風塵三侠

「風塵三侠」とは、有名武侠小説のタイトル。黒澤明監督の「荒野の三悪人」の香港公開タイトルでもあったらしい。一方、英語題のTom, Dick, and Hairyはevery Tom,Dick and Harry(誰も彼もみんな・猫も杓子も。トム、ディック、ハリーはいわゆるよくある名前)のもじりらしい。ちなみに中国語では「張三李四」(張家の三男坊も、李家の四男坊も)」となる。ジンジャー・ロジャース主演のコメディ「Tom,Dick and Harry」は1941年の米国アカデミー賞脚本賞にノミネートされた作品。関係は……ないと思うけど。で、Dickといえば英語のスラングで男性性器のこと…エッチだ。

Tom,Dick,and Hairy stuff&actors

風塵三侠VCDジャケット
香港上映期間:1993年2月26日〜3月26日 29日間  興収:1879万2969香港ドル
プロデュース:
ゴードン・チャン陳嘉上、クラウディー・チョン鍾珍/監督:ピーター・チャン陳可辛、リー・チーガイ李志毅/脚本:リー・チーガイ李志毅、ジェームス・ユン阮世生
キャスト:トニー・レオン(陳大文)、レオン・カーファイ梁家輝(程仁)、ローレンス・チェン鄭丹瑞(毛周朱)、アニタ・ユン袁詠儀(李恵芳)、ジェーン・ラウ劉錦玲(ジョイス)、アン・ブリッジウォーター(キャット)、アテナ・チュウ朱茵(ジュジュ)、マイケル・チャウ周文健(ミッシェル)、ビビアン・チャウ周慧敏(フランシス) 、イップ・コンキム葉廣儉(スターフェリー内でバラに話し掛ける男と牧師の2役)
Tom,Dick,and Hairy STORY
しがない案内係の銀行員、大文
しがない案内係の銀行員、大文
女たらしが生きがいの程仁
女たらしが生きがいの程仁
絶倫ターミネーター程仁の視野は、 ターゲットの美女を見たらこうなる
モテない君の女々しいジョルジュ
腐れ縁の恋人の肖像(カリーナではない)
阿catが可愛くてならないトム
 
 
10年後も、エイズ検査代わりに献血を?

 銀行員とはいえうだつの上がらない案内係のトムこと陳大文、日本人ツアーの旅行ガイドで絶倫ターミネーター・ディックこと程仁、程仁の従兄で潮州から移民してきたタレントのマネジャー、ジョルジュ毛周朱は、一つのフラットに同居中の30男。程仁は6年の付き合いのワイフォン李恵芳がいながら、毎晩のようにガールハントにいそしむ。彼女は程仁を愛してはいるのだが、浮気な彼が信頼できず、深夜のスペア女に甘んじている。

  気位の高いフィアンセのジョイスと19歳で出会い、10年来付き合って来て結婚寸前の陳大文は、ジョイスのわがままにへきえき。ベッドでの相性もよくない。彼女はたった30で達するのに、大文はイケなくていつも欲求不満のまま。おまけにジョイスは大文の大切なフォルクスワーゲン・ビートルを「オンボロ車」とけなしてばかり。肝心な時にドアが開かなくなったりエンストしたり、どうも車もジョイスを嫌っているようだ。せっかくデートしても、いつも怒ってロジャーという男のベンツに乗り換え、去ってしまう。仲間うちにも彼女の評判は最悪。だが大文には10年前の、出会った頃の彼女の輝きが忘れられない。

  大文はまたジョイスにプライドを傷つけられ、バックミラーに自分の分身”小文”を見る。”小文”の切ない訴えでにわかに生理的欲求に襲われムラムラしてきた大文は、ヤケになってナイトクラブに飛び込んだ。だがケチで小心なためにホステスが寄り付かず、酔い潰れた彼は、介抱してくれた駆け出しホステスのキャットと出会う。純真な彼女は一目でビートルを好きになってくれた。ビートルもどういうわけか機嫌がいい。車のキーとフラットのキーを間違えるドジさ、開かないドアに渾身の力でキックする大胆さも大文にはチャーミングに思える。母親が病気で、内蔵移植手術の資金稼ぎでホステスになったと聞かされ、さらに傾倒する大文。ベッドでの相性も最高。だが夢のような大満足の一夜が明けると、大文は結婚を控えた身であることをCatに告げてしまう。「もうナイトクラブで散財しちゃだめよ」と、彼女は忠告する。そして銀行での再会。
 程仁は「そんなウマい話があるもんか」と呆れるが、大文は突然訪れた春にうっとり。結婚準備は着々と進んでいくが、大文はジョイスの目を盗んでCatと楽しい日々を過ごす。

  金も教養もセンスもないモテない君のため、出会い系サークルに所属してブラインド・デートを続けるジョルジュがいちばん心惹かれたのは、何と男性のミッシェル。好みもぴったり合い、長電話に食事にと交際が発展してしまう。女性化する一方のジョルジュを気味悪く思う大文と程仁だ。

 ある日突然、 陳大文の妹のジュジュが米国留学から戻ってきた。コケティッシュだが無邪気な彼女のモーションにうろたえる程仁は、プレッシャーで不能になってしまう。

 ジョイスは大文の誕生日に、仕事でマカオへ行くことになった。これ幸いとフラットにCatを招き入れ、二人で祝おうとした大文。だがジョルジュもジュジュも、日本人女性をくわえこんだ程仁も勢ぞろいし、大文の目論みは外れてしまう。しかも、ミッシェルを迎えに出たジョルジュが、不意に現われたジョイスと出くわしたからさあ大変。あせりまくる大文と程仁。彼のうろたえぶりを見て、ジョイスの勝ち誇った台詞をぶつけられたCatは、傷つき黙って去っていった。そんな彼女に同情するジュジュ。彼女もジョイスの傲慢さに我慢できなかったのだ。
 いったんは別れを決意したCatだが、大文はどうしても恋心を捨てきれない。結婚1週間前の日、大文は彼女に会いに行ったまま、行方をくらます。心配するジュジュや程仁、ジョルジュ。だがジョイスは余裕で「どうせ当日には帰ってくるわよ」とどこ吹く風。
  ジョイスの予言通り、Catは結婚前夜に路面電車に乗って最後の思い出を作り、姿を消した。どうすることもできないまま、路上に立ち尽くす大文。

 結婚式当日、大文はフラットへ帰った。喜ぶ仲間たち。だがその日、恵芳はさびしく外国に去り、ジュジュの説得でようやく愛に気づいて彼女を引き止めようとした程仁はタッチの差で間に合わなかった。
 結婚式は着々と進行し、牧師は結婚の誓いを新郎新婦に言わせようとするが、何度言い直しても「劉玲」を「劉玲」と言ってしまい、式がなかなか進まない。
  大文の結婚式場の外にたたずむキャットを見た程仁は、陳大文の結婚に異議を申し立てた。激怒するジョイス、迷う大文。ついに牧師の顔が”小文”に見えてきてしまう。”小文”は大文のホンネを代弁し、勇気を奮い起こすよう勧めた。大文は、ついに結婚を取りやめると宣言、教会外に出てCatを堅く抱きしめた。

  晴れてキャットと結ばれた陳大文。ジョルジュもフランス語の勉強が功を奏し、憧れの美人歌手ビビアン・チャウ周慧敏そっくりなフランシスと結婚できた。程仁は相変わらずだが「何がジャジャンボよ、古臭い」と若い女性に相手にされなくなり、縁がなくなってしまった。
  10年後、4人の子持ちになった陳大文だが、キャットは年々ジョイスに似てきた。フランシスはいくら外見が似ていても、しょせんは女房。憧れの歌手のようではなかった。トイレでビビアン・チャウの載った雑誌を片手に、現実逃避するジョルジュ。

  献血会場に集結した3人の男は、相変わらずの調子。大文は浮気相手?と携帯電話で話す。最愛の人と結ばれても、結局は人生こんなもんさというシニカルな落ち。

Tom,Dick,and Hairy  view point
・ようやくUFO作品初の1千万香港ドルを超えるヒットを飛ばした作品。先に台湾で封切ったのだが思ったほど受けず、ピーターさんらはがっくりしてあまり期待しないで香港公開に臨んだらしい。とはいえ宣伝は凝っていて、雑誌では見開きカラー広告で「テレクラ」風にキャッチーなコピーをつけていて面白かった。
・当初は映画雑誌「電影双週刊」にはローレンス・チェン鄭丹瑞さんの代わりにジャッキー・チョン張學友がクレジットされていた。いくら【亞飛與亞基】でキュートな姿を見せていたからといって、ローレンスさんが演じたジョルジュ役ではあまりに可愛そうではなかろうか。香港が世界に誇る”歌神”なのに!!
・物語は一貫して尖沙咀で展開する。ピーターさんが12歳まで育ち、自分の縄張りと信じて疑わなかった尖沙咀への愛着がこの映画には込められている。観光映画とは一味違うのはそのへんだ。

・ 程仁の職業は旅行ガイド。主に日本人ツアーが対象らしい。プレ○ン・○ッシュに先駆けて映画撮影現場見学のオプショナルもつけているが、ワイヤーワークを体験できるなら、nancixだって参加したい。しかし「ジャッキー(成龍)さんはどこですかああ!」と感激しまくるお婆さんはいったい…。日本人ファンは年齢層が高い!と身をもって知っているのはゴールデン・ハーベスト社に出入りしていたピーターさんぐらいなものである。あのやろお(ーー;) 日本人女性を靴のオーダーメイドに程仁が靴店に連れて行くのはまだしも、ベッドに連れて行かれて「ヤメテー!」はいかんよ。ヤメテー!は日本のAV女優がよく口にする台詞らしく(見たことないからわかんないけどさー…)、他の香港映画でもよく使われている。……いっぺん言ったらなあかんなあ…「FUCK IT!(バカにしないでよ!)」と、中指立てて。
・ジェーン・ラウ劉錦玲の起用は、まさにカリーナ・ラウ・カーリン劉嘉玲と1文字違いだからに違いない…が大変ハマリ役である。クライマックスの挙式シーンで、映画プロデューサーで名脇役のイップ・コンキム葉廣儉さんが牧師に扮し「汝はラウ・カムリンを妻とし…」と言うべきところを「汝はラウ・カーリンを妻とし…」と何度も言い間違える。トニーの困った顔が何とも見ものである。脚本を読んだとき、いったいトニーは何を感じたのであろうか…現場で突然変えられた?

・トニーが演じる陳大文(トム)にはかなりピーターさん自身が投影されている。海外に妹が一人いる、かなり妹コンプレックスである、フォルクスワーゲン・ビートルに乗っている、好きになるのは自立した、個性的な女…果たしていま、サンドラはジョイスなのか阿CATなのか?

・役名がかなり凝っている。レオン・カーファイ演じる程仁は広東語でチェンヤンと発音し、彼の世界的名声を高めた「情人ラ・マン」の情人(チェンヤン)と同じ発音である。 彼がキープ女扱いしているアニタ・ユン袁詠儀の役名・恵芳(ワイフォン)は、スーパーマーケットの恵康(ワイホン)と似た発音。つまりスーパーマーケットのように深夜まで営業してて便利だってことね。トニー演じる陳大文のフィアンセ、ジョイスは、香港有数の高級セレクトショップ「JOYCE」のことだろう。カリーナがブランドの新作が入るころに「ここからここまで私が買うわ!他の女優には絶対同じモノを買わせないでちょーだい!」と命じるような店で、タカビー女の名前にぴったりである。
 そして極めつけ、陳大文のドジに怒ったジョイスは、いつもロジャーという謎の男の車に駆け寄って乗せてもらう。ロジャーの顔は映らないが、「君さえいれば〜金枝玉葉」でカリーナがレスリーへの当てつけに部屋に呼び、泥酔されてしまう若い男がロジャー。「裏街の聖者/流氓醫生」でトニーのライバルとなるのがロジャー(杜徳偉)である。UFOに訪問して脚本家のジェームス・ユン阮世生さんとリー・チーガイ李志毅監督とピーターさんに会えたとき「どうしてみんなロジャーなの?」と聞くと「理由はないしモデルがあるわけじゃないけど、脚本を練るときにライバルが出てくるとロジャーって名前にするよう申し合わせてあるんだ」とのことだった。…こういうUFOの遊び心が好きなのさ。
尖沙咀は香港の煙花風塵の地…
左のオバさんはジャッキー・チェンファンの日本人観光客。「ジャッキーさんは、いつ来ますか?」中央は撮影監督のビル・ウォンさんなり。
このわけわかんないノリ、もはや解説不能
ジュルジュのプロモーションビデオを作る3人。トニーとっても楽しそう。
プロデュースの陳嘉上監督の口利きか、ゲスト出演してくれた美人歌手のビビアン・チャウ

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