My heart is that eternal rose

殺手は「殺し屋」。胡蝶夢は、中国戦国時代(紀元前!)の思想家・荘子による斉物論篇 第二の十三「胡蝶の夢」から来たものと思われる。「昔、荘周は自分が蝶(ちょう)になった夢を見た。楽しく飛び回る蝶になりきって、 のびのびと快適だった。 ふと目が覚めてみるとやっぱり自分は荘周である。 いったい荘周が蝶となった夢を見たのだろうか、それとも蝶が荘周になった夢をみているのだろうか。」という内容なのだが、現実と夢の区別がつかないこと・人生のはかなさという意味にも転用される。この映画では 「殺し屋が見たはかない夢・人生のはかなさ」という風に解釈すればいいのではないだろうか。殺し屋が一瞬見た、はかない夢。それは……。

1988年作品。
プロデュース:ジョン・シャム岑建勲 監督:パトリック・タム譚家明 脚本:チャン・クンチュン陳冠中、ツァン・カンチュン曾謹昌
キャスト:ジョイ・ウォン王祖賢(ラップこと張立)、ケニー・B鍾鎮濤(リックこと馬列)、チョン・タッメン張達明(ラウ・マンシンの息子)、マイケル・チャン陳惠敏(シェンこと神爺)、ゴードン・ラウ劉家輝(ラウこと劉)、トニー・レオン(チュンこと運転手の阿祥)、ン・マンタ呉孟達(タン刑事)、ガム・ピウ金彪(パン医師)
1時間31分 日本ビデオ化(廃盤)

 チェン(クァン・ホイサン關海山)は愛娘のラップと共に海辺のバーを経営していた。チェンはマフィアの組織から抜けられず、ラップと付き合っているリックに運転役を頼んでラウ・マンシンの息子を誘拐した。だがその息子に顔を見られ正体を勘づかれて彼を殺し、一同はフィリピンに逃げた。しかしチェン叔父はひき逃げで殺され、独りぼっちで取り残されたラップは泣く泣く大ボスのシェンの愛人にされ、庇護を受けるようになる。

 6年後、リックは香港に戻ってきた。ラップはボスの情婦として組織の構成員に一目置かれる存在になっていたが、彼女はいつもシェンの虐待に脅かされていた。
 ラップと再会したリックは彼女とやり直そうと決心するが、シェンの部下のラウが邪魔をする。ラップに片想いの運転手、チュンはラップを強姦しようとしたラウに刃向かい、合流したラップとリックと共に逃げ出した。だがシェンらはチュンの祖母を人質に取り、彼らをおびき出そうとする。ラップへの密かな恋をあきらめ、一人で戻り、シェンに命乞いをするチュンだが、シェンは容赦なくチュンの太ももを刺した。泣き叫ぶチュン。

 重傷を負ったチュンを餌に、リックらをおびき寄せるシェン。壮絶な銃撃戦の果て、リックとラップは夢半ばで息絶えた。たった一人生き残り、茫然とボートに揺られるチュンだった…。


 竹内まりやの聞き覚えのあるメロディが流れてきたときは、レンタルビデオテープを間違えたかとあせった。アニタ・ムイの当時のヒット曲だったのだ。
 ジョイ・ウォン王祖賢の、これでもかこれでもかの不幸ぶりには食傷したし(香港電影ってほんと、女には容赦ない)、クライマックスでの仁王立ち阿Bの顔の力演には失笑。見どころはひたすらトニー! …なのに、なかなか出て来なくてやきもきさせられる。
 香港電影金像奨の助演男優賞に輝いたにもかかわらず、トニー自身は「この頃、ボクが太っていたから恥ずかしい。この役は太ってちゃいけない役だったんだ。もっと時間があって役作りできたらもっとよく演じられたのに」と反省している。それでもジョイらに別れを告げる、泣き笑いのストップモーションは香港電影史上に残る名演技。太ももを刺されてのた打ち回るのも、サド心をそそってしまう。YAMETE〜!
 ところで冒頭に阿Bらに誘拐されかけ、殺されるバカ息子って、後にスタンダップ・コメディーや「世界の涯てに」の小児マヒ青年を演じて一世を風靡することになる張達明だったんだなあ。当時はわからんかった。

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