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Tony Leung in OSAKA01
Report 

映画館前に置かれた立て看板。急遽作ったらしい手作り告知が泣ける。 それは、1本の電話から始まった狂想曲だった。

 2001年4月20日(金)。その日は前週までの多忙な仕事が一段落し、来週からの地方出張のスケジュールがなかなか決まらず、焦ってるような、どうにかなるやろのあきらめ気分のような、居心地のよくない日だった。

 最初は昼前ぐらいに携帯電話に電話がかかってきた。関西のトニーファン仲間のSさんから。「東京のPさんが、今日大阪に来るって言ってるんですよ〜」。へ? どうして? ああそうか、数日前にトニーが大阪にCM撮影に行く、「花様年華」のプロモーションもする、すでに取材スケジュールでいっぱいだと香港の新聞取材で言ったから? でも昨日、「テアトル梅田」に偵察に行ったけど、何の告知も出てなかったけどなあ。

 Sさんと話すうち、もしも空振りならPさんどうするだろう…と心配になった。とりあえず、心斎橋で開かれるチャイナドレス展示会の催しと、北浜ライオンズホテルの「花様年華」スペシャルメニューの知らせをPさんにメールし「空振りでも週末を大阪で楽しんでくださいね」とメッセージを添えた。まもなく返信が届き「トニーとマギーと同じぐらい小心者の私はまだ関東にいます」と書いてあった。はああ、気がもめるよねえ。

 思い切ってテアトル梅田に電話してみた。丁寧に質問するやいなや中年の男性が「ああ、その件なら松竹に聞いてくださいね!」と突っぱねるように言う。何度も問い合わせが入ってうんざりなんだろうなあ。だから嫌なんだ、映画館や映画会社とコンタクトするのは。ファンなんかどっかから湧いて出てくる害虫としか思ってないから。観客動員数は上げたいが、コアなファンは邪魔で目障りだってんだろ。

 昼食を終えて職場に戻った3時半すぎ。またSさんから電話があった。「実はいま、テアトル梅田で並んでいるんです」……ナンですと?「配給会社に電話したら、とにかく今夜7時からテアトルで舞台挨拶の整理券を配るって」「そんなの、いつ決まったの!」…後からファンのみんなの証言を総合すると、前日までトニーの予定がはっきりせず、20日にようやく確定して松竹で会議だか打ち合わせだかが持たれ、緘口令を敷きながらもテアトル梅田で着々と準備が進められていたようだ。映画館前と中に舞台挨拶の告知が張り出されたのは、3時過ぎからだったという。
 「とにかくいま、トニーファンのみんなに集合をかけているんですが、nancixさんも協力して並んでもらえます?」「わかった、ぎりぎりになっても何とか間に合うように出るから」。
 あせりまくり、無理やり営業部から資料を分捕って仕事を片付け、直帰すると伝えて職場を飛び出した。

 午後5時半過ぎから梅田ロフト地下の「テアトル梅田」ロビーに並んだときは、すでに列の真ん中あたりだった。長身の端正な顔立ちのお兄ちゃんが叫ぶ。「整理券は1人2枚までです、テアトル梅田の前売り券をお持ちの方しか受け取れません」。くそー、ここの前売り券は随分前に買ってあるのに、枕元に飾ったままだよ。あわてて隣の女性に荷物を見ていてもらえるよう頼み、前売り券を買いに行った。とにかく2枚確保するのだ。列の最初にはSさんや紫乃香さんら、おなじみのメンバーが固まっていた。お兄ちゃんがまた叫ぶ。「舞台挨拶は1回目は8時50分、2回目は11時15分の2回あります。1回目と2回目の両方を見ることは不可能です。1度しか入場することはできません。あらかじめどちらの回を選ぶか決めておいてください!」あれえ、モーニングショーがあるのは23日から、と昨日までロビーのポスターの上に張り紙してあったのに。…Sさん、どーするー?「東京からのPさんを待たなきゃいけないし、私たちは2回目にします」…みんなが? じゃあ誰かが1回目をレポートしなきゃ…nancixは午後1時から予定があるし、一人になっても1回目にしよう。幸い、ファン仲間が京都から駆けつける友人Aさんを紹介してくれ、一緒に入場できる見通しがついた。

 荷物を見ていてくれた隣の女性とおしゃべりを始めた。彼女は王家衛映画ファン。夕方4時に夕刊を見て、自転車でここまで駆けつけたそうだ。nancixは職場に届いた夕刊を見るヒマもなかった。そのまま残業して深夜に帰ってたら、神戸の自宅で絶望し泣き沈んでいただろう。Sさんサマサマである。

 お兄ちゃんが再び説明を始める。「明日の舞台挨拶では写真撮影は禁止です。写真を撮る人が一人でもいれば挨拶は中止させていただきます。花束、プレゼント、ファンレターもご遠慮ください。ロビーで預かることもできませんのでご了承ください!」……キッツー! 何のための舞台挨拶なわけー? 混乱を避けたい、時間どおりに上映を進めたいということなんだろうけど、形だけのファンサービスなら要らんわあ。この映画館が出来て以来、何度辛抱強く並んで並んで見に来てやったと思ってるのよ。「いますぐ抱きしめたい」の再映、「欲望の翼」「恋する惑星」「天使の涙」……「さらば、わが愛〜覇王別姫」もここだっけ。「恋する惑星」なんか小さい方の劇場で上映を開始し、立ち見だらけになって、途中であわてて96席の方にチェンジしたのをちゃーんとチェックしてたんだからね。ここまで長い間ご愛顧くださったお礼として、トニーと握手させてくれたっていいくらいよん!(ないないってそんな特典)

 隣の女性とトニーや王家衛映画の話に興じる。やたら「すっごいトニーファンなんですねえ」と感心された。ううう、トニー映画鑑賞体験が、長年こびりついた垢みたいな気がしてきた。

 ようやく7時。整理券配布が始まった。やはり2回目を希望する人が多い。それでもnancixがGETした1回目整理券は32・33番。並んだ全員に2回分の整理券が行き渡ったが、まだ券は余っているようだ。やだなあ、96席さえ全部埋まらなかったら。それでなくても世界じゅうを回ったトニーにしてみれば、世界でいちばん狭くて小さい舞台挨拶会場じゃないだろうか。はああ、情けない。中国大陸の北京戯劇学院講堂を熱狂的な学生や映画ファンが埋め尽くした、あの熱気と興奮をまさか求めはしないけど……香港・台湾でボロ負けし続けた王家衛を支持し続けてきたのは、日本のファンとちゃうんか。

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問題の新聞広告告知
(朝日新聞夕刊)

 映画館を追い立てられ、外でトニーファン仲間が集結。スターバックスでお茶し、学生のYちゃんや、東京からのPさんが到着するのを待った。落ち合ってから、Pさんのホテルを探しにみどりの窓口へ。6千円台でその日の宿が見つかった。駅からも近い。Pさんラッキー。
舞台挨拶告知の拡大版。
 JR大阪駅フードコートの広東料理店「西苑」で夕食。元香港ヒルトンホテルシェフが腕を振るう店だ。4、5人分のコースを6人で分け、1品料理だけ追加。料理が来るまでにSさんとKIOSKに夕刊を買いに出た。毎日新聞がなぜか売り切れていたので、読売、朝日、日経新聞を買ってみた。読売の広告がいちばんでかかった。朝日も細いけど、舞台挨拶告知は載っていた。

  うーん、朝8時50分の回のことは何も書いてない。大丈夫だろうか。そりゃ満員の会場にトニーを迎えないと、関西人がすたるというものだ。「みんなで手分けして、掲示板に情報を書き込もうか」と話し合った。

 夜10時前にお開き。Pさんをホテルまで送り届けて帰途に着いた。帰宅できた11時過ぎだったが、先にノートパソコンを持参していたPさんがホテルから最新情報を掲示板に書き込んでくださっていた。午後10時半にも劇場に電話して、整理券状況を聞いてくれたのだ。あと5枚ずつ整理券があり、朝でも立ち見でよければ整理券を発行するという。すると今夜は映画館スタッフは宿直か。オールナイトなんてめったにないミニシアターなのに、ご苦労なことである。これもトニーの計画性のなさのせい? 「同居蜜友」撮影のめどがつかなかったから?  とりあえず、思いつく限りの香港映画掲示板に舞台挨拶情報を書き込んだ。でもトニーファンって限られてるからなあ…ネットできるのにまだ知らない人なんているのかなあ(^_^;)

 いつ新情報がアップされるかと落ち着かず、HPの不具合を直したりしてたら眠れずじまい。結局一睡もせずに朝風呂に入り、午前6時の電車に乗った。少しは居眠りしようと努力したのに、アドレナリン全開状態。しかたないので自宅に昨日届いていたキネ旬ムック「フェイス トニー・レオン」を読む。…あ、抜けた字があった…トホホ…。
 阪急梅田駅の改札を出たところで、サンドイッチとホットティーで朝食を済ませた。

 21日の大阪は小雨。「花様年華」の夜の雨を髣髴とさせる。途中の東映系映画館前にも行列が出来ていた。並んでいるのは中高生ぐらいに見える。どうも「名探偵コナン映画版」のセル画が先着何人かにプレゼントされるので、アニメファンが並んでいたようだ。正直言って「花様年華」の今日集まる観客数は負けているだろう…(^_^;)  傘をさして映画館前へ。階段下を覗き込むと、灯りがともっていて扉が開いていた。一晩中宿直をこなしたスタッフもいたんだろうなあ。お疲れである。立て看板の文字は「立ち見整理券あります」に変わっていた。でもまだ並んでいるような人は見あたらないので、近くのシティーホテルのトイレを借りて化粧することにした。うわっ。梅田コマ劇場と同じ建物にホテルがあるので、劇場前に観劇ツアーの中高年が点呼しているところに出くわした。ひえー。  人々の間を縫ってようやくロビーのトイレへ。わっここにも若い女性がいっぱい。まさか出待ち入り待ちのトニーファンじゃないよねえ。

 8時前に映画館前で京都のAさんと落ち合えた。さっそく整理券を渡す。整理券をしっかと握り締めて階段を下りた。たむろしている人々。8時15分ぐらいからスタッフが呼びかけを始めた。あの長身のお兄ちゃんもいた。ちゃんと家に帰って寝たのかしら。目は充血してないけど。

 8時20分から整理券順に入場。何とか3列目の中央の席に陣取れた。トニーはどこに立つだろう。スクリーンの向こうから登場するのか?  上映は8時30分にスタート。最初に香港観光協会のCMが入るのだが、白いチャイナドレスの女性の腰のあたりを後ろからスローモーションで捉えている。おーい、パクリまるわかり(^_^;) 彼女に見とれる若者たちの一人がえらく端正で濃い顔立ちだな、と思ったらダニエル・ンー呉彦祖だった。あらまあ、元気イ?
 CMの後、すぐに松竹マーク。……やっとアンコール・ワットに日が沈み、赤い画面になって映画が終わった。わくわくわくわくわくわく。心臓が破裂しそー。スクリーン横の扉が開き、係員が黒と黄色のタイガースカラーのヒモを持って最前列を遮る。興奮した観衆が前へ駆け寄るのを危惧しているのだろうが、ヒモではいざパニックに陥ったらどうしようもないと思うぞ。

 人の出入りが慌ただしい。男性が顔を出すたびみなに緊張が走るが、似ても似つかない記者?やどっかの会社の人ばかり。10時半はとっくに過ぎた。「取材がおしています」とハンサムお兄ちゃんが言い訳する。何をもたもた。どこの社だ、首絞めに行きたい! このまま長引いて一言の挨拶で終わったらどうしてくれよう!  握りこぶしを作っていたら、やっと司会の女性が入ってきた。

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