98年。「ブエノスアイレス」によって第17回香港金像奨最優秀主演男優賞を獲得したトニーは、押しも押されもしないスターとなっていました。黎明を起用してきた和記電訊などとの過熱する一方の競争に勝ち抜くため、携帯電話会社「
數碼通SMARTONE」はこの年、トニー、周潤發、ジャッキー・チュンという3大スターを起用した、ドラマ仕立てオムニバスCMシリーズを企画します。なんと各篇3分半の大作。BGMは張學友が歌う「想和イ尓去吹吹風」でした。
第1弾、ジャッキーの「
光影歳月」篇では、ジャッキーの老父役に香港導演協会の重鎮、ジョー・チョン張同祖さんが起用されました。ジョーさんは「ラヴソング」でレオン・ライをシェフとして雇い、ニューヨークで家族同様に付き合うレストラン主人も演じた人です。
場末の映画館で撮影技師として働き、男手一つでジャッキーを育て上げた父。スモーク係として撮影現場で働きながら、映画監督を目指すジャッキー。彼が海外留学の話を切り出すと、父はショックを受けながらも、黙って通帳を息子に渡します。今まで貧しいながらも、コツコツ溜めてきた全財産を…。
ジャッキーはおかげで一人前の映画監督になれ、栄えある映画賞会場で、受賞スピーチをしています。スピーチの終わりに、彼は普段どおり映画館を掃除する父に電話します。受賞者=息子に対する割れんばかりの拍手を聞いた父は、嬉しそうな笑みを浮かべるのでした。

そして第2弾は、トニーの「
浪子雄心」篇。美女と同棲中のミュージシャン、トニーは勝手に仕事を辞め、彼女から見れば怠惰な生活にふけっているようです。自分が甘やかすと、彼がダメになると思い込んだ彼女は悲しく家を出ます。トニーは奮起して、ついに自分でジャズバーを開きます。オープニングパーティーの招待状が届き、トニーからのショートメッセージも届き、心揺れる彼女。バーの名前は「Tony's
Bar」。彼女の姿を見つけたトニーは微笑み、ジャズカルテットの一員として、自信たっぷりにサクソフォンを吹くのでした。彼女に捧げる曲なのでしょうか…?
撮影は4日半で終了しました。相手役は、シンガポールのファッションモデルで米国人と中国人の間に生まれたkristin
maltheさん。ディレクターはかつて周潤發の腕時計CMを監督したDavid Tsuiさんでした。そして撮影はもちろんクリストファー・ドイル&アートディレクターはウィリアム・チョン張叔平のいつものコンビでした。トニーへのギャラは約500万香港ドルだったとの噂です。
第3弾は、ユンファ兄貴の「
真的承諾」篇。世界を駆け巡る香港人エリートビジネスマンと、寂しく香港で過ごす妻子を描きます。妻役には、半ば引退同然だった女優のパット・ハー夏文汐が起用されました。国際会議に出席し、堂々とスピーチするユンファですが、娘とはなかなか会えず、電話で声を聞くだけ。妻ともこのままでは亀裂が生じてしまう…。ヨットハーバーの豪華クルーザーの上で、寂しげな妻と娘。そこにユンファからの電話が。「夫は君の背後にいるよ」…ユンファは何とかスケジュールをやりくりし、家族との時間を作ることに決めたのです。家族の絆を結ぶのは、もちろんスマートーンの携帯電話です。