Cycro
シクロとはベトナムの街角を走る三輪の人力車のこと。HONDAと呼ばれる日本製スクーターが普及してもやっぱりシクロはなくならない。考えてみたらエコロジーに最適な乗り物なのだが、車を曳いて走る人間にとっては重労働、タクシー運転手以上の高給でないと人権侵害になってしまうだろうな。

Cyclo Stuff&actors

監督:トラン・アン・ユン
キャスト:トニー・レオン(詩人)、レ・ヴァン・ロック(シクロ)、トラン・ヌー・イェン・ケー(シクロの姉)、グエン・ヌ・キン(女親方)
第52回ヴェネツィア国際映画祭(95年)で金獅子賞(グランプリ)と国際評論家賞を受賞。
96年8月日本公開
DVDは2001年2月23日にパイオニアLDCから発売。PIBF-1330、税抜\4700

Cyclo STORY
 ベトナム・ホーチミンシティでシクロ(輪タク)の運転をしている18歳の若者"シクロ"。彼の母は出産時に、シクロ運転手だった父は2年前、交通事故で亡くなっていた。僅かな稼ぎが一家を支え、彼は裏町で祖父と姉と弟妹と一緒に暮らしている。

  ある日、商売道具の車をヤクザグループに奪われたシクロは途方にくれ、女親方"に報告した。女親方"には知的障害のある息子がいて、彼女は息子を心からいつくしんでいた。シクロには「隠れ家に一時、身を隠せ」と指示が出る。シクロの監視役に女親方の愛人"詩人"が選ばれた。

詩人"は売春組織を運営していた。娼婦の一人にシクロの姉"がいた。姉は金目当てではなく"詩人"を愛したから売春を始め、処女のままアブノーマルな客の玩具にされていた。そんな女達を利用しコントロールする女衒が"詩人"の商売だったが、彼もまた、商売道具であるはずの姉"の献身的な愛に次第に惹かれていく。

  ある日姉"は詩人"とともに彼の両親を訪れた。喜ぶ詩人"の母親は「この子は小さい時から鼻血をよく出した」と思い出を語る。だが家父長として権柄づくでふるまう詩人"の父親は、ヤクザになった息子を許せない。せっかく訪れた息子を、父は容赦なく殴りつけた。

 シクロは力を欲し、自分もヤクザになりたいと願う。詩人"は彼に失望する。若者は窃盗や麻薬密売の運送などの悪事に手を染めていくが、完全な悪人にはなりきれない。彼は酒や麻薬に手を出す。

 ある日姉"が客に手錠をかけられレイプされた。処女を奪われ変態行為を強いられた姉"は深く傷つく。憤った詩人"は郊外のビルの屋上にその客を追い詰め、容赦なく刺し殺した。だが姉"にはもはや、取り返しのつかないことだった。虚無感と悔いの果てに詩人"は部屋に火をつけ、自殺した。女親方"の息子はふとしたことから事故に遭い、命を落とす。息子を抱きしめて慟哭する女親方"だった。

  シクロは元のシクロ運転手の生活に戻った。祖父と姉妹を輪タクに乗せて走る彼の周囲には、豪華な高層ビルとスラム街が雑居する、混沌とした街が広がっている。
Cyclo View Point
・トラン・アン・ユンは漢字で書くと陳英雄。トニーと同い年の華人系ベトナム人で、12歳のときに”ベトナムの将来に不安を感じた”両親に連れられフランスに移民した。フランスの映画学校で学び、'91年に短篇(小津安二郎の影響を受けていたそうな)がクレルモン・フェラン映画祭で入賞。この作品でメジャーデビューする。 「青いパパイヤの香り」(93)でカンヌ映画祭カメラドール賞とセザール新人監督賞を獲得、一躍世界の桧舞台に躍り出た。アン・ユンという名前の響きと小柄で華奢な外見、柔和なまなざしから、てっきり女性だと思い込んだ映画関係者も多かったという。

・ 台湾の侯孝賢監督は彼らが組むという噂を聞いて「トニー・レオンは自閉的、トラン・アン・ユンも自閉的だ。2人でどうやって映画を作るんだ?」と呆れたそうだ。昔気質の映画人である侯監督には、60年代生まれの彼らのコミュニケーション方法は理解不能だったのかもしれない。
・トラン・アン・ユンは未だにトニーにシンパシーを抱いていて、次作にもぜひ主演させたいと望んでいる。王家衛の呪縛から解き放たれて、トニーが新境地を拓くのはいつのことやら…?

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