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法で裁けぬ悪を討つ…「SPL 狼よ静かに死ね」

 ここのところ、香港・中華圏映画をよく見に行く関西人チームで、今日関西封切りの「SPL 狼よ静かに死ね」を鑑賞。
 大阪では、かつて松坂慶子姐さん主演作「桃色」を上映していた映画館と同じビルにある、大阪の映画館「天六ユウラク座」が会場です。
 他の観客は、オッチャンが多い。わずかながら、ドニーファンなのか、香港映画なら何でも見るのか、女性2人連れも。
 場末感、アリアリ。
殺破狼看板01
 併映は、そんな映画が製作されているのも知らなかった哀川翔主演「デコトラの鷲 其の参 恋の花咲く清水港」と、なぜか米国アカデミー賞受賞作「SAYURI」。
殺破狼まつげ長いドニー
 下まつ毛がミョーに長いドニー・イエンの看板絵が、まつ毛くるんのチャン・ツイィーの看板絵と並ぶとは、ご本人方もさぞかし意外でありましょう…。

 さて、なるべく予備知識を入れずに見た「SPL 狼よ静かに死ね/殺破狼」。
 かつての香港皆殺し映画を懐かしく?思い起こさせた、血みどろアクション映画でした。

 音楽はかつてイーキン・チェン鄭伊健や陳小春のお抱え作曲家として頑張り、「インファナル・アフェア」3部作のBGMを手がけ、TBSドラマにそっくり曲想をパクられるほどになったコンフォート・チャン陳光榮先生ではありませんか!
 まさに壮大なスケールで鳴り響くオーケストラ演奏と、時には悲しく響き渡る弦の響きと女声スキャットが、かつての香港皆殺し映画とは一線を……劃しているか…な?

 題字は、書家としても知られる真夜中のプロ・ボウラー…もとい、香港明星のアンディ・ラウ劉徳華その人だ! 「華題」の署名も目立つぞ!
 「殺破狼」の「破」の字が、石へんでなくて口へんに見えたのは、何か理由があるのかな?

 そして監督は、「OVER SUMMER/爆裂刑警」「ジュリエット・イン・ラブ」「ラヴァーズ&ドラゴン/小白龍 情海翻波」などなど、アクション+情感+ちょっとシニカルな宿命論に満ちた数々の佳作を創り上げてきた、ウィルソン・イップ葉偉信監督だったのでした。
 懐かしい…茶水のおばさんの名前さえ、見慣れた楊容玲さんなのが懐かしい、香港映画でした。

 さて、内容は。
 前宣伝やチラシなどのビジュアルとは大いに違い、
 ダニー・リー警察チームを彷彿とさせるサイモン・ヤム任達華率いるチーム+サイモン・ヤムリーダーの後任として赴任するはずの一匹狼・ドニー・イェン甄子丹
         VS
 黒塗りベンツのトランクにゴルフクラブを仕舞いこみ、どこの洋服屋で仕立てたんや! 吉本芸人島木譲二御用達の、ミナミの服屋か!と突っ込み入れたくなる紫のシルクスーツと葉巻をご愛用、後ろ髪が「ベルベット・レイン」のアンディ・ラウ並みに長いサモハン・キンポー洪金寶の、
 法律もク○もあるかい! 何が何でも絶対におまえをとことんぶちのめしたるわい! ガチンコ対決!!!
 でした。

 思えば、ダニー・リー李修賢率いる香港警察重案組(特別重犯罪捜査班)チームも、アンソニー・ウォン黄秋生ら度を越して凶悪な犯罪者に立ち向かうためとはいえ、証拠は捏造する、罠にはめて別件逮捕する、度を過ぎた拷問で被疑者に自供させようとするなど、よくムチャクチャやってましたもんです。
 犯罪者集団も香港警察重案組も、怖いこわぁい(関西弁で)。
 おまえら、仮にも社会の公僕なら、六法全書を隅から隅までもう一度読んで、法律を頭に入れて、警察学校に入り直せーーー!と、当時はダビングビデオ見ながら、よく突っ込みましたもんです。

 あ、香港に六法全書はないかも。
 多分、ない。
 ないと思う。

 勤務そっちのけで水浸しのアパートメント自室に走って帰るトニー・レオンや、
 街をぶっ壊しまくっても被害者多数出してもクビにならないジャッキー・チェン成龍やアンディ・ラウやラウ・チェンワン劉青雲や、
 ヤンになりきったつもりで深夜のオフィスを徘徊して、または同僚をストーキングして殺し回る内務調査課のラウが、クビにならないんだからして(だから、現実にはいないって!)。
 
 とにかく、サイモン・ヤムと愉快な仲間たち、
 もとい、サイモン・ヤムと頼もしい不敵な仲間たちのメンツとは、

 あらあら懐かしい、ワシャワシャの髪型もちっとも変わらない台湾出身のベテランロック・ミュージシャン、ダニー・サマー夏紹聲と、
ダニー・サマー

 かつてジェイコブ・チョン張之亮監督の「籠民」で知的障害のある青年役を見事に演じ切り、「インファナル・アフェア2 無間序曲」で無口な三叔を演じたリウ・カイチー廖啓智と、
渋いぞリウ・カイチー

 台湾元アイドルというケン・チャン智堯というもの。
ヒトクセありげなイケメン=ケン・チャン
 うーむ、ケン・チャン智堯がよく解りません…。
 彼についてググってみたけど、やはり香港在住の茶通さんの「香港電影迷宮+blog」が詳しかった。「家族はみな、ブラジルさ」の謎が解けて、感謝です。

 サイモン・ヤムは重案組を率いるチャンことチャン・クォッチュー陳国忠捜査官役。長年、執念深くマフィアのボスであるウォン・ボー王寶(サモハン・キンポー)を追って来たのでした。
実は主役のサイモン・ヤムヤム

 王寶の犯罪を証明できる唯一の証人一家を護送中、王寶の手下である金髪ジェットに車をぶつけられ、証人はジェットのナイフで首をかっさばかれ、妻も死亡。遺された女の子ホイイーを養女とするが、その事件の傷も癒えて無理やり退院する日、医師に脳腫瘍を宣告される。

 この金髪ジェット。

 演じるはウー・ジン呉京。

 後にものすごーくつおーーーーいナイフ遣い(刀かな、と思ったけどやっぱり大型ナイフだと思う)だと解るのですが、あいにく正面から睨むと、どう見ても2時間ドラマの帝王こと、船越英一郎にしか見えないのですよ。

 金髪の船越。


 不敵に微笑む船越。


 身のこなしが感服するほど敏速で、

 長年鍛錬してきたと分かる引き締まったボディがカッコいいけど、
 顔だけが船越。


 うーん、うーん、うーーーーーん。

 
 その頃、チャンは一人の刑事に潜入捜査を命じる。「俺が必ず、おまえを守る」と断言して。
 出たーーーーー。
 潜入捜査官と上司の愛。
 でも本筋ではないので、「インファナル・アフェア」シリーズのウォン警司とヤンほどの愛…交流は描かれません。

 一方、収監されていた王寶は、証人死亡のため証拠不十分で釈放されますが、若妻は習慣性なのか、心労のせいか流産してしまう。
 「どうしてもあなたの子どもが欲しい」と泣き崩れる妻を病室で抱き、王寶は哀しみにくれるのでした。
 自分が収監されてさえいなければ…マフィアだって、家庭円満の幸せが欲しいのに…。
 病室の外で一人、王寶がうなだれていると、小さな女の子が「おじちゃん、アメあげる」と、握ったキャンディーを差し出す。

 オレンジとグリーンのキャンディーを持っていたのに、なぜか差し出したのはオレンジ色。
 「あの子、きっとオレンジ味が嫌いだったんですよ! だからグリーンじゃなくてオレンジ味をあげたの!」と、いついかなるときもバッグ内に「アメちゃん」が入っている関西のOL&オバチャンたちは、感想を述べ合ったのでした。

 心なごむ王寶ですが、女の子の腕をさっと引き、憎しみのまなざしを向けるのが、同じ病院で脳腫瘍宣告を受けたばかりの、チャン捜査官。
 二人の遺恨試合・全面対決は、しかし3年後に持ち越されるのでした。

 あれ?
 看板俳優の、ドニー・イェンは???
 
 3年後、脳腫瘍の手術で何とか生き延びてきたものの、いよいよチャンの退職・後任に譲るべき日が迫る。彼は何としてでも在任中に王寶を捕らえようとあがくのでした。
 3年後なのに、チームに大事に育てられたホイイーちゃん、全然成長してません。
 フィギュアの浅田真央たんみたいに、美少女になってるかと期待したのになあ。
 ダニー演じるサムは、離婚歴があり、妻子は海外移住した様子で、年頃の娘だけが父を慕って香港滞在中に逢いたいと連絡をくれている。
 リウ・カイチー扮するワー(阿華)は両親と折り合いが悪く、父親と喧嘩を繰り返した様子で、女っけもない中年男。その分、サイモン・ヤムヤムの片腕として忠実に尽くして来た。
 ケン・チャン演じるロクは、何となく後ろ暗い事もしてきたような、ドライな若手刑事。潜入捜査官に選ばれなくて、がっかりしたりしてる。
 
 3年後の中盤からは、キーワードは「父の日」です。
 日本では母の日商戦に比べて影の薄い父の日ですが、香港男人にとってはかなり重要らしい。
 しかし、かつてアル・カポネと彼が黒幕だといわれる聖バレンタインデーの虐殺(別名:血のバレンタイン)のごとく、
 男たちの、ひと時の家族団らんの日になるはずだった父の日に、次々と主要人物が斃れてゆく。
 
 おっとその前に、燦々と陽光が降り注ぐ海水浴場でも、夜の歡楽街でも、いつでもどこでも革ジャンの、マー馬軍ことドニーさんを紹介しなければ!
 サイモン・ヤムヤムの後任リーダーとして、やっと看板俳優、登場ですよ!
 いつでも革ジャン。黒ずくめ。
 いつでもニヒル。

 新しい上司の着任前に、チームのメンバーは噂する。
 「今度のボスも凄腕で暴れん坊らしい。かつて犯人を殴って一撃で脳障害を負わせたそうじゃねえか」
 「ケッ! 俺はそんな奴、ボスとは認めないぜ」
 と吐き捨てるのは、結婚もせずひたすらヤムヤムに忠義を尽くしてきたらしきワー。
 着任を待たずに王寶を追い詰めるため麻薬密売・売春現場のアジトに向かう彼らの車と、西警察署前ですれ違うドニーの車。
 彼は明日から赴任する予定の、無人の職場を見渡し、部下らの性格と家庭環境を一目で把握する。
 いやー、いつサイモン・ヤムらのチームがすぐに戻って「マー、おまえのニックネームを決めたぞ。ローンウルフ刑事ってのはどうだ?」
 「ボスぅ、ローンウルフは長いでしょう、それよりジプシー刑事でいいんじゃないすか。山さん、どうです?」
 「いや、長さん、やはり私は"はぐれ狼刑事"がいいと思いますね。こういうことはボスにお任せしますが」
ボス「ローンウルフだよやっぱり。今日からおまえはローンウルフだ。よろしくな」
 などと、「太陽にほえろ!」七曲署捜査1係と化すかと期待しちゃいましたよ。

 ……そんな期待をするのは、nancixぐらいだよね……_| ̄|○

 ドニーさんが、幼い娘と二人でにっこりほほえむ短髪ダニー・サマーの写真にふっと和んだりしている間に、しかし連中、王寶の息のかかった連中による麻薬密売アジトのガサ入れ現場で、むちゃくちゃ暴れていたのでした。
 あまつさえ、若手ホープのロク刑事ったら、ガサ入れの最中にためらいなく、押収するべきマフィアの大金を横取りしたりしてしまう。

 見てみぬふりのワー刑事。

 理由は「サイモンの養女となったホイイーちゃんの養育費に充てる」だったと、後で解ります。

 …まあ、公務員の給料、しかも満額の退職金がもらえない早期退職となると、ホイイーちゃんが将来カナダ留学したいと言い出しても、無理ですわな。
 …この展開、何だか懐かしい「アンディ・ラウ トニー・レオン 蒼い獣たち/五虎之決裂」を彷彿とさせますですよ。

 夜、サイモン・ヤムヤムがドニーを連れて王寶の縄張りを案内していると、大量のゴキブリ…失礼、黒Tシャツや黒ランニングシャツでたむろしている、人相の悪いチンピラどもに出くわす。
 何だか尖沙咀東の、ショッピングモール内のナイトクラブ前みたいだったわーん。
 サイモン・ヤムヤムとドニーの姿に気色ばみ、不穏なムードの中、一人の制服警官おじさんが、うっかりチンピラどもに「何してんだ?」と注意してしまう。
 逆上するチンピラども。おまわりさん、危うし!
 とっさにサイモン・ヤムヤムは、自分が潜入させた部下を、チンピラの怒りをそらす目くらましに使うことを決心する。
 今度は潜入部下、危うし。
 そこへ割って入る王寶。
 ついに顔を合わせる、宿命の男二人。
 見つめ合うサイモン・ヤムヤムと王寶、
 そしてモロに部外者ーーーっのドニーさん。

 えと、この映画の主演男優は、えーと、いったい。

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