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痛すぎた「親切なクムジャさん」

親切なクムジャさん SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE 「SAYURI」に続いて「親切なチャングムさ」…もとい、「親切なクムジャさん」も、遅ればせながら大阪で見た。
 「オールド・ボーイ」と同じ上映館。上映開始時間が他館よりも遅かったので、助かった。
 思えばミョーなタイトル(原題の直訳、韓国映画には多いよな…)と、トニー・レオンとイ・ヨンエさんの夢の2ショットが見られた2004年の第9回釜山国際映画祭での記者会見で、印象に残っていた作品。あのときは「新作はどんなストーリーですか?」と聞かれて「親切な、クムジャさんの話です」と照れ笑いしていたイ・ヨンエ李英愛さんだった。
釜山でのイ・ヨンエとトニー
 イ・ヨンエ出演映画を見るのは「JSA」、「春の日は過ぎ行く」以来だ。
 nancixの「映画女優の許容範囲」は結構狭くて、永遠の憧れ原田美枝子、若い日も今も魅力的な岸恵子、若い頃の高峰秀子や浅丘ルリ子、鈴木京香、仲間由紀恵ちゃん、中華圏ならシルヴィア・チェン、ブリジット・リンぐらいしか「美人」に見えない。昨今の香港には、美人ー!と手放しで言える映画女優がいないのが悲しいところだ。賞独占のセシリア・チョンは痩せ過ぎ・ドスが効き過ぎだし(「無極」には期待ー!)、カレーナ・ラム林嘉欣ちゃんもまだまだ「カワイコちゃん」でしかないし…。
 
 そこへいくと、韓国にはイ・ヨンエさんが存在する!
 もー、うっとり見とれちゃうほど端正。美しい。透き通った瞳の輝きが何ともいえずさわやか。柔和なのに、硬質なクリスタルのように、神秘的で侵しがたい空気をまとっている。たとえ、普段着はそんじょそこらの女子大生のようにカジュアルで性格は裏表無く(つまり単純?)ひたむきだとしても、だ。
 なのに、「宮廷女官チャングムの誓い/大長今」を経て、選んだ作品が、女囚の復讐ものですよ。
 その心意気といったら、「花様年華」と「2046」の間にベタな香港ラブコメや「インファナル・アフェア」に出演したトニーさんに通じ……通じませんかね……?
 とにかく今のところ、トニー・レオンと共演してほしい女優ナンバー1なのだ。トニー、のんびり休暇取ってる場合じゃありませんぜ。チョウ・ユンファ兄貴が先に共演しちゃうかもしれませんぜ。

 オープニング。まるで「♪美しさはー罪ーー」とばかりに、画面いっぱいにうねうねとイバラが伸び、小さな深紅のバラが咲く。
 刺青のようでもあり、アールヌーボーの紋様のようでもある。
 虫プロには珍しかった官能アニメラマ映画「哀しみのベラドンナ」や、同作の美術を担当した深井国のタッチさえ連想させる(古すぎ)。
 英語題は「SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE」。
 レディーでっせ。
 ウーマンの復讐への共感、とちゃいまっせ。

 音楽は弦楽器やおそらくはハープシコード(ピアノの原型)による、ワルツが主旋律。
 時々「夢二」「花様年華」で用いられた、梅林茂の「夢二のテーマ」っぽかったりして。

 しかし本編はまあ、劇画「女囚さそり」シリーズからレ○プだの輪○だののオトコがうひょうひょ暗く喜ぶ部分を削除した、調子だった。
 女囚の皆さんって、あのキョーレツなレズビアンな人以外は、泉ピン子や南果歩(渡辺謙夫人!)が出てた女子刑務所ドラマと、そう変わんなかったし。
 さすがに、神聖なチャングムさんをけがすわけにはいかなかったですか。同性としては、ちょっぴりホッ。しかしそれでは、女優として、殻を破ったと言えるんだろうか? いや殻を破らなきゃ絶対ダメッ!てわけじゃないけど。
 子どもの頃、劇画全般も梶芽以子も(見ちゃいけない、怖くてイヤらしいもの)だったのだが、今ではなんだってそんなふうにタブー視してたのか、バカバカしくなる。多分、いま「女囚さそり」の復刻DVDなんか見たら、腹抱えて笑えそうだ。トシ食って図太くなったのかなあ。だから、この「親切なクムジャさん」も、昔の自分なら到底見られなかっただろうけど、今だから、平気。「オールド・ボーイ」の"悲しゅうてやがて可笑し"いオフビート感とも共通するってのも、エグそう吐きそうなんじゃ…という危惧を薄めてくれた。

 梶芽以子の「さそり」は、黒くてつばの広い帽子と黒革コート、ブーツを"制服"にしていた記憶がある。
 イ・ヨンエさんも後半、赤いアイシャドウに黒アイラインに黒ずくめの姿で、雪の街頭や、がらんとした廃校の小学校で大活躍。
 ……怪しいって……そんな姿、目立ちすぎますって、ご両人さま。
 ヨンエさんご本人いわく"不良女子高生"姿も、むっちりした制服と不満げにとがらせた唇が可愛くて、あああ、ツイィーの小娘の援助交際的淫らさなんて全然無く。
 不良というより、愛情に素直すぎただけだよね? 好きっ!彼氏にオンナノコの大事なモノをあげたいっっ!と思ったら、後先考えず周囲の叱責どこ吹く風で、一途にのめりこんじゃっただけだよね? としか思えない(ひいきの引き倒し)。

 何より、………痛い。痛すぎる。
 昨今の日本人には、身につまされるプロットが、満載。

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