「セブンソード/七剣」、映画の日に神戸で見てまいりました!世界標準公式サイトは[こちら]。要英語か中国語。
いやあ、冒頭部分が始まったとき、エスキモー…じゃなくて政治的に正しくはイヌイットだかなんだかですけど、その北方民族の夫婦を主人公にした別の映画の予告編なのかと思いましたですよ。
初めて見る方は、要注意です。
真夜中に落下してきた、隕石。
そして、めでたい結婚の祝宴中に黒(グレー?)の軍団に襲撃を受け、全員虐殺された村の惨状が描写される。
黒の軍団といっても古代中国の秦国軍じゃないよ。
解るか、それくらい。
紅い布、紅くて丸い大紅燈篭は、結婚式の装飾です。
その紅い燈籠を、なるほど、あのように目くらましと防御に使うか。
使った人物は、今までにも死人の名札を、黒の軍団の手から奪って来たらしい。
歯噛みする女武将。
彼女を含め12人の隈取り武将は、清朝政権から出された「禁武法」に反する者を皆殺しにして、死人の数に合わせて礼金をもらう賞金稼ぎ・十二門将として、人民に恐れられていた…。
というわけで本題に入る前に。
えー、正直申しまして、ワタクシ。
21世紀のツイ・ハーク徐克とレイモンド・ウォン黄百鳴を、見くびっておったと、真摯に反省しております。
彼は昔の彼ならず。第57回カンヌ映画祭の審査員(因縁の…「2046」が出品間に合った2004年度)にも選ばれ、自信を回復したツイ・ハークはもう、
どこぞの機動戦士もののブームに便乗してザクそっくりなモビルスーツに香港で暴れ回らせ人殺しにしたり、
ゴジラの頭そっくりな作り物くさい化け物を女幽霊と書生の悲恋アクションにわざわざ出して悦に入ったり、
何度もなんどもトニー・レオンを崖から落としてコロコロ転がらせたり、
いかにも作り物のツルにアニタ・ムイやトニー・レオンを乗っけたり、
「男たちの挽歌」続々編をアニメにしたいとマジにキャラクター設定のセル画を事務所に張ってたり、
ハリウッド入りしたものの、ジャン・クロード・バンタム主演映画で大いに苦労したり、
のアニメ・特撮オタクなツイ・ハークではないのですね。
ベネツィア映画祭のオープニングを飾れる、世界的巨匠の仲間入りなのですね。
一時は香港での配給路線(東宝系とか、松竹系みたいな)の1ラインを運営していながら、ドル箱スター+自分を並べて旧正月の「えー毎度バカバカシイお笑いを一つ、皆様どうぞファミリーでお越しいただいて福々しい初笑いをですね…」のマンネリ旧正月コメディを連発し、幾つも不入り記録を作って没落してしまった"のび太君"ではないのですね、もうレイモンド・ウォンは。
七転び八起き、どんな逆境にも耐え、中国or東南アジアor欧米日本の微妙な綱引きの中で、したたかに不死鳥のごとく蘇る彼らには、本当に敬服つかまつる。
思えば「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、特に2作目の「二つの塔」を見たとき、
どうしても「HERO 英雄」の中国人民解放軍による人海作戦を連想し、
人民解放軍のご威光を持ってしてもCGを駆使したモブシーンが迫力負けしていると痛感し、また(ああ、これほどの一大プロジェクトを、潤沢な資金と、オーストラリアの優秀なCGスタッフと、中国大陸の変化に富んだ雄大なロケ地と、金は出すが口はなるべく出さない太っ腹なスポンサーを、香港のツイ・ハークにもテディ・チャン陳徳森にも与えたい…)と念じ、
ハラハラと心の中で涙を流したことであったよ。
「3年だ! 3年待った! 一緒に巻き返そうぜ!!」と「男たちの挽歌」の鬼の形相のマーク哥と化して、ツイ・ハークに迫ってみたいよ、とも。
同じような?思いが、ツイ・ハークの中に煮えたぎっていたにちがいない。
北京でド派手なプレミアショーを繰り広げ、国家の威信をかけて海賊版を取り締まらせ、配給権をオークションにかけて吊り上げ、せっかく積極的にラブコールして来たアンディ・ラウ劉徳華にあーんな役を割り振って平然として、ブイブイ言わせている世界の巨匠チャン・イーモウ張藝謀を横目に見て、内心歯噛みしていたかもしれない。
予算不足や俳優との衝突に苦しみながら寝食(+入浴)を忘れて数々の武侠映画を作り続け、世の人々をあっと言わせて来たのは、この俺様なのに!と。
そんなツイ・ハークに、北京の北京慈文影視製作有限公司と、韓流で世界的にブイブイ言わせている韓国の著名な映画製作会社「ボーラム・エンタテンメント(寶藍電影製作公司)」と、フジテレビはたまたライブドア以上の(たとえが悪いか…)多角経営・国際企業のシティ・グローリー・ピクチャーズ(華映電影有限公司)が思い切り気前よく出資し、あの「HERO」「LOVERS」のワーナーブラザースが配給権を買ったんである。
彼が本領発揮とばかりに、大張り切りしないわけがないではないか!
いやしかし、大張り切りすればするほど、
ツイ・ハークの血が沸き肉が躍れば躍るほど…ひとつ、問題が。
暴力&セックス描写である。
今でも忘れられない。香港の尖沙咀東、シネコンの最も小さなスクリーン(試写室かと思った)で見た「ブレード/刀」(95)の衝撃を。
足手まといそのものの娘が案の定罠にかかり、彼女を救おうとした主人公の片腕が、容赦なくぶった切られるのである!
刀を振り上げるシーンの次には、硬直する被害者、そして腕の先は見せない、というハリウッド式描写に慣れた身には、腕の切断面と噴き出す動脈からの鮮血、「腕が! 俺の腕がぁぁぁぁぁ! 返せ戻せええええぇぇぇ!」と絶叫しながらのたうち、地をずりずり這い回る主人公、という、実に衝撃的なシーンは到底、正視しかねるものであった。
nancixは「仁義なき戦い」シリーズの洗礼を全く受けていない、年代ですからして。
そして、女への扱い。
「ブレード/刀」には、「恋する惑星」でトニー・レオンを翻弄し、理由も告げずに飛び立ってしまったあのスチュワーデスの元カノ役を演じた、ヴァレリー・チャウ周嘉玲が出演していたのだが、実にじつに荒々しくも妖艶で野性的な娼婦を演じさせられていたのである。
もーそりゃもう、食いつくかのように男に挑みかかる、目つきがみだらな妖婦。
高名な刀匠の娘もたいがいワガママ女でおいおい勘弁してくれや、だったんだが、いやはや。好感を持てたのは、まだ男とも女ともつかぬ、色気づく前の野生少女だけだとは。
主人公が手塚治虫先生の「どろろ」に出てくる百鬼丸、野生少女が旅の相棒のどろろの役回りなのね、と納得はしたものの、あれですかねえ。永遠のアニメ・特撮オタクであるツイ・ハークにとって、大人の女の色香は、剣士や拳法家にとって恐るべき敵・あやうきに近寄らずと肝に命じるべき存在なのだろうか、と思ったことであった。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナシリーズ」(以下ワンチャイ)の黄飛鴻だって、史実では正妻の他にも複数の女性の存在があり、晩年にはなんと女弟子をめとってしまうというのに、映画版ではウブすぎるほどウブでしたよねえ。
……ツイ・ハークの世話女房、ナンサン・シー施南生さんがどんな女性なのかは存じませんが。
まあ、あの「ブレード/刀」の調子で、「セブンソード」も演出されているのなら、腕が足が首が、女子供も容赦なく血しぶきを挙げて飛び散るに決まっているから、ひぃぃ、ご勘弁をぉぉ、だったわけなんですよ。
その点については、幸いなことに杞憂でしたね。
ちゃんと欧米市場も視野に入れ、グローバル・スタンダードな演出に、抑制していました。
えーと、スクリーンにボールのようなものが飛んでましたが、ボールに目鼻口がついていたような気もしますが、気のせいでしょう。
腕の先に手首がついてない、いや逆か、とにかく胴体と泣き別れの手がケイレンしてたような記憶も少しありますが、まあこれぐらい「ロード・オブ・ザ・リング」の化け物軍ぶった斬りに比べりゃあねえ…ツイ・ハークにしては抑制…はははは……はは_| ̄|○
しかし相変わらず、女の扱いは…。
今回は男まさりでありつつ、胸に秘めた牧童への失恋の悲しみに耐える少女、
頭領の娘というプライドを持ちながらも死への恐怖、殺人への罪の意識におののく少女、
故国から引き離され支配者の奴隷として苛酷な運命に落とされ、自由の意味すら、もはや見失いかけた高麗人の女
と、3人もタイプの異なる女性を描こうとしましたが、やはり欲張りすぎたとしか。
高麗人女性の存在とドニー・イェン甄子丹の設定の改変は、韓国スポンサーを得た限り、やむをえない措置だったのでしょうがねえ。

トンマなnancixは、頭領の娘がいったい幼馴染の村の男を差し置いて、七剣の誰に一目惚れしたのか、わからなくなりましたよ。
河岸での2人の女の、言葉の通じない切実な対話で、やっとわかったぐらいです。
もっとトンマなことに、村の牧童と、七剣士の帽子青年を何度もなんども見間違えたという…。

2人が馬を放ちに行くシーンでやっと、別人だと解りました。それでもまだ、帽子青年の過去と、剣との関係性と、性格がよくわからない。
さあ過去の紹介か!と思えば「いつも笑顔なんだな」っていうようなセリフだけだったし。
新聞広告やCMで「犠牲」と銘打たれている坊主頭の少年の「犠牲」の意味も解らないし。
てっきりあーんなことやこーんなことになるのね!とハラハラドキドキひぃぃぃとなっていたのに!
帰りにケンチキで「五香醤チキン」に、高麗女よろしく思い切りかぶりつきながらパンフを読んでいたら、なんと!
「狼に育てられたんだぁ」と言っていた坊主って、あの「キラーウルフ/白髪魔女傳」のレスリー卓一航さまの弟子だというではないですか!
なんてぇこったい! それなら過去の描写で、雪山にすっくと立つ乱れ髪のレスリーのシルエットでも登場させて「お師匠様ぁ」と幼い坊主に呼ばせてくれれば!
……あかんか_| ̄|○
ええと、それとせっかく真打ち・御大登場!のラウ・カーリョン劉家良師父。
できればですね、彼を「ロード・オブ・ザ・リング」の魔法使い、灰色のガンダルフ並みに手厚く扱い、クライマックスで本領発揮シーンを用意していただきたかったです。
途中から頭巾の文人レオン・ライ黎明と、ドニー・イェン甄子丹の共同掃討作戦になってしまって(泣)師父ーーーどこですかぁぁぁ!
「HERO 英雄」では「男女の刺し合いの繰り返しなんかウザくてどうでもいいから、ジェット・リーVSドニー・イエンの夢の対決をもっと見せろ!」という男性陣のご意見をたくさんいただいてnancixをシクシク泣かせた、ドニー兄貴。
今回はもう、何という美味しい役なんだか(笑)。
もーもー、ドニーさん言って言ってよ! 「今宵の由龍剣は、一味違うぞ」と「また、つまらぬものを、斬ってしまった…」を!
と、一人で念じておりました。
って、斬鉄剣の石川五右衛門かーい!(殴)
で、「ワンチャイシリーズ」などを見てきた者としては、
敵の大ボス風火連城との、狭い壁の間にわざわざ入っての対決に、思わずニヤリとしてしまうわけですよ。
あの時とは武器が異なりますが、制約あってこそ迫力の増す真剣勝負。
たまりません。
手に汗握り(いけ! いけーっ! ああっやられるな! うわーん頼む!)とか心の中で絶叫できるわけですよ。

そう、直情径行の正統派二枚目よりも、暗い過去を持つ陰ある男に、女は胸キュンで惚れるもの。
大鷲のケンよりもコンドルのジョーに人気が…たとえが古すぎるな。
熱血刑事よりも、二重生活を余儀なくされる潜入捜査官に人気が…これも、ちと…。
黎明さんの過去よりも誰の過去よりも、故国から無理に引き裂かれ奴隷にされるという屈辱を受けた過去は、重い。
できればですね、ドニー兄貴、もうちょっと女の扱いを優しく……
それと、ラブシーンで、鍛えに鍛え抜いて肌理の細かい美しい背中を見せてくださったのは、大変にワクワクドキドキでありがたいのですが、
背中だけかい……?
もうちょっと!
もうちょっと下まで…その……お見せいただくと…
腰の動きとか……。
やはりですね、フンヌフンヌと鼻息も荒くツイィーたんを……する赤の残剣トニーや、「2046」のトニーさんを見てしまった者としては、ああもうちょっとセクシィなドニー兄貴を、たがが外れたように女を愛しまくるドニー兄貴を見たい! 結婚もなさったことだし、何もチェリーボーイのふりしなくてもいい年齢のわけですし!
と、ないものねだりしてしまうわけですよ。
レオン・ライさん、少々心配な点があったんですが(やはりトニーさんと同じく、幼児期からのカンフーの素養がないこととか、お顔の横幅が10年前より広がってないかとか…)、やはりファンも「動いてるときのレオンの方が素敵ーっ」と認めるだけあって、スクリーンで見る彼は渋さが加わり、なかなかよかったです。
![王家衛作品経験済みの2人。黎明と楊采[女尼]](http://nancix.up.seesaa.net/sevensw/EAt96BE82C697k8DD15B8F9793F25D.jpg)
黒澤明監督の「七人の侍」と違って、さっさと敵の本拠地を襲う思い切りのよさ、7人で多勢の軍隊を圧倒してしまうのも爽快だったし、
敵の大ボスのヘンタイぶりと孤独、屈折を描いて、不気味さを煽るのも、単なるゲームキャラクターとは違うって感じでは、あるまいか。
あっでも、ゲーム化はしてほしいなあ。
キャラクターにドニー兄貴を選んで、暴れにあばれまくりますよぉ。
武荘の馬を放つシーンでもやっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで、白馬が駆け寄って来るシーンを連想してしまいました。
それにしても長すぎたよ、このエピソード。来福があきらめた時点で、さっさと本筋に戻ってほしかった。
あと、もう一つ、ええいだらだら描写してないで、簡潔に抑えて次進め!と怒鳴りたいシーンがあったけど忘れた。
記憶細胞から抹消しました。
アクションは、京劇系のド派手な振り付けが主でしたね。このビュビュン! 決めポーズをピタッッ!のリズム感は、現代っ子のトニーさんには無理なんでした。京劇もしくは観せるためのカンフーの訓練をみっちり受けていないと。
ただ、時々カメラが、猛スピードで展開する(香港映画お得意の早回しはしてなかったと思う)ドニーさんらのアクションについていってなかった。
あさっての方角を撮影していたのは、わざとか?
撮影スタッフの一人に「ブエノスアイレス」などでクリストファー・ドイルの撮影助手を務め「2046」などで一人前に成長したライ・イウファイ黎耀輝さんの名前があったのですが、彼のせいではないと信じたい…。
この物語は結局、満人と呼ばれた少数民族が支配する清王国と、政権に刃向かい「反清復明」をスローガンに漢民族の前政権の復活を願った後の秘密結社・天地會との争いが背景にあるわけですから、トニーファンとしてはどうしてもテレビドラマ「鹿鼎記」を想起してニヤニヤせずにはいられない。
友情を誓った少年康熙帝と、命の恩人・お師匠様のいる天地會の間で若き日のトニーさん、いや袁小寶くんがおたおた、おろおろする大冒険は、もうちょっと後の話でしょうけどね。
それにしても、愛新覚羅溥儀のご先祖様なのに、マイケル・ウォン王敏徳が親王役では、バタ臭すぎやませんか?
もうちょっと京人形風の、目鼻口が上品で小さめの一族なはずなのに。
やはりTVB版「鹿鼎記」で、康熙帝をやはり濃い顔のアンディ・ラウ劉徳華が演じたので、そのイメージの踏襲でしょうか?
勇壮なBGMと映像のシンクロに酔い、緩急自在なアクションのリズムに気持ちよく身を任せ、
スカッとした気分で映画館を出て、過ぎた時間に仰天したわけですが(夜の早い神戸では、飲食店が開いてないよー!)、
……
…………??
やっぱりよく考えれば、穴だらけ…_| ̄|○
さすがに、映像でしか発想しないツイ・ハークだ。

ブラザーフッド スタンダード・エディション
カル
グリーン・デスティニー
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