せっかくの映画の日、レディース・デーと重なっちゃいました…。おまけにちょっと油断して職場を定時に出られず、「単騎、万里を走る」も「THE 有頂天ホテル」も間に合わず。レイトショーだと終電に間に合わないし…。というわけで「オリバー・ツイスト」を見てみました。
原作を読んだのは遙か昔。ほとんど忘れていて、救貧院で名前をアルファベット順につけられた、というくだりだけ思い出しました。
美術はすごい。冒頭とエンディングに銅版画(小説の挿し絵かな?)が出てくるのですが、まんま再現できてます。ロンドンの市街地は煙突からの煙でかすみ、馬車が行き交う石畳の街路には、ちゃんと馬の糞も落ちてるし。貧民窟は垢まみれの体臭が臭ってきそう。しかし人口過密だったんだなあ、当時のロンドンって。
店舗建築は、基本的に「ハリー・ポッター」の頃とあんまり変わってないのが、さすがは英国。
ふむふむ、あれがporridge(お粥、ポリッジ)か。確かに孤児らには到底足りない量だし、何よりまずそう。焼かないもんじゃ焼みた…あわわわ。
憂愁のまなざしの美少年、バーニー・クラーク君、長いまつ毛、伏せ目がちの表情、おびえる姿、高熱でくらっと倒れるはかなさ。
ええですなあ。
ギムナジウム…じゃない、寄宿制エリート校の制服を着せて、同級生や上級生とふざけたり、窓辺にもたれて哀しげな遠いまなざしを青空に向けたり、図書室の片隅で悩みを打ち明けたりする姿が見たい。少年合唱隊などに入れてもみたい。
でも来日プロモーションの時にはもう、育ちすぎていたりするんだよね。美少年も美少女も、ほんのいっときの「時分の美」です。
盗品故買屋でスリ少年団の親玉フェイギン、とてもサー・ベン・キングズレーに見えない特殊メイクぶり。ていうか、キングズレーの素顔が思い出せません。ええと、かつてマハトマ・ ガンジーを演じたんだったよね? 素顔…ガンジーの顔しか出てこない(泣)。フェイギンって、どうも絞首刑になるほどの悪党に思えないなあ。せいぜいが小悪党。前宣伝の「心優しき悪党」では全然ないけどね。しっかり脅すし、ステッキでお尻ペンペンするし。孤児たちに窃盗を強要し、少女には売春させていたとしても、みんな階級社会を生き抜くためのすべ。救貧院よりマシなもの食わせて衣服着せて寝かせてやってたんだし…懲役数年で勘弁してやってほしいような。あの時代は、貧しいというそれだけでも、すでに罪人扱いだもんなあ。
執筆家のブラウンロー氏、まさかTV版「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズの2代目ワトソン君だったとは、見終わって公式サイトを覗くまで気づかなかったなあ。ドラマ見てるときから(ワトソン君、老けすぎ)と思ってたけど、さらに…。ちょっと英国を舞台にしたコミック「エマ」で、裸足の孤児エマを家に引き取ってメイドとして仕込み、働く心得やマナー、読み書きを教える元家庭教師を思い出してしまいました。ブラウンロー氏が善人で、ほんとにオリバー君は幸運でした。
そして、フェイギンに仕込まれた一人で、今は悪党ビル・サイクスの情婦として売春で生計を立てていそうな、ぽっちゃりタイプの小柄なナンシー……うわお! そうだった、「ナンシー」だったんだ。すっかり忘れてたよ。こんなに若い子だっけ。仲間の娼婦には「ナンス!」って呼ばれてるような。
悪党のビルって完全に反社会性人格障害者なんだけど。フェイギンから売り渡されて無理やり情婦にされて、まあそれでも食えるからいっか、ビルの暴力怖いしネチネチ虐められると厄介だし、適当におだてて慰めて機嫌よく稼がせておこうって感じだったのかな。あの時代には金も家もないのに女一人では、到底生き抜けない。
そんな彼女が、新顔の美少年の命を救おうと必死になる。何の縁もないのに、みすみす殺されるのは可哀想だというだけで。
できればナンシーには、密告を知ったビルに襲われても、引っかき傷の10ぐらいこしらえるぐらい抵抗して、ステッキ奪って数発殴り返すくらいの活躍を期待したかった(自分が殴り殺されかけたら、恐怖ですくみ上がっていなければひっかいて、せめて爪の間に犯人のDNA残して検屍官の慧眼に期待)けど、まあ、あの時代の小説なんだから仕方ない…。
オリバーって、言ってみれば生きるためのすべを何一つ持たない田舎者なんだけど、不思議と助けてくれる人が現れるのは、やはり彼が純情そうな美少年だからでしょうか。生まれつき小ずるそうな悪ガキの顔つきだったら、到底ロンドンまでの旅の途中で助けてくれるおばあさんは出てこなかったんで野たれ死にだし、「早業ドジャー」にも助けてももらえず、ロンドンの街角で飢え死にしてたかと。ブラウンロー氏だって、家に引き取ろうとまでは思わなかったはず。
美男はトクだ。
持って生まれた哀しげな瞳の威力に加え、目上の男性には「サー」と呼びかける礼儀正しさも魅力。文字も読めるみたいだし、孤児院や救貧院ではそういうしつけと教育が受けられたんだっけ? それとも、身近にお手本になる人がいたんだっけ? このへんも原作にあったんだろうけど、思い出せない…。とにかく教育と品位は、重要です。持ち前の美醜は仕方ないけど、品格は努力で身につけられるはず。「生きるため、仕方ない」と言い訳して巾着切りにも強盗の手先にもなれたんだけど、幼いながらもオリバーは、不器用なまでに悪に染まることを拒む。非力だから正面切って立ち向かうことはできなくても、泣きながら、必死で。

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