15日は関西におけるアジア映画の封切ラッシュ日。
何を見に行くか仕事しながら考え抜いて(こらこら)、結局時間の合う「柔道龍虎房/柔道龍虎榜」にしました。何だか広東語映画が見たくてみたくて禁断症状だし、シネマート心斎橋で「エンター・ザ・フェニックス」見てたら、「チャングムさん」byNHK総合放送に間に合わないかもしれないんだもん!
それにしても「柔道龍虎房」、今頃ですか?
ハイ、東京フィルメックスには全然行く予算が取れないし、第七藝術劇場では全く時間が合わなかったので、今頃です。
アーロン久々の主演映画♪と喜び勇んで天六ユウラク座へ。考えてみたら松坂姐さんと台湾ニューハーフと香港スキャンダル女優がもつれ合った「桃色」と同じ映画館で「柔道龍虎房」だなんて、スゴいですね…場末感漂う手描き看板も、相変わらずです。

この看板前で、自転車に乗りながら「おっちゃん、明日はちゃんと仕事に来なアカンで!」と30代にいちゃんが、熟年無精ヒゲおっちゃんに説教してました…。店長が、サボりがすっかり癖になってるパチンコ&映画依存症の下働きさんに意見する、の図でしょうか。恐ろしいまでに日本の現実と香港映画の虚が一致した、一瞬でした。
チケット売り場では残念ながらパンフレット販売はなく、ルイス・クー古天樂とチェリー・イン應采兒のポストカードだけをタダでくれました。
……アーロンは? ねえ、アーロンはどこ?(T_T)
場内では、女はnancix一人きりです。6人の中高年のお客様は、なぜか最後列に近いあたりに点々と散在。
さて、物語はビルの立ち並ぶ香港の郊外…なぜか背の高い草がぼうぼう生えている空き地から始まります。
グラス・ホッパー草[虫孟]の一員として飛んで跳ねて元気に歌い踊っていたアイドルの面影はどこへやら、長髪にヒゲが、濃い顔にあまりにもむさくるしさをかもし出すカルバン・チョイ蔡一智が、ジャージ姿で、前かがみのヘンな姿勢で演歌を唸り出します。…演歌じゃないや。往年の「姿三四郎」主題歌だそうですね。
後で広東語の先生に聞いたら、確かに70年代香港で、日本テレビ版ドラマが広東語読みの「シーサムセイロン」と呼ばれて大流行したらしい。当時は柔道も流行ったらしい。1978年には「九龍柔道會Kowloon Judo Club」の前身も設立されている。後に、カルバン・チョイは劇中で握手を求めて「よろしく、僕はシーサムセイロン、君は檜垣ね」と何度も繰り返して嬉しそうに笑うのだが、それもこのドラマの影響を受けたということか。
カルバン・チョイの傍らには、柔道着姿のオッチャン(ロウ・ホイパン盧海鵬)もちゃんといる。
やがて二人は香港の街角で、黄色いチラシ配りを始める。道場らしき一室で、向き合って正座して黙々と飯も食う。どうやら父と息子らしい。
道場の名札(っていうのかな? 出席したら裏返し、帰るときにまた裏返す木の札、アレです)板に残されているのは、3人分の名札だけ。
往年の柔道ブームは遠く去り、今ではまったく、はやっていない道場らしい…。
夜、バーラウンジ「AH」の前にバイクで乗りつける男、"革ジャントニー"。
あーーーーろーーーーん! 思わず「お久しぶりね」と手を振りたくなる。
トニーといえば、この場合トニー・レオンなど眼中になくて、日活アクション映画の赤木圭一郎なんでしょう!
119kgの巨漢ドアマンとアーロンは、100ドル札を賭けて勝負。もちろんスポ根もののセオリー通り、アーロンがあっさりと巨漢を投げ飛ばして勝つ。
アーロン扮する青年トニーは、このバーラウンジ(カラオケステージ有り)のマスター兼ギタリストのシト・ポウ司徒寶(ルイス・クー)に会いに来たのです。
ところが司徒寶はバンド仲間の罰ゲームのせいで、すっかり泥酔状態。演奏中にぶっ倒れる有様。
トニーは、かつて香港柔道界の「小金剛」と呼ばれた司徒寶に「勝負しよう」と言い募るが、バンド仲間のサックス奏者に遮られる。
店の裏で、そのサックス奏者があっさりとトニーに投げられ、商売道具の腕を脱臼させられてしまう。
同じ夜、アパートメントの上階からポイポイと荷物を投げ落とされる若い女、シウモン小夢(チェリー・イン)。
女家主が、度重なる家賃滞納にたまりかねて強制排除の手段に出たのだ。
荷物ごと追い出されてもいっこうにしょげず、道祖神?へのお供え物の果物をほおばり、荷物を抱えて夜道を行く小夢。
翌日、たどりついたのは、あのバーラウンジ「AH」。店の前の張り紙を見て店に飛び込む。
泥酔したまま、いぎたなく眠り込んでいる司徒寶に、ボーカリストとして採用してくれと頼むが、彼は聞いちゃいない。時間はすでに昼の1時半。司徒寶は飛び起き、そこにトニーも現れる。寝ぼけまなこのまま、司徒寶は仲間のサックス奏者に電話するが、脱臼したので店に行けないと言われて困り果てる。食い下がる女やトニーにブツブツ、ブツブツと「ヒマあるか? あるんだな? 手を貸してくれ、頼む」と呟き、共に店を飛び出し、ホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
あああ、ミニバスだミニバスだ、香港だぁぁぁ。
3人は昼日中も薄暗いゲームセンターに突入。そうなんだよな、10年ぐらい前に香港・旺角や台湾で覗き見た"ゲームセンター"は、日本ではありえない~と背筋が寒くなるほど真っ暗で、アーケードゲーム機の画面だけがまばゆく輝いていたのだ。
そのゲームセンターにはガンダムゲームだの、マージャンの上海だのがあって、ちょっと笑っちゃったりなんかする。そのゲームセンターで、司徒寶が狙ったのがマン親分(ジョニー・トー一派の一員、エディ・チョン・シウファイ張兆輝)と呼ばれる、柄シャツの胸元に金札ペンダントなんかかけた、見るからに893のオッチャン。ブツブツ、ブツブツと独り言を言ってるのが、奇妙キテレツ。後で強引にエアホッケーゲームの相手をさせていた小学生を毒舌で泣かせちゃうし、ショバで借金取りをしている地回りなのか、待ち合わせに遅刻してきた若い連中の胸を、平然と刃物でスパッと切っちゃったりする……こええええ。弱いものイジメすんなー!
そのマン親分の書類カバンを、シウモンとの連携プレーですり替え、回収したばかりの5万香港ドルをまんまと横奪りした司徒寶。
そんな彼を、哀しく見つめるトニー。お仕置きだ!とでも言わんばかりに柔道技をかけるのだけど、どんなに投げられ路面に叩きつけられても、窒息させられかけても、札束を手放さない司徒寶なのだ。

(ホントはやればできる子なのに…どうしたらやる気を出せるの?)と嘆く、教育ママになりたくなる…。
司徒寶は小夢を引き連れ、賭場に向かう。そして2万ドルをあっさりとすってしまい、小夢の取り分まで「出せ、よこせ」と強要する。さらに「今夜は金が要るんだ」と、倉庫からストックのシーバスリーガルの箱を持ち出し、横流ししてしまう。…そりゃ横領ってもんでしょーが!
どーーーしよーーーもない、酒びたりでアルコール依存症の、倫理観念欠如の、ろくでなし。
どういうわけか、やたらと顔の汗をタオルで拭う癖だけが「ロンゲストナイト~暗花~」でトニー・レオンが演じた悪徳刑事と共通する。

その夜、それでも華やかに「AH」のステージで歌う小夢、伴奏する司徒寶とトニーの姿があった。
都合のいいことに、トニーもサックス奏者だったのだ! それであらかじめ、司徒寶の仲間のサックス奏者をやっつけたのか…。あなどれんぞ、トニーという男!
そしてウエイターが、4組の客が彼らを呼んでいると告げる。
1組目は、まんまとカバンを盗られた、あのマン親分と子分たち。
2組目は、なんとチャン・シウチョン陳小春じゃなーーい! つんつん立ったヘアスタイルが、何だかそぐわない…。
3組目は、冒頭の柔道家、チェン・ヤッサム鄭一[王探]とその息子、阿正。
4組目は、この店のオーナー。
ここから4通りの話が一気に同時進行する。このややこしさが面白い。
陳小春は小夢に用があった。小夢は彼の芸能プロダクションと契約しているのだが「3級片(エロorグロ映画ですな)に出るのはいやだ、ヌードもセミヌードもHシーンもお断り、歌手になりたい!」と出演話をつっぱねていたのだ。プロダクション側は、台湾にいる小夢の父親と違約金について話しをつけると宣告する。彼女は、台湾からの家出娘なんですかねえ。
柔道家父子は、司徒寶に用があった。司徒寶の師匠であるチェン・ヤッサム鄭一[王探]は、道場「一心館」の再興のために、優秀な弟子だった司徒寶に戻ってほしいのだ。どうやら阿正は知能障害あるいは自閉症であり、道場の後継者になるのは到底無理なのだった。
そしてマン親分は、もちろんカバンを返せ、5万ドルを返せ、落とし前をつけろと言いたいのだ。
店のオーナーはといえば、酒庫からストックが消えたり、売り上げ報告がでたらめなことに気づいて、司徒寶を問い質そうと乗り込んできたのだ。
トイレにこもり、男女兼用トイレの扉越しを利用し、共同戦線で追っ手を誤魔化そうとする司徒寶と小夢だが、ついにマン親分に連れ出されそうになる。店内ではついに乱闘、いやさ柔道で言う「乱取り」状態になり、しっちゃかめっちゃか。
あああ、柔道って柔道って、こんな乱闘のために使っていいもんなのでしょーか……神戸市生まれで魯迅をも教えた嘉納治五郎大先生! あなたが唱えた「精力善用、自他共栄」の精神は……。
ステージでは、阿正が「姿三四郎」の歌を、マイクの前で前かがみになってがなるし。
そのしっちゃかめっちゃかを、一人だけ端然とイスに座ったまま観察している長身・スーツの紳士がいた。
アコン阿岡(剛とも)(レオン・カーファイ梁家輝)である!
鋭い眼で、司徒寶を見守る阿岡。だが彼はやがて席を立つ。「2年前、おまえは私との試合に来なかったな。再度の試合を望んでいたが、今のおまえでは…」と司徒寶に告げる。またトニーには「以前、道場破りに来たな。また来いよ」と告げて、ウインク。
カーファイ、キザーーーーーーー!
司徒寶はすっかり忘れていたようだが、マン親分もまた、かつては「柔道界の小覇王」と呼ばれた若き柔道家だったようだ。
またまた若い衆から借金を取り立てた現場に、なんと着ぐるみ姿で乗り込んでカバンを奪おうとした司徒寶と小夢(おまえら、いいかげんに……_| ̄|○)に、「借金したいなら、いつでも貸してやるのによ」と脱力する。彼は、自分を思い出せず小細工を弄した司徒寶がじれったかっただけらしい。
……何だよ、柔道家ばっかりなのかよ。
どうなってんだ、この映画世界の香港は?
香港が世界に誇るカンフーは、一体どーなったんだぁぁ。
司徒寶は道場破りを続けるトニーに「なぜそんなに勝負したがるんだ」と尋ねた。
トニーは「オレは網膜色素変性症で、30代を過ぎると失明する運命なんだ。だから今のうちにやりたいことをやっておきたくてね」と軽やかに応える。
冗談っぽい言い方だったが、その日、トニーが店の控え室で自分のロッカーを開けると、眼科医や網膜移植センターの名刺が重ねて置かれていた。
司徒寶を見やり、ふっと微笑むトニー。実に謎めいた男だ。
もったいぶって店内に「柔道選手権2004」のポスターを貼るトニー。
出場選手名の中に、一心館の師匠の名前を見つけてハッとする司徒寶。
司徒寶は小夢に頼み、一心館の師匠に、マン親分の金2万ドルを渡してもらおうとする。
ところが、いくら待っても会合場所のレストランから小夢が出てこない。
店内に入ると、彼女は親子と一緒にステーキ食ってたりなんかする。
「なんで食ってるんだよ!」「だって、本人に直接話しをさせろって師匠が」と小突き合う二人。
「おまえも食え」と、師匠は司徒寶を座らせる。
師匠は、選手権の優勝者に与えられる賞金と栄誉で、自ら一心館を再興しようと決心したのか。
金はここの支払いだけでいい、それより入場券をやるから、試合を見に来いと不肖の弟子・司徒寶を誘うのだ。
それにしても、2年前、何が司徒寶に起こったのか?
司徒寶はまた師匠から返された大金を手に、小夢の制止も聞かず賭場に乗り込む。たまりかねた小夢は、彼がもうけたばかりの札束をもぎ取り、賭場から走って逃げ出す。
いくら言葉で言ってもギャンブル狂いが聞かないのなら、実力行使だわさ。
しかし死に物狂いで疾走して逃げるわけでもなく、彼女は両手からこぼれたお札を拾い集め、追っ手の手が届くか届かないかのところまで戻ったりして、緊迫感ゼロ。

彼女に手を出されまいと、身代わりにボコボコにされてよろめき歩く司徒寶に、わざわざ追っ手の前まで戻って靴を拾ってやったり。
追っ手に捕まったら女の身、ただじゃすまないのにさぁ…。
さすがにこんな真似をしちゃ、司徒寶はどの賭場にも出入り禁止を食らう。ギャンブルに依存して現実逃避できなくなったのである。
なるほど"共依存"関係を防ぐ、こんな荒っぽい手立てもあったか。なんて感心してる場合じゃなかったが。
おそらくすでに20代後半であろう小夢は、香港での芸能オーディションに年齢を理由にことごとく落ち、日本でのデビューを目指すと司徒寶に告げて「AH」をさっさと去る。
「柔道選手権2004」の大看板が掲げられた、試合会場。その前に立ち尽くす、司徒寶。
中に入れないまま、逡巡する彼の耳に、近づいてくる救急車のサイレンの音が…。
顔色を変える、司徒寶。
ケガ人らしき選手が担架で運び出され、意識不明のまま救急車に搬入された。
付き添うのは……やはり、師匠の息子阿正! てことは、倒れたのは師匠!
病院で師匠を探してよろめき歩く、司徒寶。
病人はアンタでしょーがと思うのだが、医師も看護師も声をかけて保護しようとしない…。
阿正が見つめ続ける、装置に表示される光点が、ついに動かなくなる…。
生涯を柔道一筋に賭けたおししょーさま、ご臨終です…。
司徒寶が立ち会い、保護者を失った阿正は障害者自立支援センターに引き取られることになった。
一方、日本でのデビューの夢を賭けた芸能プロダクションの男?(演じるのはジョニー・トー専属スチールカメラマンの日本人、岡崎裕武氏だとか)に見放された小夢。
自立支援保護センターを脱走し、街角でチラシを配ろうとする阿正を、司徒寶はセンター職員らと共に追いかける。
道場で、昔どおりの生活を続けようとする阿正だが、もはや父親はいない。
結局また、センターに戻るしかない阿正なのだ。
失意の司徒寶も小夢も、またもやホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
前後の座席に座る二人。前の司徒寶に気づき、緊張の糸が切れたのか、背もたれに顔を押し付け、泣きじゃくる小夢。
彼女に気づいているのかいないのか、顔を上げてのけぞるように目を閉じる司徒寶。ここがポストカードのシーンだったのか。
……恋というのじゃ、ないけれど……。
再び、3人の奇妙な共同体生活が始まろうとする。
ステージに向かうとき「目は大丈夫か?」とトニーにそっと聞く司徒寶。トニーは「ああ、ありゃ方便だよ。病気だって言えば、皆拒否できないからな」と軽く答え、司徒寶は激怒して飛びかかる。
あああ、また乱闘です…。
やっぱりトニーに負け、店を飛び出す司徒寶。
トボトボ歩きのルイスが、可愛い…。
そのやるせなさそうなトボトボ歩きが、やがてシャドーボクシングならぬシャドー投げの体勢へ変わっていく。
ふと目に入るのは、一心館の入り口。
師匠亡き後、放置されている道場のマット上を、うれしそうに転がり回る司徒寶。
なぜか阿正も自立支援センターを脱走して飛び込んでくる。まるで師範代を務めるかのごとく、阿正と共同生活を始める司徒寶。
やがてバーで、道場で、トニーとも勝負する。
すっげーーー嬉しそうにニコニコしながら、男二人でくんずほぐれつ練習されては(汗)。
司徒寶は、マン親分とも店のオーナーとも、柔道の勝負で落とし前をつけてしまう。
やっぱり皆、組み合いながら嬉しそうに声が弾んでたりする。
何だ、そういうことか。
みんな柔道狂で、司徒寶ファンで、オーナーは将来を嘱望された司徒寶の堕落を心配してマスターに据えてやり、マン親分も彼と再び立ち合いたくて、ちょっかい出していたってことか(違)。
小夢も、一つの落とし前をつけようとしていた。
高級レストランで、彼女と食事する、パリッとスーツを着込んだ清水章吾。
いや違う、チワワ共演CMのあのオジサンじゃなくて、何と初老のその紳士を演じているのは、「悲情城市」文清のお兄ちゃんことジャック・カオ・ジェ高捷! いやー見違えました…清水章吾にしか見えなかったよ。
その高捷こそ、小夢の父親だったのだ。
彼女は台南から台北へ、台北から香港へ、香港から日本へと、歌手を夢見て夢中で飛び出してきたらしい。何という、行き当たりばったり人生。
父親はそんな無軌道娘を心配し、一度は家に戻れと説得しに、台南から香港に出て来たのだろう。
父との会食から「AH」の近くまで戻った小夢は、赤い風船が木に引っかかって、どこにも行けないでいるのを見上げる。
何とか風船を取ろうとする彼女に、司徒寶も、トニーも、肩車で応援する。
日本の高校生トレンディードラマみたいな、3人の共同体ぶりが、微笑ましいったらない。永遠のピーターパンとウェンディ、いやむしろティンカー・ベル。
男女の性愛ではなく、それぞれの夢を追うのに手を貸す仲間、同志愛が3人を結びつけているのだ。
アーロンがアーロンが、そんなことさせられたらまた背が縮むぅぅぅ!と心配しないでもないけど。
司徒寶とトニーに見送られ、父親に連れられ車に乗る寸前、小夢はやっぱり逃げ出した。
一心に駆け抜ける彼女に、司徒寶はパンプスを拾って放ってやり(賭場から逃げ、追っ手と悶着があった時の彼女の気配りの優しいお返しですね)、嬉しそうに見送る。父親もまた、結局は声援の言葉を叫ぶ。
この"南の女"は、決してクヨクヨ悩んだり、周囲を恨んで呪ったりしないのだ。行き当たりばったりだけど。
すがすがしいまでに、オトコマエ。
何を見に行くか仕事しながら考え抜いて(こらこら)、結局時間の合う「柔道龍虎房/柔道龍虎榜」にしました。何だか広東語映画が見たくてみたくて禁断症状だし、シネマート心斎橋で「エンター・ザ・フェニックス」見てたら、「チャングムさん」byNHK総合放送に間に合わないかもしれないんだもん!
それにしても「柔道龍虎房」、今頃ですか?ハイ、東京フィルメックスには全然行く予算が取れないし、第七藝術劇場では全く時間が合わなかったので、今頃です。
アーロン久々の主演映画♪と喜び勇んで天六ユウラク座へ。考えてみたら松坂姐さんと台湾ニューハーフと香港スキャンダル女優がもつれ合った「桃色」と同じ映画館で「柔道龍虎房」だなんて、スゴいですね…場末感漂う手描き看板も、相変わらずです。

この看板前で、自転車に乗りながら「おっちゃん、明日はちゃんと仕事に来なアカンで!」と30代にいちゃんが、熟年無精ヒゲおっちゃんに説教してました…。店長が、サボりがすっかり癖になってるパチンコ&映画依存症の下働きさんに意見する、の図でしょうか。恐ろしいまでに日本の現実と香港映画の虚が一致した、一瞬でした。
チケット売り場では残念ながらパンフレット販売はなく、ルイス・クー古天樂とチェリー・イン應采兒のポストカードだけをタダでくれました。
……アーロンは? ねえ、アーロンはどこ?(T_T)
場内では、女はnancix一人きりです。6人の中高年のお客様は、なぜか最後列に近いあたりに点々と散在。
さて、物語はビルの立ち並ぶ香港の郊外…なぜか背の高い草がぼうぼう生えている空き地から始まります。
グラス・ホッパー草[虫孟]の一員として飛んで跳ねて元気に歌い踊っていたアイドルの面影はどこへやら、長髪にヒゲが、濃い顔にあまりにもむさくるしさをかもし出すカルバン・チョイ蔡一智が、ジャージ姿で、前かがみのヘンな姿勢で演歌を唸り出します。…演歌じゃないや。往年の「姿三四郎」主題歌だそうですね。
後で広東語の先生に聞いたら、確かに70年代香港で、日本テレビ版ドラマが広東語読みの「シーサムセイロン」と呼ばれて大流行したらしい。当時は柔道も流行ったらしい。1978年には「九龍柔道會Kowloon Judo Club」の前身も設立されている。後に、カルバン・チョイは劇中で握手を求めて「よろしく、僕はシーサムセイロン、君は檜垣ね」と何度も繰り返して嬉しそうに笑うのだが、それもこのドラマの影響を受けたということか。
カルバン・チョイの傍らには、柔道着姿のオッチャン(ロウ・ホイパン盧海鵬)もちゃんといる。
やがて二人は香港の街角で、黄色いチラシ配りを始める。道場らしき一室で、向き合って正座して黙々と飯も食う。どうやら父と息子らしい。
道場の名札(っていうのかな? 出席したら裏返し、帰るときにまた裏返す木の札、アレです)板に残されているのは、3人分の名札だけ。
往年の柔道ブームは遠く去り、今ではまったく、はやっていない道場らしい…。
夜、バーラウンジ「AH」の前にバイクで乗りつける男、"革ジャントニー"。
あーーーーろーーーーん! 思わず「お久しぶりね」と手を振りたくなる。トニーといえば、この場合トニー・レオンなど眼中になくて、日活アクション映画の赤木圭一郎なんでしょう!
119kgの巨漢ドアマンとアーロンは、100ドル札を賭けて勝負。もちろんスポ根もののセオリー通り、アーロンがあっさりと巨漢を投げ飛ばして勝つ。
アーロン扮する青年トニーは、このバーラウンジ(カラオケステージ有り)のマスター兼ギタリストのシト・ポウ司徒寶(ルイス・クー)に会いに来たのです。
ところが司徒寶はバンド仲間の罰ゲームのせいで、すっかり泥酔状態。演奏中にぶっ倒れる有様。
トニーは、かつて香港柔道界の「小金剛」と呼ばれた司徒寶に「勝負しよう」と言い募るが、バンド仲間のサックス奏者に遮られる。
店の裏で、そのサックス奏者があっさりとトニーに投げられ、商売道具の腕を脱臼させられてしまう。
同じ夜、アパートメントの上階からポイポイと荷物を投げ落とされる若い女、シウモン小夢(チェリー・イン)。
女家主が、度重なる家賃滞納にたまりかねて強制排除の手段に出たのだ。
荷物ごと追い出されてもいっこうにしょげず、道祖神?へのお供え物の果物をほおばり、荷物を抱えて夜道を行く小夢。
翌日、たどりついたのは、あのバーラウンジ「AH」。店の前の張り紙を見て店に飛び込む。
泥酔したまま、いぎたなく眠り込んでいる司徒寶に、ボーカリストとして採用してくれと頼むが、彼は聞いちゃいない。時間はすでに昼の1時半。司徒寶は飛び起き、そこにトニーも現れる。寝ぼけまなこのまま、司徒寶は仲間のサックス奏者に電話するが、脱臼したので店に行けないと言われて困り果てる。食い下がる女やトニーにブツブツ、ブツブツと「ヒマあるか? あるんだな? 手を貸してくれ、頼む」と呟き、共に店を飛び出し、ホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
あああ、ミニバスだミニバスだ、香港だぁぁぁ。
3人は昼日中も薄暗いゲームセンターに突入。そうなんだよな、10年ぐらい前に香港・旺角や台湾で覗き見た"ゲームセンター"は、日本ではありえない~と背筋が寒くなるほど真っ暗で、アーケードゲーム機の画面だけがまばゆく輝いていたのだ。
そのゲームセンターにはガンダムゲームだの、マージャンの上海だのがあって、ちょっと笑っちゃったりなんかする。そのゲームセンターで、司徒寶が狙ったのがマン親分(ジョニー・トー一派の一員、エディ・チョン・シウファイ張兆輝)と呼ばれる、柄シャツの胸元に金札ペンダントなんかかけた、見るからに893のオッチャン。ブツブツ、ブツブツと独り言を言ってるのが、奇妙キテレツ。後で強引にエアホッケーゲームの相手をさせていた小学生を毒舌で泣かせちゃうし、ショバで借金取りをしている地回りなのか、待ち合わせに遅刻してきた若い連中の胸を、平然と刃物でスパッと切っちゃったりする……こええええ。弱いものイジメすんなー!
そのマン親分の書類カバンを、シウモンとの連携プレーですり替え、回収したばかりの5万香港ドルをまんまと横奪りした司徒寶。
そんな彼を、哀しく見つめるトニー。お仕置きだ!とでも言わんばかりに柔道技をかけるのだけど、どんなに投げられ路面に叩きつけられても、窒息させられかけても、札束を手放さない司徒寶なのだ。

(ホントはやればできる子なのに…どうしたらやる気を出せるの?)と嘆く、教育ママになりたくなる…。
司徒寶は小夢を引き連れ、賭場に向かう。そして2万ドルをあっさりとすってしまい、小夢の取り分まで「出せ、よこせ」と強要する。さらに「今夜は金が要るんだ」と、倉庫からストックのシーバスリーガルの箱を持ち出し、横流ししてしまう。…そりゃ横領ってもんでしょーが!
どーーーしよーーーもない、酒びたりでアルコール依存症の、倫理観念欠如の、ろくでなし。
どういうわけか、やたらと顔の汗をタオルで拭う癖だけが「ロンゲストナイト~暗花~」でトニー・レオンが演じた悪徳刑事と共通する。

その夜、それでも華やかに「AH」のステージで歌う小夢、伴奏する司徒寶とトニーの姿があった。
都合のいいことに、トニーもサックス奏者だったのだ! それであらかじめ、司徒寶の仲間のサックス奏者をやっつけたのか…。あなどれんぞ、トニーという男!
そしてウエイターが、4組の客が彼らを呼んでいると告げる。
1組目は、まんまとカバンを盗られた、あのマン親分と子分たち。
2組目は、なんとチャン・シウチョン陳小春じゃなーーい! つんつん立ったヘアスタイルが、何だかそぐわない…。
3組目は、冒頭の柔道家、チェン・ヤッサム鄭一[王探]とその息子、阿正。
4組目は、この店のオーナー。
ここから4通りの話が一気に同時進行する。このややこしさが面白い。
陳小春は小夢に用があった。小夢は彼の芸能プロダクションと契約しているのだが「3級片(エロorグロ映画ですな)に出るのはいやだ、ヌードもセミヌードもHシーンもお断り、歌手になりたい!」と出演話をつっぱねていたのだ。プロダクション側は、台湾にいる小夢の父親と違約金について話しをつけると宣告する。彼女は、台湾からの家出娘なんですかねえ。
柔道家父子は、司徒寶に用があった。司徒寶の師匠であるチェン・ヤッサム鄭一[王探]は、道場「一心館」の再興のために、優秀な弟子だった司徒寶に戻ってほしいのだ。どうやら阿正は知能障害あるいは自閉症であり、道場の後継者になるのは到底無理なのだった。
そしてマン親分は、もちろんカバンを返せ、5万ドルを返せ、落とし前をつけろと言いたいのだ。
店のオーナーはといえば、酒庫からストックが消えたり、売り上げ報告がでたらめなことに気づいて、司徒寶を問い質そうと乗り込んできたのだ。
トイレにこもり、男女兼用トイレの扉越しを利用し、共同戦線で追っ手を誤魔化そうとする司徒寶と小夢だが、ついにマン親分に連れ出されそうになる。店内ではついに乱闘、いやさ柔道で言う「乱取り」状態になり、しっちゃかめっちゃか。
あああ、柔道って柔道って、こんな乱闘のために使っていいもんなのでしょーか……神戸市生まれで魯迅をも教えた嘉納治五郎大先生! あなたが唱えた「精力善用、自他共栄」の精神は……。
ステージでは、阿正が「姿三四郎」の歌を、マイクの前で前かがみになってがなるし。
そのしっちゃかめっちゃかを、一人だけ端然とイスに座ったまま観察している長身・スーツの紳士がいた。
アコン阿岡(剛とも)(レオン・カーファイ梁家輝)である!
鋭い眼で、司徒寶を見守る阿岡。だが彼はやがて席を立つ。「2年前、おまえは私との試合に来なかったな。再度の試合を望んでいたが、今のおまえでは…」と司徒寶に告げる。またトニーには「以前、道場破りに来たな。また来いよ」と告げて、ウインク。
カーファイ、キザーーーーーーー!
司徒寶はすっかり忘れていたようだが、マン親分もまた、かつては「柔道界の小覇王」と呼ばれた若き柔道家だったようだ。
またまた若い衆から借金を取り立てた現場に、なんと着ぐるみ姿で乗り込んでカバンを奪おうとした司徒寶と小夢(おまえら、いいかげんに……_| ̄|○)に、「借金したいなら、いつでも貸してやるのによ」と脱力する。彼は、自分を思い出せず小細工を弄した司徒寶がじれったかっただけらしい。
……何だよ、柔道家ばっかりなのかよ。
どうなってんだ、この映画世界の香港は?
香港が世界に誇るカンフーは、一体どーなったんだぁぁ。
司徒寶は道場破りを続けるトニーに「なぜそんなに勝負したがるんだ」と尋ねた。
トニーは「オレは網膜色素変性症で、30代を過ぎると失明する運命なんだ。だから今のうちにやりたいことをやっておきたくてね」と軽やかに応える。
冗談っぽい言い方だったが、その日、トニーが店の控え室で自分のロッカーを開けると、眼科医や網膜移植センターの名刺が重ねて置かれていた。
司徒寶を見やり、ふっと微笑むトニー。実に謎めいた男だ。
もったいぶって店内に「柔道選手権2004」のポスターを貼るトニー。
出場選手名の中に、一心館の師匠の名前を見つけてハッとする司徒寶。
司徒寶は小夢に頼み、一心館の師匠に、マン親分の金2万ドルを渡してもらおうとする。
ところが、いくら待っても会合場所のレストランから小夢が出てこない。
店内に入ると、彼女は親子と一緒にステーキ食ってたりなんかする。
「なんで食ってるんだよ!」「だって、本人に直接話しをさせろって師匠が」と小突き合う二人。
「おまえも食え」と、師匠は司徒寶を座らせる。
師匠は、選手権の優勝者に与えられる賞金と栄誉で、自ら一心館を再興しようと決心したのか。
金はここの支払いだけでいい、それより入場券をやるから、試合を見に来いと不肖の弟子・司徒寶を誘うのだ。
それにしても、2年前、何が司徒寶に起こったのか?
司徒寶はまた師匠から返された大金を手に、小夢の制止も聞かず賭場に乗り込む。たまりかねた小夢は、彼がもうけたばかりの札束をもぎ取り、賭場から走って逃げ出す。
いくら言葉で言ってもギャンブル狂いが聞かないのなら、実力行使だわさ。
しかし死に物狂いで疾走して逃げるわけでもなく、彼女は両手からこぼれたお札を拾い集め、追っ手の手が届くか届かないかのところまで戻ったりして、緊迫感ゼロ。

彼女に手を出されまいと、身代わりにボコボコにされてよろめき歩く司徒寶に、わざわざ追っ手の前まで戻って靴を拾ってやったり。
追っ手に捕まったら女の身、ただじゃすまないのにさぁ…。
さすがにこんな真似をしちゃ、司徒寶はどの賭場にも出入り禁止を食らう。ギャンブルに依存して現実逃避できなくなったのである。
なるほど"共依存"関係を防ぐ、こんな荒っぽい手立てもあったか。なんて感心してる場合じゃなかったが。
おそらくすでに20代後半であろう小夢は、香港での芸能オーディションに年齢を理由にことごとく落ち、日本でのデビューを目指すと司徒寶に告げて「AH」をさっさと去る。
「柔道選手権2004」の大看板が掲げられた、試合会場。その前に立ち尽くす、司徒寶。
中に入れないまま、逡巡する彼の耳に、近づいてくる救急車のサイレンの音が…。
顔色を変える、司徒寶。
ケガ人らしき選手が担架で運び出され、意識不明のまま救急車に搬入された。
付き添うのは……やはり、師匠の息子阿正! てことは、倒れたのは師匠!
病院で師匠を探してよろめき歩く、司徒寶。
病人はアンタでしょーがと思うのだが、医師も看護師も声をかけて保護しようとしない…。
阿正が見つめ続ける、装置に表示される光点が、ついに動かなくなる…。
生涯を柔道一筋に賭けたおししょーさま、ご臨終です…。
司徒寶が立ち会い、保護者を失った阿正は障害者自立支援センターに引き取られることになった。
一方、日本でのデビューの夢を賭けた芸能プロダクションの男?(演じるのはジョニー・トー専属スチールカメラマンの日本人、岡崎裕武氏だとか)に見放された小夢。
自立支援保護センターを脱走し、街角でチラシを配ろうとする阿正を、司徒寶はセンター職員らと共に追いかける。
道場で、昔どおりの生活を続けようとする阿正だが、もはや父親はいない。
結局また、センターに戻るしかない阿正なのだ。
失意の司徒寶も小夢も、またもやホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
前後の座席に座る二人。前の司徒寶に気づき、緊張の糸が切れたのか、背もたれに顔を押し付け、泣きじゃくる小夢。
彼女に気づいているのかいないのか、顔を上げてのけぞるように目を閉じる司徒寶。ここがポストカードのシーンだったのか。
……恋というのじゃ、ないけれど……。
再び、3人の奇妙な共同体生活が始まろうとする。
ステージに向かうとき「目は大丈夫か?」とトニーにそっと聞く司徒寶。トニーは「ああ、ありゃ方便だよ。病気だって言えば、皆拒否できないからな」と軽く答え、司徒寶は激怒して飛びかかる。
あああ、また乱闘です…。
やっぱりトニーに負け、店を飛び出す司徒寶。
トボトボ歩きのルイスが、可愛い…。
そのやるせなさそうなトボトボ歩きが、やがてシャドーボクシングならぬシャドー投げの体勢へ変わっていく。
ふと目に入るのは、一心館の入り口。
師匠亡き後、放置されている道場のマット上を、うれしそうに転がり回る司徒寶。
なぜか阿正も自立支援センターを脱走して飛び込んでくる。まるで師範代を務めるかのごとく、阿正と共同生活を始める司徒寶。
やがてバーで、道場で、トニーとも勝負する。
すっげーーー嬉しそうにニコニコしながら、男二人でくんずほぐれつ練習されては(汗)。
司徒寶は、マン親分とも店のオーナーとも、柔道の勝負で落とし前をつけてしまう。
やっぱり皆、組み合いながら嬉しそうに声が弾んでたりする。
何だ、そういうことか。
みんな柔道狂で、司徒寶ファンで、オーナーは将来を嘱望された司徒寶の堕落を心配してマスターに据えてやり、マン親分も彼と再び立ち合いたくて、ちょっかい出していたってことか(違)。
小夢も、一つの落とし前をつけようとしていた。
高級レストランで、彼女と食事する、パリッとスーツを着込んだ清水章吾。
いや違う、チワワ共演CMのあのオジサンじゃなくて、何と初老のその紳士を演じているのは、「悲情城市」文清のお兄ちゃんことジャック・カオ・ジェ高捷! いやー見違えました…清水章吾にしか見えなかったよ。
その高捷こそ、小夢の父親だったのだ。
彼女は台南から台北へ、台北から香港へ、香港から日本へと、歌手を夢見て夢中で飛び出してきたらしい。何という、行き当たりばったり人生。
父親はそんな無軌道娘を心配し、一度は家に戻れと説得しに、台南から香港に出て来たのだろう。
父との会食から「AH」の近くまで戻った小夢は、赤い風船が木に引っかかって、どこにも行けないでいるのを見上げる。
何とか風船を取ろうとする彼女に、司徒寶も、トニーも、肩車で応援する。
日本の高校生トレンディードラマみたいな、3人の共同体ぶりが、微笑ましいったらない。永遠のピーターパンとウェンディ、いやむしろティンカー・ベル。
男女の性愛ではなく、それぞれの夢を追うのに手を貸す仲間、同志愛が3人を結びつけているのだ。
アーロンがアーロンが、そんなことさせられたらまた背が縮むぅぅぅ!と心配しないでもないけど。
司徒寶とトニーに見送られ、父親に連れられ車に乗る寸前、小夢はやっぱり逃げ出した。
一心に駆け抜ける彼女に、司徒寶はパンプスを拾って放ってやり(賭場から逃げ、追っ手と悶着があった時の彼女の気配りの優しいお返しですね)、嬉しそうに見送る。父親もまた、結局は声援の言葉を叫ぶ。
この"南の女"は、決してクヨクヨ悩んだり、周囲を恨んで呪ったりしないのだ。行き当たりばったりだけど。
すがすがしいまでに、オトコマエ。

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