2つもそのポスターからの拡大である。
通訳中に口にこぶしを当てて、小さな咳をしたトニー。風邪かな? 飛行機内が乾燥してた?
いやーしかし今年のカンヌにショートフィルムを出すなんて初耳。最近決まったことなのだろうか? 「ブエノスアイレス午前零時」みたいな形式? あれは王家衛以外の人が編集し直したドキュメンタリーだけど。とにかくまたトニー&マギーが見られるとは。思わず拍手する我々であった。
M:ぜひ拝見したいですね。ひげを生やしていらっしゃるトニー・レオンさんって、どんな感じなんでしょうか。ご自分でご覧になってどうだったんでしょう。
T:好(とても)……(考え込み、どもりながら)どちらかというと、なんか怪しい感じで…ちょっとスケベな男。
ハムサッロウと言ったトニー。ハムサッロウとは痴漢やセクハラ男を指すこともある広東語。観客大笑い。
M:…それはぜひ拝見したいです。
T:ちょっと見てください、とても笑えます。
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こういうの?それとも
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こっちかな? いっそ…
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これなら可愛い?
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| カンヌ受賞後も変化なし・王家衛は神秘的監督
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M:カンヌ国際映画祭の話が出ましたけれども、この「花様年華」で、主演男優賞を受賞されまして(観客、拍手)、ほんとにおめでとうございます!
受賞されて、生活とか回りの様子が、変わりました?
カリーナとうまくいかなくなりました…なんてことはもちろん言わない。でもトニーがあの頃の取材責め・パーティー責めを思い出して、ちょっとげっそりしたように見えた。
T:実際は特に変化はありません。従来どおり、映画を撮ってますし。
M:そうですか。王家衛監督とは今回で5本目……5本目でよろしいですか、この作品が。どんな監督ですか。
T:えーーー…。大変神秘的な監督と言っていいでしょうか。いつも監督の目を、そのまま見ることができません。サングラスをかけているからです。(笑い)しかも撮影のときには一言も言わない人なんです。たとえば我々役者が芝居をしているときに、監督はひたすらモニターの前で、じっくりと、見つめるだけです。しかも撮影中、監督とあまり話もしません。いつも思うんですが、監督は果たして何か考えているのか、それとも居眠りをしているだけなのか(笑い)。
このへん、一言ずつ区切って周さんに訳させるトニー。さっき一気に話しすぎたと感じたかな?
T:これはおそらく長年、王監督と仕事をしてきたおかげなんでしょうか、お互い暗黙の了解といったものがありまして、監督以外の、たとえばスタッフのみなさんとも暗黙の了解というものがありまして、従って実際の撮影に入りますと、あまり話をしなくてもうまくいくという状況でした。
この部分は一気に話すトニー。口調も歯切れがよくなってきた。だんだん調子が出てきたか。
M:今回の映画は特に、じっくりと撮ってらっしゃる、今まではわりと、(カメラが)動くシーンが多かったように思うんですけど、今回はじっくりと撮ってらっしゃるように思ったんですが、それだけにスタイリッシュすぎて、二人で演技しているのに足しか映っていないという、わりとパーツしか映っていないとか(笑)、そういうのは最初から、足しか映っていないとかわかるんでしょうか。
うーん、訳すのに難しい質問。ちゃんとトニーに伝わったでしょうか。
T:実際はそうじゃなくて…撮影するときには足だけじゃなくってほんとにいろんなところを、いろんな可能性を含めて撮ったわけなんです。たとえば指先とか髪の毛とか、こういったところまで実は撮影をしたわけなんです。たとえば一つの芝居(シーン?)に関しても、いろんな角度からカメラを撮ったり、あるいはいろんなアングルから撮ったりしまして、一つの芝居に関してはいくつかのいわゆる表現が可能になるわけなんですね。ですから決して足だけではなくて、いろんな可能性を秘めながら撮ったわけです。もしそうじゃなければ、この映画に関して40万フィートのフィルムを使うことがなかったでしょう。
M:そんなに長く! そうですか。
T:実際普通、一本の完成したフィルムを上映するときに、長くても1万フィートというのが一般的な話なんですけれども。そういう意味で、たくさんたくさんのものを撮りました。
トニーが好多好多[口野]ーと繰り返して強調すると、周さんも「たくさんたくさんのもの」と繰り返して強調。忠実で信頼の置ける通訳さんだなあ。
M:単純計算で40本分ですもんねえ。
そんなこたーない。照明や録音がうまくいかなかったりNGがあったりしてるはずだから。あんまり素直に森川さんが感心するので(素人にウソ教えてしまった)とトニーあせる。どもるし。
T:あー…そうですねえ、そ、そこまではいかないかもしれません、4、5本ぐらいは…(笑い)
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| マギーの魅力とトニーのエッチな手 |
この格好だものね…。
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このポスターと同じシーンは
実は本編にはない…
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肩を愛撫するこの手が最高にエッチ。
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M:(笑い)そうですか、どうもすみません。あのー、マギー・チャンさんが、テレビでご一緒されたこともあって、今回ぜひ映画は初めて一緒にするけど、トニー・レオンさんを相手役にとおっしゃったと聞いてるんですが、マギーさんはどんな方なんでしょう。
T:マギーとは確かに、映画で共演するのは今回が初めてだと思います。彼女は大変聡明な方で、非常に知性に富んだ、素晴らしい女性だと思います。僕にとってはほんとに相手役としてもいい方だと思います。なぜいい相手役かというと、実は現場で、何度も僕がNGを出したときに、必ず隣に来て励ましてくれるんです。すごくいい相手です。
非常に彼女は忍耐力のある女性でもあります。映画の中で彼女のヘアスタイルと衣装、その化粧などを含めて、(準備に)一日5時間はかかります。(ひえーっと観客が息を飲む)
M:すごいですねえ。でもあのファッション…(トニーがもう話し出していたが気づかない)、めちゃめちゃかっこよかったですよね。60年代の女性ってのはあのチャイナドレスはみなさん着ていらっしゃったんですか。
T:あー、僕のママが着ているのを確かに見ました。…ママが仕事に行くときにもチャイナドレスを着て行くのを僕は見ました。おそらく当時のいわゆる普段着といった感じだったのでしょう。
M:へえ、そうですか。そしたら別に、特別に、(日本の)着物着て!というそこまでの印象じゃないんですよね。
こ、これも訳すのが難しい質問…たぶん周さんは、日本の和服のような伝統衣装と言うわけではなかったのかとトニーに聞いたのでしょう。
T:僕が思うに…伝統的な衣装であることは間違いないですけれども、この件に関しては日本の和服を着るときの印象と同じような感じだと思います。
M:後ろからこう抱きしめるシーンとか、すっごく官能的と言いますか、それからトニー・レオンさんの手が!色っぽい手ですよねー。
通訳を聞いて一瞬きょとんとし、え?そう?とばかりにはにかみ笑いを浮かべながら、自分の手を眺め直すトニー。客席爆笑。
M:お手入れとか、演技とかあったんでしょうか。
T:(言葉に迷いながら)僕はしないよ。男の子がそんなのやったらすごく可笑しいじゃないか…。
M:(トニーがかざす手を見つめながら)この手ですよねえ。ちょっとみなさんに…もしよろしければ(客席から歓声)
トニー、客席に向かって右手をかざす。
T:(照れてれで、仕方なく)この手だよ。
客席からどよめき。
M:(笑いながら)すごいエッチな感じがしたんだけどね。映画を見た後だから余計ですよね。
T:(言葉に詰まって照れ笑い)
いやー、ほんっとにいじめがいのある男です。うくくくく。森川さんナイス。しかしエッチって軽ーいセクシーの意味だけど、周さんそう訳してくれたよね? 変態のへじゃないのよ。
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