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 SeeSaaブログとJugemブログがあるから別にもういいようなもんですが、
 やはり書き溜めた映画感想などを一覧で見られるようにしたくって。
 もしも興味を惹かれたなら、お読みいただけると幸いです。

 From nancix

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「パイレーツ・オブ・カリビアン3」前夜祭

 そんなわけで「パイレーツ・オブ・カリビアン3」前夜祭字幕版、ネットでチケットをリザーブして、神戸で鑑賞してきました。
嘯風船長に扮したユンファ

 大阪などではコスプレで盛り上がろう!という趣向もあったらしいですが、神戸ではごくフツーのレイトショー。観客は真ん中あたりの15列ぐらいしか埋まっておらず、ちょっぴり心配…。まあ、2館で前夜祭やってたしこの国際松竹でも40分早く吹き替え版が上映されたし、終電の問題もあるしね。

 冒頭で、字幕:戸田奈津子というテロップに、「ロード・オブ・ザ・リング」の経験からして不安感…。
 「Fireーーーーー!」「Fireーーーーー!」「Fire Allーーーーー!」が
 「撃てー!」「撃てー!」「撃ちまくれーー!」
 はいいとして、
 「俺たちは腐った卵」って、何?と案の定、頭の中に???が浮かびました。
 英語台詞は「And really bad eggs. Drink up,me hearties,yo-ho!」だったのかな。
 帰宅してから「英辞郎」でbad eggを検索すると、
【1】腐った卵【2】さえない冗談、下手な演技【3】へまな計画、期待外れ、無益な企て
【4】当てにならない人、やくざ(者)、ろくでなし、悪、悪人、不良、悪党、信用できないやつ、人間のくず、恥さらし
 と出たので、「俺たちゃろくでなし 呑もうぜ、ヨーホー!」でよかったんじゃないの、と。
 あと、cuttlefishと呼ばれていたディヴィ・ジョーンズ船長は果たしてイカなのかタコなのか? cuttlefishだったら甲イカじゃないの?も疑問のまま。他にも吹き替え版を見た方が理解できた部分があったかもしれない。

 時代は英国東インド(貿易)会社がアジアなどとの貿易や交易を独占し、制海権を手中に収めている18世紀。もちろん海賊は目の上のコブ。英国海軍は海賊と関係すると見られる家族や一般庶民を片っ端から捕えて絞首刑に処していた。女子どもにも容赦はしない。
 絞首台に載せられた幼い少年は、しっかりと銀貨を握り締めている。彼は恐怖におののきながらも海賊の歌を歌い始める。処刑を待つ行列からも、唱和する声が…! だんだん大きくなっていくその歌声。少年は処刑され、銀貨は絞首台の下に転がり落ち、遺体は身ぐるみはがされ私物は没収されていく。だが歌声は続く。(実はその歌声こそ、海賊たちに決起をうながす「召集の歌」だったらしい。パンフを読まないとわからなかったけど)。
 平然と死刑執行状にサインし続ける英国東インド会社の実力者、ベケット卿の耳にも、歌声が聞こえてきた。
 ベケット卿は、今まで利用してきたエリザベス・スワンの父、ウェザビー・スワン総督をもはや邪魔者とみなし、部下に密かに始末するように指示を出していた。かつて、エリザベスの婚約者であった元提督のノリントンも、ベケット卿の企みを阻止できない。

 舞台は変わって、シンガポールに。水上に木造建築物が立ち並ぶうらぶれた街。英国軍が街路を駆け抜けるなか、ひそやかに水路を進む一艘の小舟があった。舟を操るのは、中国人水夫姿に変装したエリザベス・スワン。彼女はやがてバルボッサ船長とブードゥー教女預言者のティア・ダルマと合流するが、中華系海賊の連中に捕まり、連行されて武装解除されてしまう。
 一方、水路に潜んでいた海賊のラゲッティ&ピンテル、ギブス航海士らは捕まらずに済み、水路から中華系海賊らのアジト地下に潜入することに成功した。
 アジト内のスチームバスルームで、2人の侍女をかしづかせたシンガポールの海賊頭領、サオ・フェン嘯風船長が一行を待ち受けていた。スキンヘッド、顔には無数の刀傷、雄々しいナマズヒゲを伸ばした偉丈夫だ。
 いまさらしょうがないんだけど、この「嘯風」って、北京語でシャオ・フォン、広東語でシウsiu3・フォンfung1としか聞こえないんだけどなあ。どーしてサオ・フェンになっちゃったんでしょーか? やっぱり北京語ピンインの「Xiao feng」のせいか…それでもシャオ・フェンだよねえ。なぜに「サオ」……?
 ちなみに[風嘯]だと、風が吼えるって意味になるのね。

 嘯風船長はバルボッサらの意図を疑い、エリザベスの美貌と勇気に心惹かれた様子。しかし、「ディヴィ・ジョーンズ船長の"海の墓場"に至るための海図がほしい」「"召集の歌"が歌われた以上、9人の海賊長を召集して"評議会"を"世界の涯て"で開かなければならない」というバルボッサらの話に耳を貸そうともしない。それもそのはず、嘯風船長はジャック・スパロウに遺恨がある上に、すでにアジトに海図を盗みに入ったウィルを捕え、大いに立腹していたのだ!
 絶体絶命の彼らに、地下のギブス航海士らが剣を投げ上げた! たちまち乱闘が始まる。そこへベケット卿の配下である英国海軍が乱入してきた! 乱闘のなか、侍女らは殺されたものの、一行は何とか逃げ延びる。
 嘯風船長の配下の中華系乗組員を雇い(嘯風船長ならともかく、たかが水夫なのに英語が堪能すぎて笑える)、奪い取った嘯風船長の海図により、ブラック・パール号はディヴィ・ジョーンズ船長の"海の墓場"を目指して北へ、北へと航行する。氷の海で凍える一行。「境界を越え」「朝日が沈む時」「緑の閃光」…海図に隠された不思議な言葉に導かれ、ブラック・パール号は何と海の果て、滝のように海水が流れ落ちる「世界の果て」から真っさかさまに落ちていく……奇跡的に船は持ちこたえ、ようやく「「ディヴィ・ジョーンズ船長の"海の墓場"」にたどり着いたのだった…。

 独り、「溺死した船乗りが沈む永遠の墓場」に魂と肉体を縛り付けられたジャック・スパロウは、自分の分身と果てもなく会話を繰り返し、狂気と正気の間をさまよっていた。現れたエリザベスやウィル、バルボッサ船長もにわかに実体だと信じることができず、一緒に出発しようという誘いも断ろうとする。「おまえらのうち4人に俺は殺されかけ、1人は成功した。お前らと船に乗ることなんてできるか?」……言葉もないエリザベス。しかし結局、ジャックは墓場に留まることもできず、一行と共に出発する。
 "海の墓場"から"死の国の海"へ…ブラック・パール号の周囲は、海で命を落とした死人で埋まっていた。亡霊のように現れた無数の小舟のなかに、エリザベスは最愛の父の姿を見て必死に呼びかける。父はベケット卿の謀略で殺されたのだと悟ったエリザベスは、深い哀しみと怒りに浸るのだった。

 死人に満ちた海を見下ろし「海の死人をあの世に導くはずのディヴィ・ジョーンズは、一体何をしているの? 職務放棄じゃないの! 女神カリプソが与えた務めを怠るなんて!」と悲しみ怒るブードゥー教女預言者のティア・ダルマ。その声を聞いたウィルは、かつて、彼女と人間だった頃のディヴィ・ジョーンズに何か因縁があったことを悟る。だが彼女は詳細を語ろうとはしなかった。ただ「彼は自分の心臓を抉り出したことで不老不死の命を手に入れたが、その代わり永遠に海の上を船でさまよう運命になった。10年に1度、愛する女に会うため陸に上がることを許されたのに、務めを怠ったためにあのような怪物に姿を変えられたのよ」と打ち明けただけだった。
 エリザベスは父を殺したベケット卿への復讐を誓い、ウィルはディヴィ・ジョーンズ船長の船、フライング・ダッチ万号と一体化しかかっている父"靴ひものビル"を救いたい。だがエリザベスへの恋は、屈折したものになりつつあった。そしてバルボッサ船長とジャック・スパロウは子どものように意地を張り合い、ブラック・パール号の船長の座を奪い合う。

 実は、嘯風船長は東インド会社のベケット卿と密かに通じていた。ベケット卿はまた、ディヴィ・ジョーンズ船長の心臓を入れた「デッドマン・チェスト」を手中に収め、ディヴィ・ジョーンズ船長とその化け物乗組員、フライング・ダッチマン号を操ってもいたのだ。
 "評議会"会場に向かおうとしたブラック・パール号の一行だが、水を求めて上陸したとある島で、シンガポールからずっと行動を共にしてきた中華系乗組員が突然反乱を起こし、エリザベスが嘯風船長の船に捕えられた。嘯風船長はエリザベスに奇妙なことを口にしながら妖しく挑みかかる。「おまえの中に、女神カリプソが封じられているのでは?」……唇を奪われ必死にもがくエリザベス。そのとき……!

 というわけで、後は映画館でご覧くださーい。
 とにかく、当初スチールが発表された時には、(……またまたディズニー映画はフー・マンチューの古色蒼然としたイメージを引っ張り出すのかよっ! 中華系悪役といえばフー・マンチューとドラゴン・レディしか思いつかないのかよ!)と_| ̄|○したものですが、

 いやいやどうして。

 正直言って嘯風船長の登場から、もはやnancixの頭の中ではこの映画の主演は嘯風船長ーー!

 心臓わしづかみ、嘯風船長、らーーぶ!でありました。

「かちこみ!~」こと「龍虎門」吹替版鑑賞

 昨夜は突然の残業指令で、字幕版の「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」(以下、龍虎門 )を観ることが叶わず。
 やむなく代休の本日午後、吹き替え版を見てきました。神戸では上映が27日までなので。

 ……観客、4人(泣)。

 でも、映画開始前にロビーに置かれた液晶テレビで「傷だらけの男たち」予告編を堪能することができ、内心嬉し涙に暮れましたですよ。
 館内での予告編は、こないだもこの映画館で予告を見た"ターゲット一人に、殺し屋が殺到"という、香港ジョニー・トー映画のパクリのよーな西洋アクション映画と、某都知事の特攻隊映画のものだけで、がっかりでしたが…(岸恵子さん、やはりモンペ姿でもモダン過ぎます…)。

 さて「龍虎門」といえば、香港漫画之父…というより分業制コミック・プロダクション経営者兼実業家のトニー・ウォン・ユッロン黄玉郎氏(帳簿、決算書類などの偽造罪で入獄経験も有り)による35年来発行続行中の香港オリジナルコミックであり、いつ香港に行っても街角の雑誌スタンドで必ず薄っぺらいフルカラーの最新刊を売っていて、いわば米国のマーベルコミックスのようなもの。総合マンガ雑誌に連載されているわけではありません。
 その時々の明星をモデルに表紙を描く「古惑仔」シリーズは時々買ったものの、汗臭そうで絵柄がイマイチださくてやたら効果線だらけの「龍虎門」は、1冊も買ったことがありませんでしたよ。

 実はこの「龍虎門」、前身を「小流氓(小さなチンピラ)」と申しまして1970年創刊。主人公のウォン・シウフー王小虎と、柔道家でもある仲間のセッ・ハッロン石黒龍は14歳、兄のウォン・シウロン王小龍は17歳という設定だったそうです。社会の底辺であえぐ小市民の味方をし、強きをくじき弱気を助ける義侠心あふれるチンピラたちを描いた初期の絵柄は「龍虎門非官方網(アンオフィシャルサイト)」で見ることができます。

 たとえばこんな絵柄だった様子。
初期コミック龍虎門

 ……手塚治虫や石森章太郎というより、貸本漫画の丸っこい絵柄だ…_| ̄|○。
 ……キャラクターは全員、ブーツカットじゃなくて、パンタロンだ…しかも色使いがサイケ…_| ̄|○_| ̄|○。

 そして驚いたことに、主人公の王小虎は、家族を探しに中国大陸から香港にやって来た中国人という設定なのです。
 当時の香港なら、"大陸から来た貧乏人、田舎者"と差別される対象、いじめの対象になって不思議ではない設定です。そんな彼は四小将と呼ばれる少年らと出会い、闘いを通じて仲間となっていく。映画版でアンガールズが吹き替えなければ誰も気にも留めなかったであろう、メガネ君や光頭星クンらが四小将です。
 そこに悪人が次々と現れ、彼らを窮地に追い込むが必ず逆襲して死闘の末に最後には勝つ、とまあ、少年ジャンプやヤングジャンプやヤングマガジンで延々と連載を続けているあのコミックやこのマンガみたいなもので。
 さらに意外なことに、強大な敵役の「チュン(くさかんむりに全)灣十五狼」の首領、大狼王は実は、日本で最も勢力あるヤクザ組織Y…じゃなくて日本の犯罪邪教集団「羅刹教」の流れを汲む者であったのです。そこで主人公たちは、なんと香港を飛び出して日本に"遠征"するんですよ。Gメン'75の丹波哲郎御大に協力してもらったんでしょうかそれともインターポールに?

 当時の物語で三大悪役の一人とされたのが、羅刹教の教主・火雲邪神――そうです、吹替版で「シブミ」と呼ばれていた、あのマスクにマントの怪人だったのです!

 ……ん? すると、あのシブミは日本人か! 日本ヤクザなのか?

 龍虎門の面々と火雲邪神の死闘は、なんと200数冊を超えてもまだ決着がつかず、さらに火雲邪神と組む強敵邪教集団が現れます。それこそが韓国白蓮教

 白蓮五魔と呼ばれる魔人の一人が、実は火雲邪神の父親であり、白蓮教教主の東方無敵なんてのも出現………って、あれ? 白蓮教って、中国に南宋代から清代まで存在した宗教じゃなかったっけ。確か「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」に出て来たよーな。それに東方無敵……。金庸の武侠小説「笑傲江湖」の日月教教主・東方不敗からパクったな! 「機動武闘伝Gガンダム」のマスターアジアも東方不敗だっけな……(^_^;)

 白蓮教を倒し終えると、主人公の王小虎と石黒龍たちは再び日本で火雲邪神を追い、そこでまたもんのすごく邪悪な陳傲雲(王小龍を殺してしまうほど!)という敵役に遭遇し、彼を追って一同は今度はタイへ……。
 陳との死闘のなかで、王小虎は「降龍十八腿」という必殺技を繰り出し、さらに石黒龍が「摧心錐」という必殺技で追い討ちをかけ、ついに彼らは兄貴分の仇を討つのです!!!!!

 とまあ、キリが無いほどあちこちに行っては、風を吹かせ雷を落とし海を荒れさせ土埃を舞い上げて、彼らは闘い続けるわけですね。環境破壊ハンターイ。地球温暖化を防ぐにはLOVE&PEACEで彼らの死闘を止めよう! おーーっ!

 ……まあとにかく。

 その間に、丸っこいキャラクターだった王小虎らはどんどん劇画チックになり、香港における池上遼一ブーム(「クライング・フリーマン」「傷追い人」など)にも多大な影響を受け、まさにドニー・イェン甄子丹兄貴やニコラス・チェー謝霆鋒、ショーン・ユー余文楽らのようなランニングシャツやTシャツ+青ジーンズが真によく似合う胸板の厚い足長の……。
 もとい、キャラクターに似せてドニー、ニコ、ショーンが造型されたんでしたっけ。
「龍虎門」海外用ポスター
 Adapted From the most popular Hongkong Mangaですよ!
 「Manga」がすっかり世界に通用する英単語の一つに…天上の手塚治虫先生がお知りになったら、何とおっしゃるか…(ハラハラと涙)。

原作のタイガー王小虎
 こちら↑が最近の原作の王小虎。
 髪型…パーマかけてるのか?
 ニコラスバージョンの方が兄と似ているんじゃないかな。

原作のドラゴン王小龍
 兄の王小龍がこちら↑。ドニーさん、かなり似せてます。雰囲気出してます。

原作のターボ石黒龍
 金髪なだけで、ショーンバージョンとは似ても似つかない、原作の石黒龍。
 
 もともと香港アクション映画は、劇画やアニメ、ゲームという日本の誇るサブカルチャーと、すこぶる相性がよろしい。
 日本の劇画「クライング・フリーマン」も日本ではOVAとしてアニメにしかできなかったけど香港で「紅場飛龍」「浪漫殺手自由人」(90)など映画化されたし、
 四大天王(レオン・ライ黎明本人は除く)が売り物だった禁断のカプ○ン無許可学園映画化「超級学校覇王」(94)も、実に楽しかった。カ○コンによるジャン=クロード・ヴァン・ダムやラウル・ジュリア、カイリー・ミノーグまで出演の実写映画より、よっぽど。
 ジャッキー・チェン成龍も「シティハンター/都市獵人」(92)で、香にハンマーで追いかけられる冴羽遼のギャグシーンまで嬉々として再現してたしね。(悪乗りしたのか例のゲームの春麗コスプレまでやっちゃうジャッキーのこの珍作、シティハンターファンにもジャッキーファンにも不評ですが…)
 「欲望の街 古惑仔」シリーズ第1作目も、イーキン・チェン鄭伊健や陳小春ら実写キャラのアップが一瞬にして劇画の止め絵になるところで、香港の観客らは「おおっ」と歓声を上げていましたよ。nancixは思わず拍手しそうになったくらいです。
 荒唐無稽なキャラクター造型も俳優たちが大真面目に真剣に再現してくれるところ、劇画原作だからってミョーにツボの違うところで誇張しすぎた演出をしたり、物語に手を抜いたりしないところが、日本の凡百のコミックスの映画化とは異なるんでしょうね。「どろろ」とはワケが違うのだよ、ワケが。
 もっとも日本でも「のだめカンタービレ」など、「少林サッカー」以降、大真面目に抵抗無しにマンガの1シーンを再現してくれる世代の俳優らが出てきましたから、今後に期待ですが…(一応「ゲゲゲの鬼太郎」は観に行く)。

 まして、もうあなた方は存在自体がアニメ美形キャラそのものよ!と言いたいニコラス&ショーン、
 トニー・レオンと同い年でその引き締まった体型維持できてそこまで動けるって、凄い努力してるんですね…と涙しそうになるド兄さん…いやドニー兄貴ですもの。

 アンガールズだの某テレビ局アナウンサーだのアゲアゲヌード着ぐるみシンガーだの大嫌いなK田ボクサーを投入しなくたって、こちとら楽しんでやるわい!と、日本での宣伝戦略にゲンナリでありまして、こんなに観に行くのが遅れたわけですが。

 本日は残念ながら、吹き替え版でしか鑑賞できませんでしたが、けっこうこれも堪能できましたよ。
 「HERO 英雄」では残剣さまの声、「花様年華」で周慕雲役を担当した小杉十郎太さんが、弟の王小虎(タイガー・ウォン)から実質主役を奪ったも同然の王小龍(ドラゴン・ウォン)担当。
 小杉さんの重低音がまことに、ドニー兄貴のしなやかなのにパワフルな必殺技と、ニヒルな「恋というのじゃないけれど…私は抱かれてみたかった…」の男と女の複雑な心理にふさわしく。
 小杉さんの声だと、ドニー兄貴はあまりカンフー・ナルシストっぽく聞こえないんですよねー。いやもうこれだけカッコよくて声渋いんだから、多少の自信は有って当然でしょう! ブルース・リー李小龍以上に「いらっさーーーい」ポーズを繰り返し取っても許されるでしょうマトリックスのキアヌよりは!!!と思えてしまうのです。

 ニコラスとショーンの声は、まさにアニメキャラ声。いかにもって感じで、まあ合ってると思いますです。タイガーって正義漢で兄貴分としてリーダーシップ取れるキャラ、実は「龍虎門」の正統な後継者の一人…ってだけで、従来のアニメ主人公と同じく個性はないんだよねー。そりゃターボ・節句…じゃなくてセック(ほんとは石だからセッで、クは発音しない)の方が屈折があって紆余曲折があって、演じるには面白い個性的キャラだと思う。続編ではぜひともニコ&ショーンの個性の違いとそれでも力を合わせる男の友情やましいものは何もない!(でもちょっぴりあるかもしんない…)の意気に感じるところを掘り下げて描いてほしいっす!(ダメ?)

 眞鍋かをりさん、意外にあの気丈ながら、しんねりむっつりした薄幸の美女の羅刹女ことローザ役に合ってました。
 ドン・ジェ童潔ちゃんだと、ちょっと違うんだけどなあと心配してたんですが。

 上海電影集團公司、北京保利博納電影發行公司、香港のレイモンド・ウォン黄百鳴が率いる東方電影發行有限公司の中港合作、なので、中国ロケもかなりあります。

 物語の骨格は、nancixが家族が川の字になって寝転んでテレビで見ていた頃のジャッキー・チェンほかのカンフー映画のセオリー=お約束を、きちんと踏襲してましたよね。

やはり東は東、「ブラックブック」試写会

 さて3日夜、まもなく公開される新作映画「ブラックブック」の大阪試写会に行ってまいりました。
ブラックブック

 ちょうど1944年、ナチスドイツ占領から解放される寸前のオランダを舞台にしていて、主人公はレジスタンスに身を投じながらも敵のナチスドイツ将校(ただし切手の価値をよく理解し収集し、元は地理学者だったという文人型)を愛してしまい、総本部に潜入してのスパイ活動のなかで苦悩する若きユダヤ人女性。

 いわば「ラスト・コーション/色、戒」(仮題)西洋版とも言えるので、興味を持っていたのです。
 「この愛は裏切りから始まる」というキャッチコピーなんて、そのまんま「ラスト・コーション/色、戒」に使えそうだし。
 約25億円という、オランダ映画ではありえないほど巨額の製作費を出資したのは、オランダだけでなく英国、ドイツ、ベルギーなど多国籍なのも、中華圏映画と共通するし。

 今回の試写会は、以前からファンの森川みどりさんと、神戸大学大学院経済学研究科教授で外務省に出向、ベルギー日本大使館への赴任が決まっている奥西孝至さんの対談付きで、得をした気分。この奥西孝至さんの談話は、4月6日の朝日新聞大阪本社版夕刊に記事広告スタイルで載るらしいです。

 森川さんには、ぜひとも「ラスト・コーション/色、戒」大阪試写会でも軽妙に知的に司会進行役を務めていただき、アン・リー監督やトニーから貴重なエピソードを引き出していただきたいものです。

 オランダの映画事情には疎かったのですが、同国の総人口は約1632万人。香港は約704万人ですから、2倍以上ですか。しかし北海に面した地理的事情、植民地貿易で繁栄してきた歴史的背景、思想、信条、宗教、人種を問わず受け入れてきた寛容さ(おかげで香港マフィアも麻薬取引と売春で儲け…モガモガモガ…)のためもあり、上映される映画はハリウッド映画が多く、吹き替え無しの英語映画にオランダ語字幕付きで上映されることがほとんどという話でした。
 この映画の出演者もオランダ人だけでなく、ドイツ人、カナダ人など多彩で、台詞も英語、オランダ語、ドイツ語、ユダヤ人の間で話されるヘブライ語?など。そのところは、王家衛映画などに共通しますね。しかもヒロインのラヘル(英語ではレイチェル)=エリス役のカリス・ファン・ハウテンは、ナチスドイツ将校ムンツェ役のセバスチャン・コッホと恋仲になり、いまや熱々カップルなんだそうで…何もプライベートまで国際色豊かにならんでも。
 トニーと、ヒロインのタン・ウェイ湯唯は大丈夫だったよね…(^_^;)

 実を言うと、監督が、ハリウッドで「氷の微笑」「ロボコップ」「トータル・リコール」、栄えある?ラジー賞に輝いた「ショーガール」、「スターシップ・トゥルーパーズ」「インビジブル」のポール・バーホーベンなので、実を言うと好みに合うかどうか、危惧していました。
 「氷の微笑」「ショーガール」のエログロバイオレンスのコッテリぶり、アクの強さに、辟易する淡白な日本人なもんで。「スターシップ・トゥルーパーズ」「インビジブル」はもう予告編だけでおなか一杯になり、観てません。

 で、やはり危惧はある程度当たり、いやもう「グレタ・ガルボかイングリット・バーグマンか」と森川みどりさんが紹介した色白美女、カリス・ファン・ハウテンが、脱ぐぬぐ!
 ホントに濃い茶色からブロンドに髪色を変えると、見違えるほど艶やかに華やかになれる女優です。
色白美女ラヘル(エリス)

 それなのに。

 ワンピースの裾べろーーんで素足を太ももまでおっぴろげー。
 ○っぱいべろーーーーん。
 髪だけでなく別の箇所の毛も薬品を刷毛で塗って脱色しちゃう、それも男の前で!(最初は何をして「染みる~!」と悲鳴挙げてるのか、気がつかなかったよ…(ーー;))
 全裸も辞さない大胆さ。彼女だけじゃなくて、オランダで助演女優賞を獲得したというロニー役のハリナ・ラインも。

 どんな濡れ場でもおっぱ○を死守する中華圏の女優を見慣れていたので、もークラクラいたしました。
 さすがは"飾り窓の女"などの売春が2000年から合法化されたオランダ……って、ちょっと関係ないか。とにかく、あまりに大胆にスパッと全部見せしちゃうと、イングリット・バーグマンの冷たくツンと澄まして自分を律している中の、ぞくぞくする色気やほのかな媚が生まれないのね、と改めて痛感。
 ためらい、恥じらい、じらし、誘いかけ、また突っぱね…といった男と女の駆け引きの方が、妄想が膨らんでくれるんだよなあ。

 そうそう、この映画はPG-12です。お忘れなく。

 まあ、ラヘルことエリスは戦前まで英語で歌っていた歌手で、中産階級らしい家族と離れて女一人で自活していたという設定なので「アンネの日記」のアンネ・フランクや幼いオードリー・ヘップバーンよりもよほど自分の欲望に正直になれた、因習や女らしい慎みのタブーに縛られず、女の武器をためらいなく使える、「貞操? 何ですかそれ? 愛すればこそ、愛を全身で表現するのよ」とばかりに性に開放的な女性だったって設定なのでしょう。嫌悪感を持つ相手には決して肌を許さないので、蓮っ葉、ふしだらとまでは言いませんけどね。

 あんまりこんなことばっかり書いていると、ロクなトラックバックが来ないので。

 確かにハリウッドで長年苦労しただけあって、観客にとても解りやすく人物を紹介してくれるし、敵味方の関係を二転三転させてスリルを盛り上げる手法は見事。話運びのテンポが実にいい。銃撃戦もある、待ち伏せもある、カーチェイスもある、危機一髪の逃避行もある。2時間24分を飽きさせません。

 ただ事前にパンフ(黒い封筒形式の箱に、綴じていないバラのページが入っています)の人物相関図で、誰がオランダ人で誰がドイツ人かぐらいは、確認しておいた方がいいかも。下劣でスケベな悪役将校、フランケン以外のリーアム・ニーソンorレイフ・ファインズ系ハンサムさんが、みな何となく似て見えてしまうんですよ。最初に登場する若者がとってもハンサム♪なんだけどなあ…。すぐに出番なくなるんだよねえ。レジスタンスの男たちもいい味出してるんだけどねえ…。彼らの描写がちょっと足りない気が。特にハンス・アッカーマンス(トム・ホフマン)の思想、主義、屈折の理由などを、あらかじめもう少し知らせてほしかったなあ…。前歴ではなく、どういう生い立ちの人間なのか、さっぱり解らない。

 それに「シンドラーのリスト」のような叙情性には欠ける。深みがない。ポール・バーホーベンだから。
ポール・バーホーベン監督

 確かNHKの「映像の世紀」の白黒記録映画映像で看たと思う、「対独協力者」の女性たちが街頭に立たされ、髪をバリカンで刈られ屈辱を受けるシーンも再現されているのだけど、最も「対独協力者」だと周囲に思われたはずの二人の女性が告発を免れているので、いまいち深刻さが伝わってこない。ポール・バーホーベンだから。
ポール・バーホーベン監督

 収容所でヒロインが謗られ、あざけられ、上半身の服を脱ぐよう強要されさらに…っていうシーンも、ああこりゃ絶対に正義の味方の助けが来るよねと、観客に安心感を与えてしまうので「愛の嵐」のような頽廃と官能と倒錯の世界には突入しません(しても困る)。健全なスケベで終わります。ポール・バーホーベンだから。
収容所でのエリス

 数奇な運命をたどり過ぎ、最後は銃殺刑に斃れるある人物も、あっけなさ過ぎて拍子抜けしました。ヒロインなら絶対に救いの手が差し伸べられるのになあ。ポール・バーホーベンだから、男に愛がないのか!(愛があってもそれはそれで困る)。
ポール・バーホーベン監督

 「なぜこんなことを?」「金さ!」というやり取りには、拍子抜け…。
 金儲けだけでなく、悪事には人を出し抜き騙しおおせるスリルや、歪んだ支配欲を満たせる愉快さ爽快さ、被害者への軽蔑などもあい混ざっているはずなんですがねえ…?

 そして、あの決着の付け方。

この非常時に愛など…「墨攻」

 公開2日目の日曜夜なのに、「日立世界ふしぎ発見!」で取り上げてくれた翌日なのに「墨攻」観客は20人足らず…。
 神戸の観客~~。「どろろ」見るよりこっち見ようよーー!
「墨攻」中国版DVDジャケット

 嘆きつつも、面白く興味深く見ましたですよ。
 告白いたしますと、nancixはかつて「ビッグコミック」よりも「ビッグコミックスピリッツ」派でありまして、ビッグコミックでの「墨攻」連載時は「画力のあるヒトだなあ、描き分け上手いなあ」と感心しながら立ち読みしてたんですが(買えよ)、何しろ週刊だとなかなか話が進まない。
 しかも泥臭いかクセのある人物ばかりで、ちっとも爽やかな王子様だとか、すらりとした美青年だとか、美少年小姓だとかが活躍しない。
 主人公が澄んだ眼をした"ヒゲのおっさん"で、見た目はちっとも強そうじゃないのに超人的な跳躍や五感をフルに駆使して智略で活躍するのがミソ、と解ってはいたんですが、やはりオンナとしては美形に弱く。
 単行本で一気に読もう、よもうと思いながら月日がいたずらに流れてしまったことでした。

 かつて「北朝鮮で大軍勢のモブシーンを撮影する、北朝鮮軍部も全面的協力を約束してくれたよ」と嬉しげにジェイコブ・"ラヴリー"・チョン張之亮監督が語っていたのも、おそらくはこの「墨攻」のことだったんでしょうね。
 「北朝鮮だけは関わるのやめとけーー! 拉致軟禁されて将軍様の偉大さを称えるアクション映画を作らされたらどーするんだ! 朝鮮戦争での将軍様の尊父の大活躍を描く映画を作らされたら! 奥さんと娘さんと双子の息子さんがどれだけ心配するかーー!」と叫んだものでした…。

 結局、北朝鮮の代わり(というわけじゃないけど)に、ブイブイ言わせている韓国企業が出資してくれて、アン・ソンギ安聖基とアンディ夢の競演が実現して、この上もなくうれしいよん。
 若者向け韓国映画「デュエリスト」では、あまりにコミカルな演技をさせられていて(おいたわしや…アン・ソンギともあろう名優が…)と内心ハラハラと涙をこぼしたものですが、今回は渋い!
 いつかはアン・ソンギと緒形拳とチョウ・ユンファが異なる立場に立ちながら、熱い男の友情の絆を結ぶアジア合作映画を創ってほしいよ…と密かに願っているのですが、どーでしょうか井関惺(さとる)プロデューサー!

 妄想はこのへんにしておいて、映画の話。
 荒れた大地で、振り向く寂しそうな幼女に「隠れているのよ、絶対に出ちゃダメ…」と別の少女の声が響く、ちょっと謎めいた冒頭から、すでに「どろろ」とは異なり”映画だぁー!”と引き込まれます。
 
 革離って、北京語ではクーリーって発音するんですね。
 頭の中で勝手に「苦力」って誤変換するので、困りました。
 粗末な麻衣、粗末な靴(ブーツ?)に厩舎の藁くっつけたまま宮廷で梁国王に謁見する姿は、まさに「苦力」でしたけどね。

 その革離は、軍師として諸国に頼られている墨家の一員であり、なぜか墨家のグループではなく単身で、大国・趙の軍勢に蹂躙される危機を迎えた小国・梁の城にやって来る。

 趙といえば、「HERO 英雄」の残剣さまと飛雪の出身国であり、まもなく秦帝国に滅ぼされる運命にあるあの国でありますよ。映画「墨攻」ではまだ大国として権勢を誇っていて、燕国への侵攻を目論んで10万人の大軍勢を送り出したわけですが。
 燕国と趙国との境にあるのが、小国・梁なんですね。

 「HERO 英雄」中国語原作本では、軍師として趙国王に秦に立ち向かう軍略を説いた青年残剣さまに、ヘタレ趙国王が従わず、城を出た残剣さまが血の涙を流して咆哮し、一刺客となる経緯が描かれていましたっけ。
 一刺客となった残剣さまが、実の両親及び趙国民の復讐を目指す無名に、そして無名を通じて間接的に秦王に説いた「天下(を思え)」というのも、墨家が説いたという「非攻」「兼愛」の精神に近かったのでしょうか…?
 いやしかし、「大国の強大な統率者が天下統一してこそ戦乱の世を終わらせることができ、民の心を安らかにできる」という考えは、墨家の「非攻」の正反対の考えなのか。超人的な力を身につけた残剣さまには、凡人を統率したり弾圧したり政治的術策を謀ったりなんて面倒なこと、できないもんなあ。

 浦川とめさんも書いているパンフレットを読んで、いろいろ考えさせられました。

 後の趙国王がヘタレなら、「墨攻」の梁国王(ワン・チーウェン王志文)も祖国存亡の危機だというのに美姫をはべらせて酒宴にふけるばかりのヘタレ。確か、老獪な重臣の司徒(ウー・マ午馬)の勧めでだったか、あっさりと趙に「降伏する」と伝える親書を送ったと思う。なんせ10万人の大軍勢に対し、梁国は全住民足しても4千人…。
 梁適王子と牛子張将軍(チン・シウホウ銭小豪)だけが、危機感を露わにします。国王直属近衛兵の騎馬隊を率いるオスカル…じゃなくて女戦士の逸悦(ファン・ビンビン)もです。
 …って、おおっ! さすがはラヴリー・ジェイコブ。ちゃんと香港から昔なじみのチン・シウホウ銭小豪を起用しているではないですか。
 銭小豪、銭嘉楽(チン・カーロッ)兄弟といえば、幼時から武術を学び、80年代から90年代にかけて主演級のアクションスター兼アクション指導者としてならした兄弟。兄の方がすっきりと整った容貌で、女性にモテモテでスピード感溢れるアクションやカースタントを魅せてくれていましたよ。「セブンスカース・七番目の呪い/原振侠與衛斯理」(86)ではチョウ・ユンファ演じるウェスリー衛斯理の助手・原振侠の役とはいえ、実質的には主役として大活躍でした。懐かしいなあ。ジェイコブ・チョン監督とは監督の作品「玩命雙雄/Goodbye Hero」(90)で、身体障害者になってしまった元スタントマン役を演じて以来の縁なのかなあ。イー・トンシン爾冬陞監督とは縁が深いようだけど、アンディとは共演したことあっただろーか?

 そして名バイプレイヤーとして、台湾と香港で活躍したウー・マ午馬さん。「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」シリーズで人気を呼んだら、さっそく台湾でモドキ映画を製作し出演してたっけ。監督・映画製作者としてもベテランです。最近あまり見かけなかっただけに、何もかも、懐かしい…。

 梁適王子に侮られ「墨家に送ったはずのナントカ玉を持っていない」と疑われ、厩舎にしか泊めてもらえない革離。平気のへいざで飼い葉桶に藁を詰め込み、寝台にしてさっさと寝てしまいます。……ん? 飼い葉桶? まさか救世主イエス・キリストになっちまうのでは…?
 なりませんでした。しかし趙国の先遣隊を率いる高賀用隊長(将軍?)の出鼻を、逆光で放った1本の矢でくじき、弓隊の一兵卒・子団(ニッキー・ウー…っていうかウー・チーロン呉奇隆)の信望を得て、国王に要望してついには戦略に関する全権を得ることができました。
 ……さすがは元アイドルトリオ・小虎隊のニッキー。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのレゴラス王子ばりの気品と凛々しさで、戦場に咲いた一輪の花と化します。
 …花と思ったのはnancixだけか?

 革離は巧みな演説で国民の危機感を煽り、老若男女に囚人まで大動員して、食糧や物資をかき集めます。一兵卒の子団の抜擢に気を悪くし、弓の腕勝負を挑む梁適王子は、さすがに「宮廷女官 チャングムの誓い」でラスト近くにミン・ジョンホとの弓勝負を挑んだ"王様"晋城大君と同じ国の人…。いやいや。
 
 マクダラのマリアならぬ逸悦に付きまとわれ、困惑するストイックぶりは、いつものアンディ映画のノリですな。どうも逸悦の甲高い声が耳障りで、柴崎コウと声だけトレードしたかったです。

ボスは麗人がお好き「エンター・ザ・フェニックス」

 行ってきましたよー。アメリカ村・シネマート心斎橋で上映中の「エンター・ザ・フェニックス/大イ老愛美麗」(04)。今週は19時20分からの1日1回上映です。
大老愛美麗ポスター.jpg

 シネマート心斎橋といえば、かつては関西の香港映画上映のメッカのひとつ、心斎橋パラダイス・スクエアだった場所。「ブエノスアイレス」上映時にはクリストファー・ドイル&篠原弘子さんのトークショーもすぐ近所で開かれ、連日満員でした。同じくトニー・レオン主演作「月夜の願い~新難兄難弟」は満員とは行かなかったけど…通いつめたものです。
 それが、つい近所にあった「シネシティ心斎橋」がなくなり、パラダイス・スクエアもいったん閉館になり、あああ、関西での香港映画ブームもこんなふうに終わりかぁ…と寂しく思った時期もありました。
 いったんはシネマート心斎橋開館の報らせに「アジア映画専門館が大阪にも!」と喜んだものの、ラインナップは韓流中心…けっったくそ悪い~と思わないでもなかったのですが、いやいやそれがなかなかどうして。

 ロビーに入ると、BGMは「インファナル・アフェア3」のサントラ
 整理券を受け取って上映館内に入ると、BGMは「花様年華」?のサントラ
 パンフを買おうと外に出ると「インファナル・アフェア」ワールド。
 また席に戻ると、甘いナット・キング・コールの歌声。♪キサース キサース キサース…

 うわーうわーっ、これでトニー・レオン主演作を見られなきゃ、嘘やぁぁ!と内心泣きもだえたものですがね。
 あああ、せめてここで「地下鉄」を見たかった……_| ̄|○
 
 もしもここで「地下鉄」が上映されるなら、劇場側に掛け合って、イ・ビョンホンファンからのお花のある辺りに、あーーんなディスプレイやこーんなポスターを飾って、壁面にあーーんなCDディスクプリントのトニーやトニーたトニーやチャン・チェン張震やミリアム・ヨン楊千[女華]を飾って…。
 無料配布の案内ペーパーだって、こちとらで製作・印刷して配ってもらう勢いなのに…

 無情のDVDストレート…。

 ロビーの前売り券コーナーには、浅田次郎原作「地下鉄(メトロ)に乗って」の前売り券も売っているから、また哀しいのだった…。

 気を取り直して、映画鑑賞突入!

 「大イ老愛美麗」という中国語題は、「英雄愛美麗(英雄、色を好む)」という常套句のもじりではないか、という広東語の先生の指摘なり。だから邦題は、訳も解らず英語題そのままにするのではなく(フェニックスなんて出て来ないし!)、「ボスは麗人がお好き」とでもしてほしかったところです。麗人といっても、まあその…なんだけど。

 製作は、貴金属店から発展して不動産投資やホテル経営(北朝鮮でも)でブイブイ言わせ、ニコラス・チェー謝霆鋒やTwinsなど若手芸能人を多く抱える"香港のバーニング・プロ"とも言いたい芸能プロダクションでもあり、勢いをかって映画制作にも乗り出したアルバート・ヨン楊受成主席率いる英皇娯楽集団有限公司とジャッキー・チェン成龍が手を結んで作った、成龍英皇影業公司である。
 ちなみにnancixは、香港では絶対に英皇系のホテルには泊まらない主義である。…しょせんは無駄なあがきというものだが。

 日本語字幕は、水田菜穂小姐。生き生きとした現代日本語で、ヤッチマエーだったか、思い切ったカナ表記が新鮮だったりした。独特の韻を踏むようなチャップマンのセリフ回しと、受けて立つロー・カーインの父子会話にはさぞかし手を焼いたことと思う。今後も英語字幕と英語脚本からしか訳せない連中に負けず、広東語から訳す字幕をよろしく願いますです。

……あらら、大筋はトニー・レオンが「ブエノスアイレス」撮影後、気分転換に?出演したコメディ映画「[最佳拍[木當]之酔街拍[木當]」(未公開)に、何だか似ているわ。あれもアクション男優兼アクション監督のチン・カーロッ銭嘉樂にとっては、初監督作品だった。同じく初監督をこなすスティーブン・フォン馮徳倫に、アルバート・ヨン楊受成主席が「ウチの連中を上手く使って、ああいう娯楽映画を手堅く作れや」と命じたのかしらん? それとも、スティーブンが「オレならもっとうまくスタイリッシュに作ってみせるぜ!」と発奮した?
 マフィアのボスが亡くなり、跡継ぎにマフィア組織とは関係ないカタギの息子を据えることになって起こる、大騒動…というプロットは、若き日のチョウ・ユンファ周潤發も「黒社会/我在黒社会的日子」で演じたっけ。ブルブル震えてみせるユンファの演技が、何だかオーバーアクションでトホホ…だったんだけど。

 そういえば、スティーブン・フォンの大好きな映画の一つが「男たちの挽歌」で、30数回は見たという。特にユンファが演じた「マーク」にぞっこんなのだそうだ。少年時代には爪楊枝の代わりにをくわえて、サングラスをかけて、パパのコートを着てマークになり切ってみたりしたというから、まったくもって、同志だー!と握手したくなる。道理で、黒サングラスに爪楊枝くわえて、偽ドル紙幣に火をつけるあの名シーンを、イーソンにそっくり再現させたわけかぁ!(腹を抱えて笑えたのは、映画館内でもnancixだけかも…)

 赤義堂の龍頭(ボス)のホン・ヤッ洪一(ユン・ピョウ元彪)は25年前、ライ・ファイ雷輝が率いる対立組織の幹部・鄭が自分の部下の手で殺されたことで一触即発の事態に陥ったのを、ボス同士の手打ちで何とか事を収めるのに成功した。だが「事故」とされた幹部の妻子は、その恨みを忘れることはできなかった。
 25年後、老いた洪一は55歳ながらスキンヘッドの忠実な部下・パッイエー八爺(ロー・カーウィン)にある遺言を遺して息を引き取る。八爺とその一人息子、忠堅(チャップマン・トー)は、後継者としてボスの知られざる一粒種を据えることを決意。だがそのカタギの26歳の息子は何と、ゲイだというのだった。
 「女(娼婦?)を探すならモンコク旺角、男を捜すならタイだー!」とタイに飛んだ父と子。目指す相手・ジョージこと洪志傑は大学卒業後、放浪生活を経て今ではタイの高級レストランで、英語も堪能なオーナーシェフとして実直に働いていた。しかし八爺父子と先に会ったのは、ジョージのルームメイトのサム(イーソン・チャン陳奕迅)。カナダのチャイナタウンで孤児になり、香港映画にどっぷりはまってマフィアのボスに憧れてきたサムは、ジョージを言いくるめて自分が「ジョージ」だと名乗り、本物のジョージを「サム」として、香港に乗り込むことになる。
 憧れのマフィアのボス生活を満喫する偽ジョージ。しかし洪一の葬儀で、彼に恨みのこもった視線を向ける若者がいた。対立組織でナンバー2となった、かつての幹部の息子・ティン・チャウ鄭秋(スティーブン・フォン馮徳倫)だ。偽ジョージは、対立組織のボス雷輝の娘で、大卒で父の援助無しに生命保険外交員として実績を上げようと奮闘する25歳のジュリー(カレン・モク莫文蔚)に心惹かれる。ところがジュリーは、ハンサムで腕も立つ偽サムに一目ぼれ。何とか彼の気を惹こうとする。ついに「自分はゲイで、女性には関心が持てない」と打ち明ける偽サム。
 本物のジョージとして、彼は父の非情さを恨んでいた。母の死後、男らしく振る舞えと叱りつけ、大事なラガティー・アン(人形)も取り上げ、感傷を許さなかった父。まだ幼い彼を海外留学させ、会おうとはしなかった父に、見捨てられたような屈託を抱えていたのだ。お気楽なサムと違い、彼はタイにいる白人の恋人フランキーが「別れる」とメールで告げて来たことにあせってもいた。
 一方、娘をジョージと結婚させて組織同士の結束を固めようとする父。鄭秋とその手下たちは、何とか結婚を阻止し、ジョージを亡き者にしようと謀る。ついに彼らはボスに刃向かい、ジュリーと偽ジョージを拉致監禁してしまった。
 本物のジョージは、父の書斎から見つかったラガティー・アンの足に、幼い自分が書いた父への嘆願状と、そこに父が書きのこしたメッセージを見つけた。そして父の真意をから知らされた。女々しく心優しい息子を、父は何とか極道の世界から切り離してやろうと、幼い彼を海外留学させ、一度も会わずにいたのだ。その父の遺言とは…。

 ジョージはついに決意する。自分の正体を打ち明け、サムとジュリーを鄭秋から救い出そう! しかし、本物のボスがゲイだったと知った手下たちは、軽蔑のまなざしを向けて従おうとはしない。付き従うのは父子とマッサージ師のオカマちゃんだけか? しかしそのとき……。

 俳優としてのイーソン・チャン陳奕迅はnancixにとって「器用で、ドラマでもコメディでも個性を出せて、地味ながらイイ味出してる小品佳作に出ている」イメージが強い。典型的な南方系中国人男性のルックスで、すご味も出せるし不敵でもあるし、でも目を細めて笑うと何ともいえない愛嬌が。ただほとんど主演作が日本で紹介されないうちに、どんどん太っちゃって(泣)。今回は、オールバックで不敵に笑うとひところのアレックス・マン萬梓良にあまりに似ているのでびっくりした。
アレックス・マンにそっくり陳奕迅
 結婚もして私生活は落ち着いている様子だけど、どうかプライベートはアレックスを見習わないで、カメラの前でだけどんどん弾けてほしい。もう何年かしたら、マフィア幹部役としてもアレックス・マンやサイモン・ヤム任達華並みのいい味出すんじゃないかなあ。中年になっても活躍できる人材だと思う。
 彼が黒社会系映画ポスターを自室の壁にべたべた張り付けているのは、トニー&ジャッキー・チュン張學友主演の「亞飛與亞基~錯在黒社会的日子」(92、未公開)を連想させたけど、イーソンってば主役の顔を自分の写真に挿げ替えてるんだもんなあ…手が込みすぎ(^_^;) イーキンがイーソンになってるよう!

 男も女も惚れこむ美形、ひこそことダニエル・ンー呉彦祖。
ダニエル&イーソン
 香港映画デビュー作「美少年の恋」の因縁が、彼には終生付いて回るのであろうか。「僕が同性愛者役をするのは、多分三回目だよ」と、香港版公式サイトのメイキングで苦笑してたけど、スティーブン・フォン監督は「もしも僕がニコラス・チェー謝霆鋒に、ゲイの役を依頼したら、誰もが(ニコラスがゲイ? ありえねえ!)って思うんだよ。ダニエルなら(ああ、ありえるかも)って思うからね」と、誉め言葉かどうかわからないコメントをしているそうだぞ。とはいえトニー・レオンが「ゴージャス」で演じたアルバートさんほど物腰がなよっぽくはなく、あくまで繊細な男として、男を愛している役なのだ。一度だけ、イーソンのファッションコーディネートを考えるのに顔に手を添えて思案するときだけ、アルバートさんが乗り移ってたけどね。
 今回はイーソンやチャップマンに哄笑ギャグを任せ、できるだけ生真面目に佇んでいるのだが、それがまた何とも言えずよき対比となっている。何より、父への屈託と和解のドラマを演じられるのは、ダニエルならでは、かも。ただユン・ピョウとは全然似てないんですが…アンディ・ラウが白髪で出てくれたら、説得力あったのに(^_^;)
 「色男 知恵と力はなかりけり」ではなく、一時はジャッキー・チェンのマネージャー、ウィリーさんがアクション男優として売り出そうともくろんだくらい、ダニエルはキレのいいアクションができる男優としても知られていて、今回もなかなか、カッコよく魅せてくれます。

 そして、おおお、久々のロー・カーイン羅家英の登場だ!
スキンヘッドの羅家英
 肝臓ガンとの闘病は、何とかなっているのであろうか? 抗がん剤の影響でスキンヘッドになっているのだと思うんだけど…?
 ハキハキとしたメリハリある広東語の響きに、痺れます。まさかこんなに、若いチャップマン・トー杜[ミ文]澤との掛け合いがいい味出すとは思わなかった。ローパパがきっちり合わせるのか、チャップマンが絶妙の勘で合わせるのか。
 カレン・モクの父親役、チャーリー・チャン陳惠敏はまさに、「出たぁ!」って感じ。あの胸板の刺青は、ホンモノです(苦笑)。といっても刑務所の看守を務めていたこともあるというから、義侠心に生きる男なんでしょうか。武術大会チャンピオンになったこともあり。「風にバラは散った」(89)ではジョイ・ウォン王祖賢を苦しめ、トニー・レオンの太ももに刃物を突き立てる役だったんだっけ? トニー・レオン&アンディ・ラウ主演作「インファナル・デイズ~逆転人生~」(91)でも今回と大同小異の役で出てます。老いても筋肉が減らないのが素晴らしいというべきか。

 ジャッキー・チェンのオフィスに所属していると、よく日本の情報番組で紹介され重宝な案内役を務めさせられている日本人俳優、葉山豪さんも、かなり目立つ役で出演しています。長髪とヒゲが何だか暑苦しいんだけど…日本刀を振り上げるシーンもある。広東語セリフはもちろん、吹き替えじゃないよね?

起死回生を描いたキテレツ懐古映画「柔道龍虎房」

 15日は関西におけるアジア映画の封切ラッシュ日。
 何を見に行くか仕事しながら考え抜いて(こらこら)、結局時間の合う「柔道龍虎房/柔道龍虎榜」にしました。何だか広東語映画が見たくてみたくて禁断症状だし、シネマート心斎橋で「エンター・ザ・フェニックス」見てたら、「チャングムさん」byNHK総合放送に間に合わないかもしれないんだもん!

「柔道龍虎房」ポスター それにしても「柔道龍虎房」、今頃ですか?
 ハイ、東京フィルメックスには全然行く予算が取れないし、第七藝術劇場では全く時間が合わなかったので、今頃です。

 アーロン久々の主演映画♪と喜び勇んで天六ユウラク座へ。考えてみたら松坂姐さんと台湾ニューハーフと香港スキャンダル女優がもつれ合った「桃色」と同じ映画館で「柔道龍虎房」だなんて、スゴいですね…場末感漂う手描き看板も、相変わらずです。

天六ユウラク座看板
 この看板前で、自転車に乗りながら「おっちゃん、明日はちゃんと仕事に来なアカンで!」と30代にいちゃんが、熟年無精ヒゲおっちゃんに説教してました…。店長が、サボりがすっかり癖になってるパチンコ&映画依存症の下働きさんに意見する、の図でしょうか。恐ろしいまでに日本の現実と香港映画の虚が一致した、一瞬でした。

 チケット売り場では残念ながらパンフレット販売はなく、ルイス・クー古天樂とチェリー・イン應采兒のポストカードだけをタダでくれました。
 ……アーロンは? ねえ、アーロンはどこ?(T_T)

 場内では、女はnancix一人きりです。6人の中高年のお客様は、なぜか最後列に近いあたりに点々と散在。

 さて、物語はビルの立ち並ぶ香港の郊外…なぜか背の高い草がぼうぼう生えている空き地から始まります。
 グラス・ホッパー草[虫孟]の一員として飛んで跳ねて元気に歌い踊っていたアイドルの面影はどこへやら、長髪にヒゲが、濃い顔にあまりにもむさくるしさをかもし出すカルバン・チョイ蔡一智が、ジャージ姿で、前かがみのヘンな姿勢で演歌を唸り出します。…演歌じゃないや。往年の「姿三四郎」主題歌だそうですね。
 後で広東語の先生に聞いたら、確かに70年代香港で、日本テレビ版ドラマが広東語読みの「シーサムセイロン」と呼ばれて大流行したらしい。当時は柔道も流行ったらしい。1978年には「九龍柔道會Kowloon Judo Club」の前身も設立されている。後に、カルバン・チョイは劇中で握手を求めて「よろしく、僕はシーサムセイロン、君は檜垣ね」と何度も繰り返して嬉しそうに笑うのだが、それもこのドラマの影響を受けたということか。
 カルバン・チョイの傍らには、柔道着姿のオッチャン(ロウ・ホイパン盧海鵬)もちゃんといる。
 やがて二人は香港の街角で、黄色いチラシ配りを始める。道場らしき一室で、向き合って正座して黙々と飯も食う。どうやら父と息子らしい。
 道場の名札(っていうのかな? 出席したら裏返し、帰るときにまた裏返す木の札、アレです)板に残されているのは、3人分の名札だけ。
 往年の柔道ブームは遠く去り、今ではまったく、はやっていない道場らしい…。

 夜、バーラウンジ「AH」の前にバイクで乗りつける男、"革ジャントニー"。
革ジャンアーロン あーーーーろーーーーん! 思わず「お久しぶりね」と手を振りたくなる。
 トニーといえば、この場合トニー・レオンなど眼中になくて、日活アクション映画の赤木圭一郎なんでしょう!

 119kgの巨漢ドアマンとアーロンは、100ドル札を賭けて勝負。もちろんスポ根もののセオリー通り、アーロンがあっさりと巨漢を投げ飛ばして勝つ。
 アーロン扮する青年トニーは、このバーラウンジ(カラオケステージ有り)のマスター兼ギタリストのシト・ポウ司徒寶(ルイス・クー)に会いに来たのです。
 ところが司徒寶はバンド仲間の罰ゲームのせいで、すっかり泥酔状態。演奏中にぶっ倒れる有様。
 トニーは、かつて香港柔道界の「小金剛」と呼ばれた司徒寶に「勝負しよう」と言い募るが、バンド仲間のサックス奏者に遮られる。
 店の裏で、そのサックス奏者があっさりとトニーに投げられ、商売道具の腕を脱臼させられてしまう。

 同じ夜、アパートメントの上階からポイポイと荷物を投げ落とされる若い女、シウモン小夢(チェリー・イン)。
 女家主が、度重なる家賃滞納にたまりかねて強制排除の手段に出たのだ。
 荷物ごと追い出されてもいっこうにしょげず、道祖神?へのお供え物の果物をほおばり、荷物を抱えて夜道を行く小夢。
 翌日、たどりついたのは、あのバーラウンジ「AH」。店の前の張り紙を見て店に飛び込む。
 泥酔したまま、いぎたなく眠り込んでいる司徒寶に、ボーカリストとして採用してくれと頼むが、彼は聞いちゃいない。時間はすでに昼の1時半。司徒寶は飛び起き、そこにトニーも現れる。寝ぼけまなこのまま、司徒寶は仲間のサックス奏者に電話するが、脱臼したので店に行けないと言われて困り果てる。食い下がる女やトニーにブツブツ、ブツブツと「ヒマあるか? あるんだな? 手を貸してくれ、頼む」と呟き、共に店を飛び出し、ホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
 あああ、ミニバスだミニバスだ、香港だぁぁぁ。

 3人は昼日中も薄暗いゲームセンターに突入。そうなんだよな、10年ぐらい前に香港・旺角や台湾で覗き見た"ゲームセンター"は、日本ではありえない~と背筋が寒くなるほど真っ暗で、アーケードゲーム機の画面だけがまばゆく輝いていたのだ。
 そのゲームセンターにはガンダムゲームだの、マージャンの上海だのがあって、ちょっと笑っちゃったりなんかする。そのゲームセンターで、司徒寶が狙ったのがマン親分(ジョニー・トー一派の一員、エディ・チョン・シウファイ張兆輝)と呼ばれる、柄シャツの胸元に金札ペンダントなんかかけた、見るからに893のオッチャン。ブツブツ、ブツブツと独り言を言ってるのが、奇妙キテレツ。後で強引にエアホッケーゲームの相手をさせていた小学生を毒舌で泣かせちゃうし、ショバで借金取りをしている地回りなのか、待ち合わせに遅刻してきた若い連中の胸を、平然と刃物でスパッと切っちゃったりする……こええええ。弱いものイジメすんなー!

 そのマン親分の書類カバンを、シウモンとの連携プレーですり替え、回収したばかりの5万香港ドルをまんまと横奪りした司徒寶。

 そんな彼を、哀しく見つめるトニー。お仕置きだ!とでも言わんばかりに柔道技をかけるのだけど、どんなに投げられ路面に叩きつけられても、窒息させられかけても、札束を手放さない司徒寶なのだ。
ルイスを締め上げるアーロン
 (ホントはやればできる子なのに…どうしたらやる気を出せるの?)と嘆く、教育ママになりたくなる…。
 司徒寶は小夢を引き連れ、賭場に向かう。そして2万ドルをあっさりとすってしまい、小夢の取り分まで「出せ、よこせ」と強要する。さらに「今夜は金が要るんだ」と、倉庫からストックのシーバスリーガルの箱を持ち出し、横流ししてしまう。…そりゃ横領ってもんでしょーが!

 どーーーしよーーーもない、酒びたりでアルコール依存症の、倫理観念欠如の、ろくでなし。
 どういうわけか、やたらと顔の汗をタオルで拭う癖だけが「ロンゲストナイト~暗花~」でトニー・レオンが演じた悪徳刑事と共通する。
赤タオルを手放さないルイス・クー

 その夜、それでも華やかに「AH」のステージで歌う小夢、伴奏する司徒寶とトニーの姿があった。
 都合のいいことに、トニーもサックス奏者だったのだ! それであらかじめ、司徒寶の仲間のサックス奏者をやっつけたのか…。あなどれんぞ、トニーという男!
 そしてウエイターが、4組の客が彼らを呼んでいると告げる。
 1組目は、まんまとカバンを盗られた、あのマン親分と子分たち。
 2組目は、なんとチャン・シウチョン陳小春じゃなーーい! つんつん立ったヘアスタイルが、何だかそぐわない…。
 3組目は、冒頭の柔道家、チェン・ヤッサム鄭一[王探]とその息子、阿正。
 4組目は、この店のオーナー。
 ここから4通りの話が一気に同時進行する。このややこしさが面白い。
 陳小春は小夢に用があった。小夢は彼の芸能プロダクションと契約しているのだが「3級片(エロorグロ映画ですな)に出るのはいやだ、ヌードもセミヌードもHシーンもお断り、歌手になりたい!」と出演話をつっぱねていたのだ。プロダクション側は、台湾にいる小夢の父親と違約金について話しをつけると宣告する。彼女は、台湾からの家出娘なんですかねえ。
 柔道家父子は、司徒寶に用があった。司徒寶の師匠であるチェン・ヤッサム鄭一[王探]は、道場「一心館」の再興のために、優秀な弟子だった司徒寶に戻ってほしいのだ。どうやら阿正は知能障害あるいは自閉症であり、道場の後継者になるのは到底無理なのだった。
 そしてマン親分は、もちろんカバンを返せ、5万ドルを返せ、落とし前をつけろと言いたいのだ。
 店のオーナーはといえば、酒庫からストックが消えたり、売り上げ報告がでたらめなことに気づいて、司徒寶を問い質そうと乗り込んできたのだ。

 トイレにこもり、男女兼用トイレの扉越しを利用し、共同戦線で追っ手を誤魔化そうとする司徒寶と小夢だが、ついにマン親分に連れ出されそうになる。店内ではついに乱闘、いやさ柔道で言う「乱取り」状態になり、しっちゃかめっちゃか。
 あああ、柔道って柔道って、こんな乱闘のために使っていいもんなのでしょーか……神戸市生まれで魯迅をも教えた嘉納治五郎大先生! あなたが唱えた「精力善用、自他共栄」の精神は……。
 ステージでは、阿正が「姿三四郎」の歌を、マイクの前で前かがみになってがなるし。

 そのしっちゃかめっちゃかを、一人だけ端然とイスに座ったまま観察している長身・スーツの紳士がいた。
 アコン阿岡(剛とも)(レオン・カーファイ梁家輝)である!
 
 鋭い眼で、司徒寶を見守る阿岡。だが彼はやがて席を立つ。「2年前、おまえは私との試合に来なかったな。再度の試合を望んでいたが、今のおまえでは…」と司徒寶に告げる。またトニーには「以前、道場破りに来たな。また来いよ」と告げて、ウインク。
 カーファイ、キザーーーーーーー!

 司徒寶はすっかり忘れていたようだが、マン親分もまた、かつては「柔道界の小覇王」と呼ばれた若き柔道家だったようだ。
 またまた若い衆から借金を取り立てた現場に、なんと着ぐるみ姿で乗り込んでカバンを奪おうとした司徒寶と小夢(おまえら、いいかげんに……_| ̄|○)に、「借金したいなら、いつでも貸してやるのによ」と脱力する。彼は、自分を思い出せず小細工を弄した司徒寶がじれったかっただけらしい。

 ……何だよ、柔道家ばっかりなのかよ。
 どうなってんだ、この映画世界の香港は?
 香港が世界に誇るカンフーは、一体どーなったんだぁぁ。

 司徒寶は道場破りを続けるトニーに「なぜそんなに勝負したがるんだ」と尋ねた。
 トニーは「オレは網膜色素変性症で、30代を過ぎると失明する運命なんだ。だから今のうちにやりたいことをやっておきたくてね」と軽やかに応える。
 冗談っぽい言い方だったが、その日、トニーが店の控え室で自分のロッカーを開けると、眼科医や網膜移植センターの名刺が重ねて置かれていた。
 司徒寶を見やり、ふっと微笑むトニー。実に謎めいた男だ。

 もったいぶって店内に「柔道選手権2004」のポスターを貼るトニー。
 出場選手名の中に、一心館の師匠の名前を見つけてハッとする司徒寶。
 司徒寶は小夢に頼み、一心館の師匠に、マン親分の金2万ドルを渡してもらおうとする。
 ところが、いくら待っても会合場所のレストランから小夢が出てこない。
 店内に入ると、彼女は親子と一緒にステーキ食ってたりなんかする。
 「なんで食ってるんだよ!」「だって、本人に直接話しをさせろって師匠が」と小突き合う二人。
 「おまえも食え」と、師匠は司徒寶を座らせる。
 師匠は、選手権の優勝者に与えられる賞金と栄誉で、自ら一心館を再興しようと決心したのか。
 金はここの支払いだけでいい、それより入場券をやるから、試合を見に来いと不肖の弟子・司徒寶を誘うのだ。
 それにしても、2年前、何が司徒寶に起こったのか?

 司徒寶はまた師匠から返された大金を手に、小夢の制止も聞かず賭場に乗り込む。たまりかねた小夢は、彼がもうけたばかりの札束をもぎ取り、賭場から走って逃げ出す。
 いくら言葉で言ってもギャンブル狂いが聞かないのなら、実力行使だわさ。
 しかし死に物狂いで疾走して逃げるわけでもなく、彼女は両手からこぼれたお札を拾い集め、追っ手の手が届くか届かないかのところまで戻ったりして、緊迫感ゼロ。
チェリー・インと札束
 彼女に手を出されまいと、身代わりにボコボコにされてよろめき歩く司徒寶に、わざわざ追っ手の前まで戻って靴を拾ってやったり。
 追っ手に捕まったら女の身、ただじゃすまないのにさぁ…。
 さすがにこんな真似をしちゃ、司徒寶はどの賭場にも出入り禁止を食らう。ギャンブルに依存して現実逃避できなくなったのである。
 なるほど"共依存"関係を防ぐ、こんな荒っぽい手立てもあったか。なんて感心してる場合じゃなかったが。

 おそらくすでに20代後半であろう小夢は、香港での芸能オーディションに年齢を理由にことごとく落ち、日本でのデビューを目指すと司徒寶に告げて「AH」をさっさと去る。

 「柔道選手権2004」の大看板が掲げられた、試合会場。その前に立ち尽くす、司徒寶。
 中に入れないまま、逡巡する彼の耳に、近づいてくる救急車のサイレンの音が…。
 顔色を変える、司徒寶。
 ケガ人らしき選手が担架で運び出され、意識不明のまま救急車に搬入された。
 付き添うのは……やはり、師匠の息子阿正! てことは、倒れたのは師匠!

 病院で師匠を探してよろめき歩く、司徒寶。
 病人はアンタでしょーがと思うのだが、医師も看護師も声をかけて保護しようとしない…。
 阿正が見つめ続ける、装置に表示される光点が、ついに動かなくなる…。
 生涯を柔道一筋に賭けたおししょーさま、ご臨終です…。

 司徒寶が立ち会い、保護者を失った阿正は障害者自立支援センターに引き取られることになった。
 一方、日本でのデビューの夢を賭けた芸能プロダクションの男?(演じるのはジョニー・トー専属スチールカメラマンの日本人、岡崎裕武氏だとか)に見放された小夢。
 自立支援保護センターを脱走し、街角でチラシを配ろうとする阿正を、司徒寶はセンター職員らと共に追いかける。
 道場で、昔どおりの生活を続けようとする阿正だが、もはや父親はいない。
 結局また、センターに戻るしかない阿正なのだ。
 失意の司徒寶も小夢も、またもやホンハム紅[碪カ]と土瓜灣を結ぶミニバスに乗り込む。
 前後の座席に座る二人。前の司徒寶に気づき、緊張の糸が切れたのか、背もたれに顔を押し付け、泣きじゃくる小夢。
 彼女に気づいているのかいないのか、顔を上げてのけぞるように目を閉じる司徒寶。ここがポストカードのシーンだったのか。

 ……恋というのじゃ、ないけれど……。

 再び、3人の奇妙な共同体生活が始まろうとする。
 ステージに向かうとき「目は大丈夫か?」とトニーにそっと聞く司徒寶。トニーは「ああ、ありゃ方便だよ。病気だって言えば、皆拒否できないからな」と軽く答え、司徒寶は激怒して飛びかかる。
 あああ、また乱闘です…。
 やっぱりトニーに負け、店を飛び出す司徒寶。

 トボトボ歩きのルイスが、可愛い…。
 そのやるせなさそうなトボトボ歩きが、やがてシャドーボクシングならぬシャドー投げの体勢へ変わっていく。
 ふと目に入るのは、一心館の入り口。
 師匠亡き後、放置されている道場のマット上を、うれしそうに転がり回る司徒寶。
 なぜか阿正も自立支援センターを脱走して飛び込んでくる。まるで師範代を務めるかのごとく、阿正と共同生活を始める司徒寶。

 やがてバーで、道場で、トニーとも勝負する。
 すっげーーー嬉しそうにニコニコしながら、男二人でくんずほぐれつ練習されては(汗)。
 司徒寶は、マン親分とも店のオーナーとも、柔道の勝負で落とし前をつけてしまう。
 やっぱり皆、組み合いながら嬉しそうに声が弾んでたりする。
 何だ、そういうことか。
 みんな柔道狂で、司徒寶ファンで、オーナーは将来を嘱望された司徒寶の堕落を心配してマスターに据えてやり、マン親分も彼と再び立ち合いたくて、ちょっかい出していたってことか(違)。

 小夢も、一つの落とし前をつけようとしていた。
 高級レストランで、彼女と食事する、パリッとスーツを着込んだ清水章吾
 いや違う、チワワ共演CMのあのオジサンじゃなくて、何と初老のその紳士を演じているのは、「悲情城市」文清のお兄ちゃんことジャック・カオ・ジェ高捷! いやー見違えました…清水章吾にしか見えなかったよ。
 その高捷こそ、小夢の父親だったのだ。
 彼女は台南から台北へ、台北から香港へ、香港から日本へと、歌手を夢見て夢中で飛び出してきたらしい。何という、行き当たりばったり人生。
 父親はそんな無軌道娘を心配し、一度は家に戻れと説得しに、台南から香港に出て来たのだろう。

 父との会食から「AH」の近くまで戻った小夢は、赤い風船が木に引っかかって、どこにも行けないでいるのを見上げる。
 何とか風船を取ろうとする彼女に、司徒寶も、トニーも、肩車で応援する。
 日本の高校生トレンディードラマみたいな、3人の共同体ぶりが、微笑ましいったらない。永遠のピーターパンとウェンディ、いやむしろティンカー・ベル。
 男女の性愛ではなく、それぞれの夢を追うのに手を貸す仲間、同志愛が3人を結びつけているのだ。
 アーロンがアーロンが、そんなことさせられたらまた背が縮むぅぅぅ!と心配しないでもないけど。

 司徒寶とトニーに見送られ、父親に連れられ車に乗る寸前、小夢はやっぱり逃げ出した。
 一心に駆け抜ける彼女に、司徒寶はパンプスを拾って放ってやり(賭場から逃げ、追っ手と悶着があった時の彼女の気配りの優しいお返しですね)、嬉しそうに見送る。父親もまた、結局は声援の言葉を叫ぶ。
 この"南の女"は、決してクヨクヨ悩んだり、周囲を恨んで呪ったりしないのだ。行き当たりばったりだけど。

 すがすがしいまでに、オトコマエ。

40男が描く「母の呪い」に打ち勝てるか…女性映画「ジャスミンの花開く」

 シネリーブル梅田で「ジャスミンの花開く/茉莉花開」を見てきました。
 「ああ、アレ。ツイィーのプロモーションビデオなんだってね」と何人かに言われたけど、うーん…これでツイィーの宣伝効果があるか、女性客の共感を呼び彼女の格が上がるかというと、大いに疑問。

「上海ルージュ」の鞏俐より清楚な歌姫ツイィー
 じゃあちょっと、あんまりツイィーの資質だの女優としての好感度には触れないで、映画を観てみようかな、と天邪鬼がうごめき出す。

 むしろ、中華系女性映画ってことで、興味がありました。
 ちょっと思い出すだけでも、
 チョウ・ユンファ周潤發&コラ・ミャオ繆騫人の「傾城の恋」(84)、マギー・チャン張曼玉がブラザーコンプレックス娘からしっとりとしたオトナの女まで、ユンファがタイプの異なる2役を演じた「ストーリーローズ 恋を追いかけて」(86)、
 故・久世光彦さんが「ヒロインが向田邦子さんに似ていてハッとした」と評した、ブリジット・リン林青霞&マギー・チョン張曼玉の「レッドダスト」(90)、nancixの両親の故郷・大分県でロケが行われマギーが自転車で田園風景をかっ飛ばした「客途秋恨」(90)、
 やはりオールド上海が舞台の「赤い薔薇、白い薔薇/紅[王久]瑰白[王久]瑰」(94)、福岡アジアフォーカス映画祭で見たきりの「べにおしろい(紅粉)」(94)、ミシェール・リーやマギー・チョンの存在感で、スケールがドンと増した「宋家の三姉妹」(98)などなど。
 そういえば、未だ日本公開の話を聞かないスタンリー・クワン關錦鵬監督の「長恨歌」(05)は、どうなったんだろう。中華系女性映画研究志望者(いるのか?)は、絶対見ておくべき佳作なんだけど。

 強引に総括すると、総じて中華の女たちは日本女性よりよほど強いけど、香港映画の女たちは「オットコマエ」、中国映画の女たちは「しぶとい!」って感じがしますねえ。

 さて、今回の「ジャスミンの花開く」。
 原作はおなじみの女性作家・張愛玲ではなく、スー・トン蘇童という男性作家の「婦女生活」という小説だそうです。
オンライン現代中国作家辞典」によると、トニー・レオンより1歳下の1963年生まれ。40代。
 あらま。「べにおしろい」と、あのチャン・イーモウ張藝謀監督の「紅夢/大紅灯篭高高掛」(91)の原作者だわ。こりゃちょっと、ペーソスきつそう。「べにおしろい」は、せっかく身重の妻にせっせと料理を作ってくれる夫に、妻がガンガン文句つけるシーンに辟易したもんなあ。

 監督は、張藝謀と北京電影学院撮影科の同級生だったというホウ・ヨン侯咏。下放後に遅まきながら北京電影学院に進学した張藝謀だから、ホウ・ヨンの方がかなり年下か。と推理して調べたら、やはり1960年西安生まれの40代でした。すでに中国国内の撮影賞を何度も受賞し、北京電影学院撮影科の同期では最も手がけた作品の多い、定評ある撮影監督です。91年に映画監督デビューを果たし、今作が2作目。
姜文とホウ・ヨン監督
 40男が考え出し、40男が脚色・演出する女性映画。
 どうなんだ。お手並み拝見といきましょう。

 「長恨歌」のレビューでは
 で、お話は「時代に翻弄された、非常に男運の悪い上海美女」
 というものでした。

 おしまい。
 と書いたnancixですが、 「ジャスミンの花開く」も、
 お話は「時代に翻弄された、非常に男運の悪い上海美女3代」
 というものでした。

 おしまい。
 と書こうと思えば書ける。

 でもむしろ、今回強く印象に残ったのは、
 (どーーーして母親ってのは、娘に対して呪いをかけちゃうもんなんだろうなあ!)と嘆息したい気分でした。
 これは中国に限ったことじゃない。
 昔読んだ精神分析の本に、母性というのは豊穣の地母神デメテルのごとく、慈しみ癒しを与える包容力と、逆に子供を束縛し徹底的に支配し思いのままに制御しようとし、独立を妨げ抗うと殺してしまいかねない面の二面性があるものだ、という説(ユング心理学のグレートマザー論?)を見つけたときは、いやもう全くその通り!と拍手したくなったものです。
 母性本能、なんて簡単に言うけど、案外怖いんだよ。母性って。

 雑誌「AERA」がもう特集のネタにしてきたかもしれないけど、nancixの周囲にも、母親がかけた呪いがとけずに悩んでいる女性が、たんといる。両親の目の前で投身自殺しちゃった人も……(涙)。

 つまり、思春期を迎えた娘に"悪いムシ"がついて、"キズモノ"になっちゃーいかんと口を酸っぱくして説教し、男女交際を禁じ、
 それでも自然に好きになったボーイフレンドには何かとケチをつけ、生活環境や経済格差を言い立て、ラブ×2モードの浮き立った心に冷や水をぶっかけ、
 適齢期前と真っ最中には「そんなことではいい嫁になれない、いい妻になれない、いい母親になれない、結婚生活とは我慢の連続なのだから、今からこれしきのことを我慢できないでどうする」など呪文のような小言を並べ、
 そんなに結婚・妊娠・出産ってメンドくさくて我慢しなきゃ耐えられない、不幸なものなのか!と娘をうんざりさせるってことです。

 じゃあ、結婚しなきゃラクちんじゃん、面倒じゃなくなるじゃん、と安易に発想しのほほんと暮らしていると、「うちの娘が婚期に遅れる」とあせってあれこれ画策する。
 どーせモテないんだし、面倒だから任せてみるか、と釣り書を書いてみると、何だコレ? 「ワタシ」って、学歴と親の職業と兄弟の数でしか量ってもらえないモノなの?と愕然とする。
 「趣味・読書と映画鑑賞」って、めちゃくちゃ平凡じゃん!
 読書といっても、愛読書が男性側は「嫌韓流」と「ゴー宣言」シリーズで、女性側が「韓ドラのノヴェライズ」だったらどーするのさ?
 そのいいかげんな釣り書きで量ってあてがわれた男は、nancixの場合、ろくすっぽ異性と口が利けないような、見合いに母親と叔母さんが付き添ってくるようなヒトでした……。
 母よ、貴女はあまりにも娘を知らなすぎた。
 天国に向かって今更言っても、しょうがないけどね。

 3世代にわたる、上海美女の「茉」「莉」「花」にも、母の呪いがかけられる。

ぶりっ子ツイィーと陳冲
 第一章、祖母と紹介されるモー茉は、父を亡くして母一人、娘一人で流行らない写真館を営んでいる。
 1930年代、いよいよ日本軍が侵攻してこようかという時に、のんびり写真を撮影する余裕のある上海市民は、まずいない。
 夢見る18歳の乙女のモーはそれでも、憧れの映画スター・カオ・ジャンフェイ高占菲を見るために、映画館へ向かう。母親(ジョアン・チェン陳冲)は「映画は今日で最後にしてちょうだい、(不景気のために)使用人を解雇したから、明日からはあなたが店番よ」といいつける。
コート姿の姜文 店番第1日目、訪れたのは「カサブランカ」のハンフリー・ボガードかいっ!と突っ込みたくなるようなダンディぶりを見せる、映画会社社長の孟(チャン・ウェン姜文)だった。彼はモーを見初め、強引に映画女優として育てていく。反対する母だが、モーはすっかり舞い上がって耳をかさない。
 孟社長はモーの第一回出演作の撮影のために高級ホテルの一室を与える。ベッドの上には絹の刺繍入り寝衣と、ジャスミンの香水……ホントに中年男の気配りって(苦笑)。
 その手を何人の女優に使ってきたのぉ?と突っ込みたいところだが、モーは全く気が付かない。おそらく彼女は、不在の父親像を孟社長に求めたのだ。強く、逞しく、頼りになり、決して自分を見放さない理想の父親像。
 監督も姜文と現場でディスカッションし、孟社長がじっとモーを見つめるシーンを「父が娘を見守るような表情で」と決めたという。
 しかし当然ながら孟社長とモーは男女関係を結び、社長の愛人としてモーは華々しく誕生日パーティーを開いてもらえ、マイクの前で愛らしく「茉莉花」を歌い、さらに女優のステップを駆け上がろうと…ろうと……したその時、彼女を襲うのは悪阻なのだった……。

 嗚呼、「母の呪い」、ここに具現化。

 ま、日本でもそうですけど、堕胎するしかない…と孟社長は判断する。
 だけどモーは18歳。
 とにかく怖い。そりゃそーでしょ、まだ麻酔技術も進歩していない時代、自分の体内をかき回され、掻き出されるのに平気なティーンズがいましょうか。
 だからって……だからってホテル内に引きこもって、どうする?
 依怙地になればなるほど、幸せは逃げていくのに。
 孟社長も寄せ付けず、母にも救いを求められずにいるうちに、彼女は日本軍に占領された上海に取り残される。
 よくまあ、誰にも乱暴狼藉を働かれずに、実家に帰れたもの。
 母は身重の娘をなじるばかり。写真館の1階を葬儀屋に貸し、母は美容師のワンという愛人を得て"女"に戻っていたのだから、そりゃ娘に戻られても困るだけだ。
 そればかりか、出産を成し遂げて一児の母となった娘に、愛人の王は目を奪われてしまうではないか。
 「一人目の子供を産んだ女性こそ、最も美しい時期」と「御宿かわせみ」で平岩弓枝さんも書かれておりましたしね。
 何度香港に手紙を出しても、孟社長の返事はなく、母の嫉妬と恐れを知りながら、育児にも投げやりなモーは、王の誘惑に身を任せようとする。
 泣く娘の声にも耳をかさず。愛撫のせいか、母乳が染み出たのか、チーパオ旗袍の両胸が濡れているのが、何ともエロチックです。
 母が帰って来て逆上するのも、彼女には解っていたことだったのか?

 愛人は出て行き、どっと老け込んだ母は錯乱して「形見の金時計を取られた、指輪も取られた。あなた取り返しに行って来てよ」と悲しくモーに訴えかける。

 そして…。
 モーは取り返しのつかない悲劇が起こったことを、警官に知らされる。

 美容師・ワンの職場に乗り込み、欧米人顧客のひざに娘を載せて、ワンを平手打ちして金時計だけでも取り返すモーは、確かに強い。
 娘を抱き上げ、昂然と顔を上げて街路を行く姿も、確かに雄々しい。
 でもなあ、その強さを、別の方向に向けていれば……。
 間違った方向に、自分の芯の強さを向けてばっかりの、母と娘であります。

 第2章は、そのモーに抱かれていた、額に幸運の赤あざがある娘・リー莉の思春期から始まる。
 結局、モー(またもやジョアン・チェン)は母から受け継いだ写真館を手放さず、名称だけ変えて雇い人に営業させているらしい。
 リーは経済的には何不自由なく育つ。折りしも国内戦が終結し、共産主義国家となった新中国では「労働者こそ国の花、共産党員こそ真のエリート」ともてはやされていた時代。
 学校の花形は、労働者階級の家に生まれ育ち、バスケット部キャプテンとして活躍し、共産党員になれた青年・ジェ鄒傑だ。
 「セブン・ソード」の村の牧童、韓志邦役で初めて認識したルー・イー陸毅君、まさに体育会系ハンサム・ガイで適役だね。上海戯劇学院卒だそうで、上海語にも問題ないのか。
 いつも女生徒に取り囲まれている鄒傑のそばに、リーは半ば強引に割り込んで行き、彼の目を奪う……。
 そんな真似するから、女友達の一人もできないんじゃないの、リー…?

 初恋に有頂天になったリーに、またもや母の呪いがかけられる。めげずに自宅に彼を招くが、母はハンサムな彼を「高くん」と呼び、昔の映画俳優、高占菲に似ていると誉め言葉のつもりか口走り、額に汗して工場で働き、生産に寄与することこそ国家への崇高な義務だと信じてやまない鄒傑に「映画俳優なんて、社会の寄生虫だ!」と逆襲されてしまう。
 「寄生虫になるにも、才覚がいるのよ」とやんわり反論する母。あああ、噛み合わない…。
 気まずく出て行く傑、母と口論するリー。物心ついてからずっと母に「おまえを産んでさえいなければ、私は映画スターになれて幸せになれたはず」と愚痴られていただろう彼女は、ついに家を出ることを決意する。頼るのは、同じ鉄鋼工場で働く鄒傑しかいない。傑の姉の家に身を寄せるのは「他人の家だから気詰まりだわ」と嫌がるけど、あのう、鄒家だってまだ他人の家…、暗に正式結婚を催促するリー、やはり打算的にしか見えませんが、これは許容範囲か…?

陸毅とツイィー婚礼中
 鄒傑の実家で、隣近所の人々を招いて結婚披露をする2人。もちろん、リーの母は姿を現さない。
 新婚初夜を、実家の一室で過ごした二人。……シーツに残った血痕が、ナマナマしいです…やはり40男の演出って…。どうもロストバージンはリーにとっては辛い体験だったらしく、傑の母親はすすり泣きまで聞いてしまっている。プライバシーゼロ…。
 屋外に共同トイレしかない鄒傑家のこと、夜には寝室におまるを置く習慣も、リーには耐えられない。やがて彼女は一家の食卓で食事ができなくなり、姑の提案もすげなく断り、姑や小姑からの聞こえよがしの批判にさらされて、家族のなかで完全に孤立する。

 依怙地になればなるほど、幸せは逃げていくのに。
 「お義母さん、その紅焼肉の作り方を教えてください、私、料理の才能ないんですけど、一生懸命覚えます」と頭の一つも下げてりゃ、表面上は何とか収まりがつくのに。
 と思ってしまうのは、なあなあでナントカしようとする日本人だからでしょうか?

 実家に戻ったリー。傷心の娘を優しく包み込むどころか、さらに呪いを強化する母。それでもリーは夫を待ちわびる。雨の夜、ついに鄒傑は実家を出て来て、リーと一緒に暮らし始める。なんて優しい男なんだ!

 ところが今度は、リーは実の母と夫の関係を疑い始め、不妊症を気に病んで、幻覚まで見始める。
 夫は「二人だけで暮らしたい、引っ越したい」というリーの訴えに、最初は取り合わない。
 要するに、彼女は心のどこかで、母に完全に受け入れてもらえなかった、愛情を存分に注いでもらえなかった、いつかは母に見捨てられるという不安を抱えて、これまで生きてきたのだ。母が祖母の愛人を奪いかけた、その結果が…ということも、どこかで耳に入れてしまっていたのかもしれない。だから、やっと手に入れたはずの夫の愛情も、安心するどころかいつかは他に奪われるという恐怖にかられてしまう。
 現代ならアダルトチルドレン、境界性人格障害と診断されるだろうか。

 リーの自殺未遂にショックを受け、傑は養子をもらうことを提案する。

 だーかーらーー、そこで養女ではなく、男の子を養子にしていればあああ!
 当時の中国では、女児のほうが手放す人が多かったのかもしれないし、女は女同士のほうがと傑が安易に考えたのかもしれないが…。
 折りしも、中国は文化大革命に突入。因習、道徳観念、伝統、文化、全て古いモノを打ち壊し、新しいモノを受け入れよう、新しければ何でもよいと社会が狂奔していた時代。
 となると、夫も「女房とナントカは、新しいほうがいい」と考えるだろうとリーは脅えたのだろうか?
 老いた母ではなく、今度はまだあどけない小学生の養女、花が彼女の仮想敵となってしまう。
 妻の執念深い疑い、「党に訴えてやる!」と口走った憎しみの言葉が現実になることへの恐れ…。子供が親を、妻が夫を密告して破滅させていた時代に、リーの妄執が吐き出した言葉は、清廉潔白な党員として生きようとした夫を絶望させるのに、充分だったのか。
 傑は命を絶ち、リーも後を追ったことが暗示される。
 写真館に取り残されたのは、祖母のモーと、幼いファ花…。

 第3章は、80年代の物語。中学だか高校だかを卒業後、辺境の農場に下放されていた花と、同い年の恋人のトー小杜(やっと出て来た! リウ・イエ劉[火華]くーーーん♪)が上海に戻ってくるシーンから始まる。
 メガネっ娘の花はすでに、24歳。写真館は婚礼写真を請け負い、大いに繁盛している様子だ。さすがに義理の祖母のモーも老い込み、うつらうつらと昼寝をしていることも多くなった。
 花は小杜を自宅に招き、食事を祖母と共にさせるが、祖母はまたしても小杜を「高くん」と呼び、「花はあなたの姉代わりなんでしょ」と決め付け、彼は結婚するにはふさわしくない男だと義理の孫娘に告げる。

 ……どこまで、「母の呪い」をかけるんでしょ。

 花はすでに小杜との結婚証明書も取得していたのだが、「結婚は条件のいい男としないと、一生をムダにする」と口やかましい祖母には打ち明けられずにいる。小杜は蘭州の大学に入学し、二人は別居結婚だ。花は働きながら、夜なべでセーターを編む内職もして、小杜の学費や生活費をせっせと仕送りしているらしい。
 祖母が手配した、米国在住の男との縁談を断り、花はついに、小杜と結婚していることを祖母に打ち明ける。
 言いつけを守らなかったばかりか、ずっと隠されていたことに、ショックを受ける祖母。
 そりゃ、あの娘に育てられた養女ですもの…覚悟しておかなきゃあ。

 しかし、当の小杜は「僕は大学の専攻を間違えた、就職も思わしくない」と愚痴り、日本留学を決めてしまう。
 そりゃねえ、大学には"山口百恵に似たかわい子ちゃん"だっているでしょうよ。あなたは三浦友和の誠実さ、愛する彼女を守る包容力に欠けていますけど? 日本に行けば、ツイィーよりもっとセクシーだったり純情だったりする女の子にも会えるでしょうよ。それにしたって…。

 花は短い小杜との逢瀬で妊娠したのに、小杜は日本からの手紙で離婚を申し入れて来る。その手紙をついつい盗み読みした祖母は「だからあんな男はダメだと言ったのに!」と怒りを花にぶつけ、発作を起こして倒れてしまう。
 花にはどうしようもなく、堕胎のために産婦人科に行くが…。
 すでに「一人っ子政策」が普及しているらしい時代の産婦人科の壁には「バースコントロールをしないわけにはいかない」というスローガンが書かれています。イラスト入りポスターが張られた待合室も、30年代よりもずっと明るいムード。
 花が家に戻ると、祖母はいつもの寝台で、眠るように息を引き取っていた…。
 側には、大切にしていた唯一の映画雑誌。表紙には、若き日の祖母が微笑んでいる。その思い出の品を、寿命を悟ったのか、祖母は自ら焼いたらしい…。
 「話したいことがあったのに!」と号泣する花。

 日本の少女なら♪あなた ワタシの最後のお願い聞いてね~ 涙を拭く木綿のハンカチーフをください~と泣き寝入りするけど、上海娘はそうはいかないぞ~怖いぞ~。
 リウ・イエ君、よくまあこの役を引き受けた…。

 絶望の果てに、彼女は決めたのだ。祖母と同じく、たった一人で子供を産み、育てる覚悟をしたのだ。
 室内に可愛い赤ちゃんの写真を貼りつけ、出産講座でも受けたのかラマーズ呼吸法の練習をして、大きなおなかでベッドに横たわり、せっせと体操する花。
 けなげです。……まあ、「ツイィーたん」ファンの日本男性が喜ぶかというと、大いに疑問ですが。

 自宅前でタクシーを呼んで乗り込み、大手産婦人科病院までの時間を計ったり、準備万端。

 の、はずだったのだが……。

 まったく、40男に任せていると、クライマックスにはこういうことを持ってくるのね…?

香港電影人も協力の「玲玲の電影日記」

 雨の中、久々に大阪・梅田のOS名画座に足を伸ばしました。おお、シネコン通いを続けて足を向けないでいるうちに、いつのまにか付近は「シネマ横丁」と名づけられ、手ごろな定食屋や居酒屋が林立している。鑑賞後に一杯、が楽しめるではないか。来る道でサンドイッチ買わなくてもよかったかなあ。

「電影往事」VCDジャケット

 本日の鑑賞は中国映画「玲玲(りんりん)の電影日記(中国題名:電影童年または電影往事)」。シア・ユイ夏雨クンが主演、あの「花様年華」でも美しい、金の鈴を振るような歌声を聞かせた女性歌手のチョウ・シュアン周[王旋]がモチーフとして登場するという以外、ほとんど予備知識無しで見た。

屈託ない笑顔が魅力の夏雨クン
 あまりにも普通っぽくて屈託ない笑顔が魅力の夏雨クン。
 "中国の佐藤隆太"的存在か? 佐藤クンが"日本の夏雨"なのか?

 のっけからのけぞった。おおお、製作総指揮はもじゃもじゃ毛の怪人、香港のジョン・シャム岑建勲だよ! トニーファンは「ロボフォース/鉄甲無敵マリア/鐵甲無敵瑪莉亞」で、トニーをさしおいてツイ・ハークと組んで主役を張っていた特別研究員、というよりマッド・サイエンティストを思い出せ!

 アニタ・ムイ梅艷芳が亡くなった直後には香港でコメントを求められていたし、昨年ぐらいの香港電影金像奨授賞式で見たときは、トレードマークのもじゃもじゃ頭もさすがに薄くなり、一部はほとんど無くなってしまっていたが…。
アニタ・ムイ没後に香港でコメントしていたジョン・シャム
天安門事件の後、中国民主化活動を積極的に援助しかなり危ない橋を渡り中国政府に睨まれ、香港の"中国回帰"後の97年以降はいったいどうするんだろうと他人事ながら心配したものだが…。中国電影人らとネットワークを築き、ちゃんと商売できているんだなあ。安心、安心。

 製作には香港の俳優兼監督のイー・トンシン爾冬陞も「デレク・イー」として名を連ねている。もう一人の製作・ホアン・チェンシン黄健新は、確か香港のジェイコブ・チョン張之亮監督と親交があり、昨年の香港電影金像奨で侯孝賢監督と一緒に、「黒社会」へ作品賞を与えたプレゼンターでもあった。東京国際映画祭で何度か作品を見た記憶もある。ワンアイデアを見事に膨らまして過不足無く、ウィットに富んだ等身大の人間ドラマを作る名手だ。ふむふむ。これは観て正解だったと思う。

 物語は、北京の街角を意気揚々と自転車で走る、毛大兵(夏雨)クンの姿とナレーションで始まる。彼は一人暮らしで、ミネラルウォーターの配達というあんまり高給でもなさそうな仕事に就き、映画鑑賞が何よりの幸せという、将来のことも国家のことも深く考えていそうにないイマドキのお気楽な若者だ。そんな彼が、路地裏で積み上げてあった煉瓦にバランスを崩して接触し、煉瓦の山を倒して自分も転倒してしまう。
 倒れた彼に、一人の茶髪ショートカットの活発そうな女性が近づき、いきなり彼の頭を煉瓦で殴りつける。彼女の目には涙が浮かんでいるように見える。
 「なんで? どーして?」と問うひまもなく、毛大兵クンは昏倒。目覚めたら、医師と警官が病床の彼を覗き込んでいた。
 医師らに事情を知らされ、傷害犯のあの女が派出所で事情聴取を受けていると聞いた毛大兵は、カッとなって派出所に急ぐ。おりしも、何を聴取されても一切応えない彼女に、怒った女性警官と相棒の男性警官は席を外していた。取調べ室に一人残された彼女に食ってかかった毛大兵は、逆にメモとアパートメントの鍵を渡される。「私の金魚にえさをやって!」とメモには書いてあった。彼女は涙さえ浮かべて、懇願するのだった…。

 毛大兵は、彼女=玲玲のアパートメントに足を踏み入れる。その部屋の壁には一面、トーキー時代の中国映画の女優たちのスチールが張られ、家具らしいものは映画館の古いイス3脚、金魚の入った水槽、簡素なベッドだけ。そして8ミリだか16ミリだかの映写機がイスの前に置かれ、窓のない壁には手製の布のスクリーンが。壁際には古い名画のVCDが積まれ、まさに映画オタクの夢の一室なのだった…。
 
 毛大兵はその部屋で、映画フィルムを模したデザインの一冊のノートを見つける。それは「玲玲の電影日記」ともいうべきもので、彼女の生い立ちや当時見た映画について綴ったものだった。それを読むうち、毛大兵はハッとする。何と幼い頃の自分が、そのなかに登場するのだから……!

 というわけで、映画は、美人の誉れが高かった、辺境の炭鉱の町内放送アナウンサー=玲玲の母親・江雪華(姜易宏。時々、若い頃のチャーリー・ヨン楊采[女尼]に似てました。もっと美人顔かも。足長い!)と映画スターになることへの憧れ、その恋、予期せぬ妊娠・未婚の母となった顛末、病院の洗濯女として娘と貧しい生活を送る姿、玲玲の子供時代を長々と描く。小学生たちの学芸会的演技にちょっと飽きた頃、やっと気づいた。何とこの玲玲役の女の子、あの「PROMISE/無極」で、傾城の幼女時代を演じたクァン・シャオトン關暁[丹ミ]ちゃんじゃないのぉぉお! きゃわいーわけだ!

 無邪気な笑顔とつぶらな瞳に浮かべる大粒の涙の威力は健在で、今回も困りまくり、悩みまくり、涙しまくりでロリコン男性のハートをわしづかみしてくれます。

 いやーもうね、自分が彼女の同級生の男の子だったら、好きだからって優しくするより、背後からお下げ髪を引っ張ったり、筆箱を取ったりして泣かせたくなっちゃいます。「何するのよう、やめてよー!」と泣きそうになって抗議されたりしたら、たまりません。ホントのホントは「私、プロの子役なのよ! あんたたちとは違うのよ!」とツンケンするくらいでいてくれた方が、ロリコンの犠牲者にならずに健やかに育つと思うのですが。

 毛大兵の幼い頃、小兵役の男の子がまた、キョーレツです。黒く汚れた鼻頭から鼻水垂らしてるのはメイクでしょうが、あの空きッ歯は本物でしょう。1本歯が無いし。中国子役業界にはまだ、歯列矯正は普及していないと見た。ニヒヒと笑うその顔が、天真爛漫というより小憎たらしい軽薄さ。訳もなくフィルム缶を奪って土手に放り投げた時は、「まだモノの価値がわからないからって、やっていいことと悪いことがあるんだー!」と、映画ファンとして一瞬殺意にかられました……いやその、ほんの一瞬です。でもまあ、だから子供は産まなくて正解でした……。

 父に殴られ続け、義母に構ってもらえない彼に同情した玲玲の母親は、小兵を引き取ってしばらく3人で暮らします。未婚の母なのに、生活費どうしたんだろ…。玲玲と小兵は鉄道破壊工作隊ゲリラを描いた映画の真似で鉄道沿いで遊び、野外映画館を建物屋上から眺めて楽しい時を過ごします。しかし、小兵はついに父親に連れ戻され、祖父の家に行かされるのでした。
 やがて母は、いつも親切だった野外映画館担当の映写技師パンさんこと潘大任と正式結婚。二人の間には待望の男の子も生まれます(産児制限・一人っ子政策は??)。しかし小兵の悲劇を知っている玲玲は、母の結婚と弟・兵兵の誕生を喜べず、家族のなかで疎外感を味わうのです。

それもまた"家族"についての物語。「ブロークバック・マウンテン」

前売り券 珍しく、アジア映画以外で初日に、しかも前売り券購入で駆けつけてしまった。
 アン・リー李安監督の「斷背山」、じゃなくて「ブロークバック・マウンテン」です。
 シネリーブル神戸の午後3時40分の回は、ほぼ満席でした。
 早めに前売り券を引き換えに行ったのに、整理券番号70番だったもんなあ。
 幸い、先に入った皆さんが後ろの方の席を選んだので、前から3列目の真ん中あたりで人の頭を気にせず見られました。
 ほとんどが女性客でしたが、ちらほらと男性の姿も。
 のっぽで痩せ型の、白人男性もバックパック片手に、一人で見に来ていました。
 観光客かなあ?

 しみじみと、よい映画だと思いました。
 アン・リー作品らしく、何よりも"家族"を描き、"家族"を巡って物語る、佳作でした。

 "家族"になりたくても、20年かけてもなれなかった2人。
 どうしようもなく無口で内向的で、とはいえ人一倍激しい思いをひた隠しに隠している、牧童としてしか生きられない不器用な、イニス。
 本来は陽気で奔放で生命力に溢れている単純バカ…率直なロデオ糟ボーイで、少々下まつ毛が長くて顔も長くて(ニコラス・ケイジ系)優男とはいえハンサムで人に嫌われる謂れはないのに「俺は○○に嫌われているんだ」とつぶやくしかない、ジャック。

 マッチョであろう、逞しく強い家父長であろうと努め、子どもたちも雄々しくあれと育て、結果的に息子たちに精神的外傷(トラウマ)を与えただけの、父2人。その影が、物語全体に投げかけられています。

 せっかく"家族"になれたのに、夫の秘密の生活のせいで、心の平安が得られず満たされず、空しく老いて変貌していく、妻2人。
 父の無条件の受け入れ=愛を求めているのに、言を左右にして芯のところでやんわりと拒絶される娘の、淋しさ。

 ほんとに、単なる、同性愛者のすったもんだ、を描いているだけじゃないんです。
 それだけは、解って欲しい。

 女房子どもとの日常的なぐだぐだに疲れ、心を打ち明けられる釣り友達や飲み友達やゲーム仲間、2ちゃんねるナカーマ?と共に現実逃避したいと願う亭主族なら、主人公の行動だって、ある程度は理解できるはずです。
 子どもの夜泣きに腹を立て、妻に八つ当たりした経験のある夫なら、
 共働きで、休日出勤を命じられ、宝物のはずの子どもたちを押し付けあった夫婦なら、
 この映画には身につまされるというものです。
 舅の横暴に頭が上がらない婿養子なら、あるいは裕福な家庭に育った妻をめとった男なら、まだリモコンがついていなかった時代のテレビの、食事中に損聴すべきかどうかのいさかいのけりのつけ方に、心密かに喝采を送るはずです。
 
シッピング・ニュース そういった、日常のディテールを描かせたら、アン・リーは天下一品。
 安心して、映画の時の流れに134分の間、身を任せることができました。
 原作者のアニー・プルーは、おお、なんと「シッピング・ニュース」(01)の原作者でもあったか。(映画版は見てないのだけど)
 面白いというレベルの小説ではなかったけれど、細部まで呆れるほど事細かにきっちり描きつつ、決して美男美女ではない人物像を、その思いを、関係性を生き生きと描き出していく筆致には、感心させられたなあ。
 「ブロークバック・マウンテン」のノヴェライズも、買って帰りましたよ。

 映画版の始まりは、よくあるロード・ムービーのように、幾遜にも連なる山の稜線と道路と、明け方の光のなかをひた走るトラックのヘッドライトから。
 やがて画面に現れる、ブルージーンズがまぶしい2人の青年は、なかなか口を利こうとしません。
 観客は、どっちがイニスでどっちがジャックか、すら解らない。
 こんな寡黙な主人公、ヴィム・ヴェンダース映画でもない限り、ありえない…。ハリウッド映画にあるまじき、寡黙さなのです。
 もどかしいほどの時間を経て、やっと牧場労働者の手配師のアギーレが事務所(トレーラーハウスみたいな)の鍵を開け、「仕事が欲しかったらさっさと入れ」とぶっきら棒に言い放つ。
 どうでもいいけど、アギーレという名前が登場するたび(アギーレ・神の怒り)と呟きたくなる、半可通のnancixなのであった。

 いや実際、彼の煮えたぎる怒りによって、その後イニスとジャックは4年もの音信不通に、耐えねばならなくなるのだけど。
 何気ないふりして別れた後、咳き込むどころか嘔吐まで誘うほど嗚咽する、イニスの姿が切ないです。
 同性愛への罪悪感から嘔吐するんじゃないです。別離の悲しみのあまり呼吸すらままならなくなって、吐きそうになるんです。
 経験者は、語る。(嗚咽から嘔吐に至る経験者、という意味)


 時々(どうせ結婚しても、子どもができて数年したらセクスレスになるのなら、老後を共に過ごすライフ・パートナーは異性ではなく同性の方が気楽じゃないかなあ。それなら濡れ落ち葉と化すかもしれない亭主は、邪魔)と思ったりして来たnancixには、イニスとジャックがお互いを必要とする気持ち、解らないでもない。
 まして、彼らの絆には、人間社会のしがらみから逃れられる、大自然の中で自由を謳歌することの魅力が、分かち難く結びついている。
 以前、確か都会生活に疲れきった3人の中年男が、カウボーイの真似事に挑むことで、自分らしさを取り戻していくという映画があった気がする。
 もしも、イニスとジャックの間に性愛が介在しなければ、同じように、キャンプ好き&現実逃避の仲間、というだけで済んだんだけど。

 常々、同性との間の友情や共感が、いったいどこの時点で何をきっかけに堰を切って性愛に変わってしまうのだ?と首をひねっていたノンケのnancixには、ジャックの誘惑と、イニスの衝動が、少なからずショックであり、目からウロコが落ちる思いでした。
 帰り道であっという間に読めたノヴェライズ(活字がやたら大きいぞ)では、凍えるテント内で、ジャックがイニスの手をつかんで自分の股間に誘った時に、イニスは「なめるんじゃねえぞと思った」、とありました。
 それで、何となく「ブエノスアイレス」で、冒頭のファイ(トニー)が、憤懣を感じているとしか思えない表情をウィン(レスリー)に対して垣間見せた理由が、少し解ったような気がした。
 (てめえに好き勝手に主導権を握られてたまるか、俺だってヤるときゃヤるんだー!)って、感じ?

 男って、男って……。
 同性愛だろうと異性愛だろうと、そんなに肩肘張って、突っ張って生きなきゃいけないものなの?

 それにしても、イニスってば、そんなに激しく、前歯を折る勢いで頭突きみたいに噛み付くように接吻しなくったって……(泣き笑い)。
 あああ、そのキッスのやり方って、デジャブー(既損感)が。
 「いますぐ抱きしめたい」のアンディとか、レスリーのキスシーンとか…。

 若い頃、欧米映画のLDで研究しまくっていたとカリーナが証言するトニーのキッスは、もっと優しくて甘くて、息詰まるくらい切ないんだけど。

 あと、多分イニスはその夜まで童○だったんだと思うけど、いきなりそんな…攻受がすぐに決まるものなのか……リバースも可なのか…?(@_@)
 目からウロコ、じゃなくて目に5枚くらいウロコを重ね入れ。
 
 

法で裁けぬ悪を討つ…「SPL 狼よ静かに死ね」

 ここのところ、香港・中華圏映画をよく見に行く関西人チームで、今日関西封切りの「SPL 狼よ静かに死ね」を鑑賞。
 大阪では、かつて松坂慶子姐さん主演作「桃色」を上映していた映画館と同じビルにある、大阪の映画館「天六ユウラク座」が会場です。
 他の観客は、オッチャンが多い。わずかながら、ドニーファンなのか、香港映画なら何でも見るのか、女性2人連れも。
 場末感、アリアリ。
殺破狼看板01
 併映は、そんな映画が製作されているのも知らなかった哀川翔主演「デコトラの鷲 其の参 恋の花咲く清水港」と、なぜか米国アカデミー賞受賞作「SAYURI」。
殺破狼まつげ長いドニー
 下まつ毛がミョーに長いドニー・イエンの看板絵が、まつ毛くるんのチャン・ツイィーの看板絵と並ぶとは、ご本人方もさぞかし意外でありましょう…。

 さて、なるべく予備知識を入れずに見た「SPL 狼よ静かに死ね/殺破狼」。
 かつての香港皆殺し映画を懐かしく?思い起こさせた、血みどろアクション映画でした。

 音楽はかつてイーキン・チェン鄭伊健や陳小春のお抱え作曲家として頑張り、「インファナル・アフェア」3部作のBGMを手がけ、TBSドラマにそっくり曲想をパクられるほどになったコンフォート・チャン陳光榮先生ではありませんか!
 まさに壮大なスケールで鳴り響くオーケストラ演奏と、時には悲しく響き渡る弦の響きと女声スキャットが、かつての香港皆殺し映画とは一線を……劃しているか…な?

 題字は、書家としても知られる真夜中のプロ・ボウラー…もとい、香港明星のアンディ・ラウ劉徳華その人だ! 「華題」の署名も目立つぞ!
 「殺破狼」の「破」の字が、石へんでなくて口へんに見えたのは、何か理由があるのかな?

 そして監督は、「OVER SUMMER/爆裂刑警」「ジュリエット・イン・ラブ」「ラヴァーズ&ドラゴン/小白龍 情海翻波」などなど、アクション+情感+ちょっとシニカルな宿命論に満ちた数々の佳作を創り上げてきた、ウィルソン・イップ葉偉信監督だったのでした。
 懐かしい…茶水のおばさんの名前さえ、見慣れた楊容玲さんなのが懐かしい、香港映画でした。

 さて、内容は。
 前宣伝やチラシなどのビジュアルとは大いに違い、
 ダニー・リー警察チームを彷彿とさせるサイモン・ヤム任達華率いるチーム+サイモン・ヤムリーダーの後任として赴任するはずの一匹狼・ドニー・イェン甄子丹
         VS
 黒塗りベンツのトランクにゴルフクラブを仕舞いこみ、どこの洋服屋で仕立てたんや! 吉本芸人島木譲二御用達の、ミナミの服屋か!と突っ込み入れたくなる紫のシルクスーツと葉巻をご愛用、後ろ髪が「ベルベット・レイン」のアンディ・ラウ並みに長いサモハン・キンポー洪金寶の、
 法律もク○もあるかい! 何が何でも絶対におまえをとことんぶちのめしたるわい! ガチンコ対決!!!
 でした。

 思えば、ダニー・リー李修賢率いる香港警察重案組(特別重犯罪捜査班)チームも、アンソニー・ウォン黄秋生ら度を越して凶悪な犯罪者に立ち向かうためとはいえ、証拠は捏造する、罠にはめて別件逮捕する、度を過ぎた拷問で被疑者に自供させようとするなど、よくムチャクチャやってましたもんです。
 犯罪者集団も香港警察重案組も、怖いこわぁい(関西弁で)。
 おまえら、仮にも社会の公僕なら、六法全書を隅から隅までもう一度読んで、法律を頭に入れて、警察学校に入り直せーーー!と、当時はダビングビデオ見ながら、よく突っ込みましたもんです。

 あ、香港に六法全書はないかも。
 多分、ない。
 ないと思う。

 勤務そっちのけで水浸しのアパートメント自室に走って帰るトニー・レオンや、
 街をぶっ壊しまくっても被害者多数出してもクビにならないジャッキー・チェン成龍やアンディ・ラウやラウ・チェンワン劉青雲や、
 ヤンになりきったつもりで深夜のオフィスを徘徊して、または同僚をストーキングして殺し回る内務調査課のラウが、クビにならないんだからして(だから、現実にはいないって!)。
 
 とにかく、サイモン・ヤムと愉快な仲間たち、
 もとい、サイモン・ヤムと頼もしい不敵な仲間たちのメンツとは、

 あらあら懐かしい、ワシャワシャの髪型もちっとも変わらない台湾出身のベテランロック・ミュージシャン、ダニー・サマー夏紹聲と、
ダニー・サマー

 かつてジェイコブ・チョン張之亮監督の「籠民」で知的障害のある青年役を見事に演じ切り、「インファナル・アフェア2 無間序曲」で無口な三叔を演じたリウ・カイチー廖啓智と、
渋いぞリウ・カイチー

 台湾元アイドルというケン・チャン智堯というもの。
ヒトクセありげなイケメン=ケン・チャン
 うーむ、ケン・チャン智堯がよく解りません…。
 彼についてググってみたけど、やはり香港在住の茶通さんの「香港電影迷宮+blog」が詳しかった。「家族はみな、ブラジルさ」の謎が解けて、感謝です。

 サイモン・ヤムは重案組を率いるチャンことチャン・クォッチュー陳国忠捜査官役。長年、執念深くマフィアのボスであるウォン・ボー王寶(サモハン・キンポー)を追って来たのでした。
実は主役のサイモン・ヤムヤム

 王寶の犯罪を証明できる唯一の証人一家を護送中、王寶の手下である金髪ジェットに車をぶつけられ、証人はジェットのナイフで首をかっさばかれ、妻も死亡。遺された女の子ホイイーを養女とするが、その事件の傷も癒えて無理やり退院する日、医師に脳腫瘍を宣告される。

 この金髪ジェット。

 演じるはウー・ジン呉京。

 後にものすごーくつおーーーーいナイフ遣い(刀かな、と思ったけどやっぱり大型ナイフだと思う)だと解るのですが、あいにく正面から睨むと、どう見ても2時間ドラマの帝王こと、船越英一郎にしか見えないのですよ。

 金髪の船越。


 不敵に微笑む船越。


 身のこなしが感服するほど敏速で、

 長年鍛錬してきたと分かる引き締まったボディがカッコいいけど、
 顔だけが船越。


 うーん、うーん、うーーーーーん。

 
 その頃、チャンは一人の刑事に潜入捜査を命じる。「俺が必ず、おまえを守る」と断言して。
 出たーーーーー。
 潜入捜査官と上司の愛。
 でも本筋ではないので、「インファナル・アフェア」シリーズのウォン警司とヤンほどの愛…交流は描かれません。

 一方、収監されていた王寶は、証人死亡のため証拠不十分で釈放されますが、若妻は習慣性なのか、心労のせいか流産してしまう。
 「どうしてもあなたの子どもが欲しい」と泣き崩れる妻を病室で抱き、王寶は哀しみにくれるのでした。
 自分が収監されてさえいなければ…マフィアだって、家庭円満の幸せが欲しいのに…。
 病室の外で一人、王寶がうなだれていると、小さな女の子が「おじちゃん、アメあげる」と、握ったキャンディーを差し出す。

 オレンジとグリーンのキャンディーを持っていたのに、なぜか差し出したのはオレンジ色。
 「あの子、きっとオレンジ味が嫌いだったんですよ! だからグリーンじゃなくてオレンジ味をあげたの!」と、いついかなるときもバッグ内に「アメちゃん」が入っている関西のOL&オバチャンたちは、感想を述べ合ったのでした。

 心なごむ王寶ですが、女の子の腕をさっと引き、憎しみのまなざしを向けるのが、同じ病院で脳腫瘍宣告を受けたばかりの、チャン捜査官。
 二人の遺恨試合・全面対決は、しかし3年後に持ち越されるのでした。

 あれ?
 看板俳優の、ドニー・イェンは???
 
 3年後、脳腫瘍の手術で何とか生き延びてきたものの、いよいよチャンの退職・後任に譲るべき日が迫る。彼は何としてでも在任中に王寶を捕らえようとあがくのでした。
 3年後なのに、チームに大事に育てられたホイイーちゃん、全然成長してません。
 フィギュアの浅田真央たんみたいに、美少女になってるかと期待したのになあ。
 ダニー演じるサムは、離婚歴があり、妻子は海外移住した様子で、年頃の娘だけが父を慕って香港滞在中に逢いたいと連絡をくれている。
 リウ・カイチー扮するワー(阿華)は両親と折り合いが悪く、父親と喧嘩を繰り返した様子で、女っけもない中年男。その分、サイモン・ヤムヤムの片腕として忠実に尽くして来た。
 ケン・チャン演じるロクは、何となく後ろ暗い事もしてきたような、ドライな若手刑事。潜入捜査官に選ばれなくて、がっかりしたりしてる。
 
 3年後の中盤からは、キーワードは「父の日」です。
 日本では母の日商戦に比べて影の薄い父の日ですが、香港男人にとってはかなり重要らしい。
 しかし、かつてアル・カポネと彼が黒幕だといわれる聖バレンタインデーの虐殺(別名:血のバレンタイン)のごとく、
 男たちの、ひと時の家族団らんの日になるはずだった父の日に、次々と主要人物が斃れてゆく。
 
 おっとその前に、燦々と陽光が降り注ぐ海水浴場でも、夜の歡楽街でも、いつでもどこでも革ジャンの、マー馬軍ことドニーさんを紹介しなければ!
 サイモン・ヤムヤムの後任リーダーとして、やっと看板俳優、登場ですよ!
 いつでも革ジャン。黒ずくめ。
 いつでもニヒル。

 新しい上司の着任前に、チームのメンバーは噂する。
 「今度のボスも凄腕で暴れん坊らしい。かつて犯人を殴って一撃で脳障害を負わせたそうじゃねえか」
 「ケッ! 俺はそんな奴、ボスとは認めないぜ」
 と吐き捨てるのは、結婚もせずひたすらヤムヤムに忠義を尽くしてきたらしきワー。
 着任を待たずに王寶を追い詰めるため麻薬密売・売春現場のアジトに向かう彼らの車と、西警察署前ですれ違うドニーの車。
 彼は明日から赴任する予定の、無人の職場を見渡し、部下らの性格と家庭環境を一目で把握する。
 いやー、いつサイモン・ヤムらのチームがすぐに戻って「マー、おまえのニックネームを決めたぞ。ローンウルフ刑事ってのはどうだ?」
 「ボスぅ、ローンウルフは長いでしょう、それよりジプシー刑事でいいんじゃないすか。山さん、どうです?」
 「いや、長さん、やはり私は"はぐれ狼刑事"がいいと思いますね。こういうことはボスにお任せしますが」
ボス「ローンウルフだよやっぱり。今日からおまえはローンウルフだ。よろしくな」
 などと、「太陽にほえろ!」七曲署捜査1係と化すかと期待しちゃいましたよ。

 ……そんな期待をするのは、nancixぐらいだよね……_| ̄|○

 ドニーさんが、幼い娘と二人でにっこりほほえむ短髪ダニー・サマーの写真にふっと和んだりしている間に、しかし連中、王寶の息のかかった連中による麻薬密売アジトのガサ入れ現場で、むちゃくちゃ暴れていたのでした。
 あまつさえ、若手ホープのロク刑事ったら、ガサ入れの最中にためらいなく、押収するべきマフィアの大金を横取りしたりしてしまう。

 見てみぬふりのワー刑事。

 理由は「サイモンの養女となったホイイーちゃんの養育費に充てる」だったと、後で解ります。

 …まあ、公務員の給料、しかも満額の退職金がもらえない早期退職となると、ホイイーちゃんが将来カナダ留学したいと言い出しても、無理ですわな。
 …この展開、何だか懐かしい「アンディ・ラウ トニー・レオン 蒼い獣たち/五虎之決裂」を彷彿とさせますですよ。

 夜、サイモン・ヤムヤムがドニーを連れて王寶の縄張りを案内していると、大量のゴキブリ…失礼、黒Tシャツや黒ランニングシャツでたむろしている、人相の悪いチンピラどもに出くわす。
 何だか尖沙咀東の、ショッピングモール内のナイトクラブ前みたいだったわーん。
 サイモン・ヤムヤムとドニーの姿に気色ばみ、不穏なムードの中、一人の制服警官おじさんが、うっかりチンピラどもに「何してんだ?」と注意してしまう。
 逆上するチンピラども。おまわりさん、危うし!
 とっさにサイモン・ヤムヤムは、自分が潜入させた部下を、チンピラの怒りをそらす目くらましに使うことを決心する。
 今度は潜入部下、危うし。
 そこへ割って入る王寶。
 ついに顔を合わせる、宿命の男二人。
 見つめ合うサイモン・ヤムヤムと王寶、
 そしてモロに部外者ーーーっのドニーさん。

 えと、この映画の主演男優は、えーと、いったい。

無垢なる瞳を持つ少年の魅力「オリバー・ツイスト」

オリバー・ツイスト〈上〉 せっかくの映画の日、レディース・デーと重なっちゃいました…。
 おまけにちょっと油断して職場を定時に出られず、「単騎、万里を走る」も「THE 有頂天ホテル」も間に合わず。レイトショーだと終電に間に合わないし…。というわけで「オリバー・ツイスト」を見てみました。
 原作を読んだのは遙か昔。ほとんど忘れていて、救貧院で名前をアルファベット順につけられた、というくだりだけ思い出しました。
 美術はすごい。冒頭とエンディングに銅版画(小説の挿し絵かな?)が出てくるのですが、まんま再現できてます。ロンドンの市街地は煙突からの煙でかすみ、馬車が行き交う石畳の街路には、ちゃんと馬の糞も落ちてるし。貧民窟は垢まみれの体臭が臭ってきそう。しかし人口過密だったんだなあ、当時のロンドンって。
 店舗建築は、基本的に「ハリー・ポッター」の頃とあんまり変わってないのが、さすがは英国。
 ふむふむ、あれがporridge(お粥、ポリッジ)か。確かに孤児らには到底足りない量だし、何よりまずそう。焼かないもんじゃ焼みた…あわわわ。

 憂愁のまなざしの美少年、バーニー・クラーク君、長いまつ毛、伏せ目がちの表情、おびえる姿、高熱でくらっと倒れるはかなさ。
 ええですなあ。
 ギムナジウム…じゃない、寄宿制エリート校の制服を着せて、同級生や上級生とふざけたり、窓辺にもたれて哀しげな遠いまなざしを青空に向けたり、図書室の片隅で悩みを打ち明けたりする姿が見たい。少年合唱隊などに入れてもみたい。
 でも来日プロモーションの時にはもう、育ちすぎていたりするんだよね。美少年も美少女も、ほんのいっときの「時分の美」です。

 盗品故買屋でスリ少年団の親玉フェイギン、とてもサー・ベン・キングズレーに見えない特殊メイクぶり。ていうか、キングズレーの素顔が思い出せません。ええと、かつてマハトマ・ ガンジーを演じたんだったよね? 素顔…ガンジーの顔しか出てこない(泣)。フェイギンって、どうも絞首刑になるほどの悪党に思えないなあ。せいぜいが小悪党。前宣伝の「心優しき悪党」では全然ないけどね。しっかり脅すし、ステッキでお尻ペンペンするし。孤児たちに窃盗を強要し、少女には売春させていたとしても、みんな階級社会を生き抜くためのすべ。救貧院よりマシなもの食わせて衣服着せて寝かせてやってたんだし…懲役数年で勘弁してやってほしいような。あの時代は、貧しいというそれだけでも、すでに罪人扱いだもんなあ。

エマ (1) 執筆家のブラウンロー氏、まさかTV版「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズの2代目ワトソン君だったとは、見終わって公式サイトを覗くまで気づかなかったなあ。ドラマ見てるときから(ワトソン君、老けすぎ)と思ってたけど、さらに…。
 ちょっと英国を舞台にしたコミック「エマ」で、裸足の孤児エマを家に引き取ってメイドとして仕込み、働く心得やマナー、読み書きを教える元家庭教師を思い出してしまいました。ブラウンロー氏が善人で、ほんとにオリバー君は幸運でした。

 そして、フェイギンに仕込まれた一人で、今は悪党ビル・サイクスの情婦として売春で生計を立てていそうな、ぽっちゃりタイプの小柄なナンシー……うわお! そうだった、「ナンシー」だったんだ。すっかり忘れてたよ。こんなに若い子だっけ。仲間の娼婦には「ナンス!」って呼ばれてるような。
 悪党のビルって完全に反社会性人格障害者なんだけど。フェイギンから売り渡されて無理やり情婦にされて、まあそれでも食えるからいっか、ビルの暴力怖いしネチネチ虐められると厄介だし、適当におだてて慰めて機嫌よく稼がせておこうって感じだったのかな。あの時代には金も家もないのに女一人では、到底生き抜けない。
 そんな彼女が、新顔の美少年の命を救おうと必死になる。何の縁もないのに、みすみす殺されるのは可哀想だというだけで。
 できればナンシーには、密告を知ったビルに襲われても、引っかき傷の10ぐらいこしらえるぐらい抵抗して、ステッキ奪って数発殴り返すくらいの活躍を期待したかった(自分が殴り殺されかけたら、恐怖ですくみ上がっていなければひっかいて、せめて爪の間に犯人のDNA残して検屍官の慧眼に期待)けど、まあ、あの時代の小説なんだから仕方ない…。

 オリバーって、言ってみれば生きるためのすべを何一つ持たない田舎者なんだけど、不思議と助けてくれる人が現れるのは、やはり彼が純情そうな美少年だからでしょうか。生まれつき小ずるそうな悪ガキの顔つきだったら、到底ロンドンまでの旅の途中で助けてくれるおばあさんは出てこなかったんで野たれ死にだし、「早業ドジャー」にも助けてももらえず、ロンドンの街角で飢え死にしてたかと。ブラウンロー氏だって、家に引き取ろうとまでは思わなかったはず。
 美男はトクだ。
 持って生まれた哀しげな瞳の威力に加え、目上の男性には「サー」と呼びかける礼儀正しさも魅力。文字も読めるみたいだし、孤児院や救貧院ではそういうしつけと教育が受けられたんだっけ? それとも、身近にお手本になる人がいたんだっけ? このへんも原作にあったんだろうけど、思い出せない…。とにかく教育と品位は、重要です。持ち前の美醜は仕方ないけど、品格は努力で身につけられるはず。「生きるため、仕方ない」と言い訳して巾着切りにも強盗の手先にもなれたんだけど、幼いながらもオリバーは、不器用なまでに悪に染まることを拒む。非力だから正面切って立ち向かうことはできなくても、泣きながら、必死で。

やっぱりニコを見る映画!「 無極-PROMISE-」試写会

 「フッ……認めたくないものだな、饅頭ゆえの過ちというものを」

 さらさら前髪をさっとかきあげながら、そんなことは言わない。

 「私の扇を、汚したな…!」

 それがどんな髪型になっても似合う、アニメから抜け出たような天下の美形悪役の、名セリフでございました。
 さすが宿命に"美で挑む"男。
 ……あれ、別に王妃の「愛」を欲しているんじゃなくて……(自粛)で気に食わなかっただけじゃなかったっけ?

 ニコちゃんことニコラス・チェー謝霆鋒応援仲間ののえさんと、映画のネタばれで有名なラジオ番組「ありがとう!浜村淳です」とシマヤのだしの素のおかげで、一足早く中華ヒロイック・ファンタジー大作「無極 PROMISE」を試写会で見ることができました。(でも残業回避してギリギリに飛び込んだので、先着限りのシマヤのだしの素はもらえなかったさっっ)
 「無極」試写状
 ナマ浜村淳さん、やっぱり「サラ金の映画ですか?とラジオの聴取者からハガキ来ました」と言い「一部で人気のイケメン」とニコちゃんのことを紹介してくれました(^_^;)
 ……一部かよ!
 東アジアor中華圏一円の間違いじゃーないのか?

 映画は、イロイロ突っ込み甲斐があって、実にじつに楽しかったわーん。
 韋駄天ドンちゃん、光を超えて地球を全周する勢い。背負われた人間、普通なら燃えつきます。ありえないほどのバッファローの大群も2万人のバイキング軍団も、向かうところ敵無しです。対抗馬は「カンフー・ハッスル」の豚小屋砦家主・妻の小龍女(元秋)だけです!

 中華圏映画ファンよマニアよ、安心したまへ。韓流に便乗の宣伝に惑わされるな。

 ちりちりロングヘアに何年も体を洗ってなさそうなホームレススタイルで、肉が食えると聞くやすぐにご主人様になつく韋駄天ドンちゃん最新作ではなく、立派な華流映画に仕上がっていたから!(よくも悪くも)。
 そりゃもうね、物心ついてからずっと武侠小説を読みふけり、武侠の超人技描写が骨肉と化した中国人にCGを自由に使える金と権利を与えたら、鬼に金棒弁慶になぎなた虎に翼王家衛にトニー・レオンで、こうなっちゃうってもんなのよ。撮影監督は「夜半歌聲/逢いたくて、逢えなくて」「金玉満堂(きんぎょくまんどう)/決戦!炎の料理人」「グリーン・デスティニー」「パーハップス・ラブ(仮題)」などなどの香港のベテラン、ピーター・パウ鮑起鳴なんだけど。なまじ「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの後発なもんだから、もんのすげーい、CGにリキ入っちゃって、あああああぁぁ。監督名もキャスト名も中国語簡体字に加えルーン文字…じゃなくてファンタジーっぽい文体の英語表記が有るし。
 そりゃもう、アクションは「グリーン・デスティニー」の竹の上にあのチョウ・ユンファ周潤發兄貴がちょこん、ひらひらー、「HERO 英雄」の湖上のクルクルの比ではない(「LOVERS」は……記憶細胞が死滅している…_| ̄|○)。ええ、アクション指導は「HERO 英雄」を途中降板したスティーブン・トン・ワイと「インファナル・アフェア」1に出演&「マトリックス」「スパイダーマン」のディオン・ラム林迪安が担当してるんだけどね。
 申し訳ないけど、せいぜい高校生時代に柴田練三郎と山田風太郎を読みふけった程度の日本人だと、(あの、ドンちゃんには真に申し訳ないけど、抱腹絶倒していいですか? いいですよね? お願い、ここ笑いのツボだと言って! 我慢できなーいっヒッヒッヒッヒッヒー)て肩を震わせないとどうにもできない部分が…。
 周囲のドンちゃんファン?のオバサマ方も年配の男性陣も、度肝を抜かれてあぜんぼーぜん、って感じでしたよ。

 いやしかしこれ、韓国で上映できるんだろーか…?
 って、もう1月に公開されたんだっけ…?
 果たして、反響は…?
 だって、日本人の真田征夷大将軍にようやく、二足歩行を許される奴隷なんだよ、ドンちゃんが?
 「中国人に奴隷にされるだけでも屈辱なのに、ましてや日本人にか!」と立腹しませんか誇り高き韓国の皆さんが?
 大将軍と奴隷っつっても、だんだん立場が変わらなく…そして逆転していくんだけどね。

 涙ちょちょぎれるのが、意外にも正体は中華製ダース・ベイダーだった黒子のリウ・イエ君。
 もうもうもう、ドンちゃんの背中をすりすり、そっと抱きしめるシーンは、泣かずにはいられませんことよ。
 そのダースベイダーを掌の上でちょちょいと操り、苦しめる皇帝…でも上院議員でもない、北の侯爵(侯爵なのか公爵かはっきりしてくださいワーナーさん!)のニコラス・チェー。
 扇子2つや隠し剣を曲芸のように操り、アンニュイなポーズ決め、それでいながら電光石火の身のこなし。フフッと笑うのも小癪な感じで、いやーーー美しい…クール・ビューティー。上衣の前身ごろをススッとはたいて、身じまいを直して歩み去って行くシーンを見逃すな!
 さぞかし平素から、ダースベイダー・リウ・イエをこき使い・苦しめ・いたぶって、存分に楽しんでいるのであろう。なんせ正真正銘の御主人様なんだもの。もうね、ニコラス責めリウ・イエ受けで、コミケ用パロディ同人誌が3冊は作れる勢い(って何だそりゃ)。
 あ…でもダメだ。黒子は黒衣を脱いだら、ダース・ベイダーの兜型生命維持装置を外すのと同じようなことになるんだった…脱げないじゃん…せめて裾まくるとかなら…いやいやいやいや。
 映画館で販売するオフィシャル・グッズにはぜひとも、ニコラス愛用の黄金指差し棒(…もしかして、武器なのか?)を作ってー! 人差し指1本を伸ばしている棒と、1度だけ出て来た親指立てて「グッジョブ!」してる棒と! あれは欲しいー! 宴会で「プロミスごっこ」したーい!

 あああ、もっとネタばれ無い程度に書きたいけど、フルタイム勤め人は、もう寝ないと死ぬ。
 続きを待て!

やっと見ました「ブレイキング・ニュース/大事件」

 やっと関西で公開初日を迎えた、ジョニー・トー杜[王其]峰監督の「ブレイキング・ニュース/大事件」。昨夜、神戸で見てきました。
 一般公開といっても、シネリーブル神戸では夜19時半からの1回のみの上映です…_| ̄|○
 「私の頭の中の消しゴム」は、ロングランしてるのになあ。
 おかげで初日特典のポストカードはいただけましたが。

 2004年度カンヌ映画祭で、完成・フィルム到着が遅れに遅れた「2046」の上映予定時間をカバーすることになったのが、この特別招待作品「大事件」だったと記憶しています。
カンヌでブイブイ言わせるトーさんと、ケリー&ニック
 王家衛の前作「花様年華」について、「ケッ、いつもの王家衛、いつものトニー・レオンじゃねえか。新しみも何にもないのに、カンヌ最優秀男優賞だと? オレならトニーの今までにない面を見せてやるのに」と豪語したのが、誰あろうジョニー・トー監督だったのを思えば、何とも皮肉な巡り合わせです。

 神戸の映画館に集ったのは、30代~年配の男性陣が中心。30分前に整理券をもらって19番目だったのですが、スクリーン1に入っても観客数は20数人ってところでした。
 ……宣伝してないもんなあ…。

 冒頭、メディア・アジアのあの音楽とロゴを見ると、ついつい「インファナル・アフェア」シリーズ作かと錯覚してしまう自分が、いる。
 本作のプロデューサーの一人も、「インファナル・アフェア」のジョン・チャン荘澄さんだしね。

 もうね、香港の下町(多分、自動車修理工場が集中している界隈)がクレーンカメラで映し出されるだけで、ああああ、香港だぁーっと滝の涙ですよ。
 住んだこともないくせに(^_^;)
 その下町の、ビルの一室で、銃器らしきものをバッグに詰めて、出かけようとする不穏な男ども。
 その男ども=大陸出身者(省港旗兵と呼ばれる)による強盗団を内偵しているらしき、刑事たち。
 そんな、ビルまん前に車止めちゃったら…ばれるって(T_T)

 間の悪いことに、男どもが乗ろうとした車の運転手を、交通課の巡回おまわりさんが誰何してしまう。
 横の連絡が取れてなくてマズい事態になるのは、どこの組織でも同じだけど、こと警察でのこういう軋轢は、人命に関わりますってば。
 かくして、派手な銃撃戦が始まる。

 大陸の男どもの一人、チャン・ヤッユン(北京語ではチェン・イーユァン?)陳一元役が、やはり長身が映える岸谷五朗…じゃなくてリッチー・レン任賢齊です。目つきといい、身のこなしといい、精悍で、聡明で、逆上することもなく、仲間に一目置かれる存在、というのがよくわかる。

 制服姿の巡査が思わず手を挙げて命乞い…というのはこの通りでの出来事ではなくて、いったんリッチーらが警察車両を奪って逃げ、別の通りに移動してからのことだったんですね。
 交通事故を取材していたテレビクルーが、再度の銃撃戦の一部始終を撮影・報道してしまったことから、事態は大事(おおごと)に。
 海辺のハイテクな警察総本部(ホントに「インファナル・アフェア」や「香港国際警察」以降、警察本部ってこんなになっちゃったの?)では、緊急会議が開かれる。
 サイモン・ヤムヤム任達華、貫禄のトップぶりです。
 会議では最年少のOCTB(組織犯罪課)のレベッカ指揮官(姓で呼んでもらえないところをみても、若さゆえに舐められているのでしょうか?)が発言を求められ、テキパキと英語で今後の事態収拾策とマスコミ利用案を述べる。「this is a great show!」ですよ。
制服姿のケリー

 この英語を交えて、っつーところで、エリートぶりと新人類ぶりを強調するのが、香港映画のお約束。
 しかしこのクール・ビューティーも、何だか父親の元同僚というヤムヤム副総監と、感情的にこじれているのがうかがえる。
 この伏線、結局はラスト近くのリッチーとの会話でしか活かされませんでしたね…。

 上からの命令を無視し、あくまで自分たちでの犯人逮捕にこだわって暴走するCID(重案組)のチョン・チーハン張志恒警部補(ニック・チョン張家輝)、「困ったヒトだ」と途方に暮れながら付き従う年配の部下のホイ・シウホン許紹雄(出たー、トー監督作品常連!)。
張家輝と許さん
 そのニックの暴走をいまいましく思い、携帯電話で直のホットラインをつなげつつ、キビキビと命令を下すレベッカ。
 OCTB(組織犯罪課)とCID(重案組)所属の、この二人の関係性がいまいちよく解らなかったのですが、旧知の仲だったんでしょうか? この事件で初めて連帯することになった?

 往年の香港映画なら、このチョン警部補とリッチーが追う者と追われる者ながら「敵ながらあっぱれ」と誉め合い、意気に感じ、精神的に繋がり、レベッカが躍起になって二人を引き裂こうとする無粋な女…となるところなんでしょうが、トー作品はそうはいかない。ひとひねりもふたひねりもします。

 リッチーらは九龍大角嘴にある古ぼけた高層住宅(1階が店舗スペースという、よくあるタイプの)の1室に身を隠し、車でその前を巡回中のニック警部補も「オレなら、ここに逃げ込むが」とふと漏らす。
 精神的感応は、しているんですよねえ。
 この高層アパートメントには、実は大陸出身者の男2人(年下の阿春の方がユウ・ヨン尤勇)も潜伏しており、ある大仕事の機会を狙っていた。
演技派と好評だったユウ・ヨン

 彼らと、リッチーの仲間(長髪男除く)の髪型や背格好がよく似ていて、かなり混乱しました。わざとですか、意地悪トー監督?

 もはやチョン警部補らCIDだけの手には負えず、PTU(機動部隊)が出動を命じられ、大捜査網が敷かれる。レベッカの発案で、彼らはワイヤレス・カメラを装備している。警察の誘導で、住宅内の住民は次々と避難する。

 警察の包囲網を察知したリッチーらは、行きがかり上、避難しようと廊下に出てきたばかりの一家を脅し、その部屋に立てこもる。
 この不運な一家の父親・葉(イップ)はラム・シュー林雪さん。小学生の長女と長男を男手一つで育てている、夜勤のタクシー運転手。(セリフにそんなの出てきたっけ?) 部屋には子どもたちとイップの写真はあるが、子どもたちの母親の写真が1枚もないというのは、彼女が駆け落ちでもしたせいでしょうか? まだ死別の悲しみが癒えていないのでしょうか?

 レベッカらも高層住宅前の警察指揮車で陣頭指揮を取る。若くてしかも女のレベッカにアゴで使われるのに、不満を持ちつつ従う上司。レベッカと意気投合しているらしき広報課のグレース女性広報官(シューマイさんことマギー・シュー・メイケイ邵美[王其]。激ヤセを克服してかなりキレイになりました)。この指揮車内での人間模様も、興味深い。でも決して快いものではない。

 林雪宅で、警察発表をもとにしたマスコミ報道を目にしたリッチーは、自分が携帯電話のカメラで撮影した画像や動画を、マスコミ各社に送りつけることを思いつく。林雪の息子は、パソコン操作に長けていて、「嫌だ、悪人の手伝いなんかしない」と言いつつも父の説得で、リッチーの企みに加担する。
 香港小学生、すっげー。携帯カメラの不鮮明な、モザイクだらけの画像をスライドショーにして送れますか。動画をWindows Mediaプレイヤー用のwmvファイルに変換できますか!
 おんぼろに見えても、あの高層住宅には光ケーブルでも備わっていたに違いない。でないとWebカメラで、テレビ電話ーなんでできやしないわ。

 マスコミが「警察発表にない、特殊部隊が火に追われて退却するお宝画像」を報道することで、窮地に立たされる警察側。しかし、レベッカは動じない。

 インターバルとして、林雪宅で昼ごはんを作るシーンになる。口ばっかりでろくに料理できない林雪に代わり、リッチーとユウ・ヨンが手早く料理を作る。ユウ・ヨンがごく自然に青いエプロンつけるのが、可笑しくも悲しい。悪事に手を染めなければ、金に困らなければ、よき亭主になったかもしれないのに…。
 さすが中華圏の男は、料理ができる! 羨ましいほど手馴れた様子で。
 大陸風味は、香港育ちの林雪チルドレンの口に合ったんですかねえ。
 中国標準語で話していたリッチーやユウ・ヨンですが、愛称が阿○と、阿がついていたってことは、広東省出身なのでしょうか?
 その食事風景も、メディアを通して流される。
 警察もレベッカの指令で、特別弁当を警官だけでなく取材陣に配ってご機嫌取り。いやはや。記者だけでなく、野次馬もご相伴に預かっていたような?

 昼食タイムに、グレースの根回しで、警察広報から殉職者の遺族の談話がテレビ放送される。あの、手を挙げて降参したぶざまな交通課警官も、赤ん坊と若い妻と一緒に登場、お涙頂戴の談話を…。
 そうそう、「警察に協力的な大スターのジャッキー」も、サングラスかけて登場してましたね。
 …似てない…グレース広報官より背が低かったような…?(^_^;)

 林雪パパはなんと、子どもたちを置いて自分だけ窓から脱出しようとして宙吊りに。
 リッチーとユウ・ヨンが彼を助けて室内に引っ張り揚げる。
 てっきり、冷徹なトー作品のことだから、子どもたちの目の前で林雪さん絶命か?と手に汗握ったのですが…。

 リッチーが、床に落ちていた一枚の写真に気づき拾い上げるのは、どの時点の挿入エピソードだったかな?
 それは必殺仕事人ユウ・ヨンが金で請け負った殺しの、ターゲットの写真だった。
 写真の裏には、日時と場所が書いてあった。
 このターゲットが政治家なのか実業家なのかマフィア幹部なのかも、説明無し。

痛すぎた「親切なクムジャさん」

親切なクムジャさん SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE 「SAYURI」に続いて「親切なチャングムさ」…もとい、「親切なクムジャさん」も、遅ればせながら大阪で見た。
 「オールド・ボーイ」と同じ上映館。上映開始時間が他館よりも遅かったので、助かった。
 思えばミョーなタイトル(原題の直訳、韓国映画には多いよな…)と、トニー・レオンとイ・ヨンエさんの夢の2ショットが見られた2004年の第9回釜山国際映画祭での記者会見で、印象に残っていた作品。あのときは「新作はどんなストーリーですか?」と聞かれて「親切な、クムジャさんの話です」と照れ笑いしていたイ・ヨンエ李英愛さんだった。
釜山でのイ・ヨンエとトニー
 イ・ヨンエ出演映画を見るのは「JSA」、「春の日は過ぎ行く」以来だ。
 nancixの「映画女優の許容範囲」は結構狭くて、永遠の憧れ原田美枝子、若い日も今も魅力的な岸恵子、若い頃の高峰秀子や浅丘ルリ子、鈴木京香、仲間由紀恵ちゃん、中華圏ならシルヴィア・チェン、ブリジット・リンぐらいしか「美人」に見えない。昨今の香港には、美人ー!と手放しで言える映画女優がいないのが悲しいところだ。賞独占のセシリア・チョンは痩せ過ぎ・ドスが効き過ぎだし(「無極」には期待ー!)、カレーナ・ラム林嘉欣ちゃんもまだまだ「カワイコちゃん」でしかないし…。
 
 そこへいくと、韓国にはイ・ヨンエさんが存在する!
 もー、うっとり見とれちゃうほど端正。美しい。透き通った瞳の輝きが何ともいえずさわやか。柔和なのに、硬質なクリスタルのように、神秘的で侵しがたい空気をまとっている。たとえ、普段着はそんじょそこらの女子大生のようにカジュアルで性格は裏表無く(つまり単純?)ひたむきだとしても、だ。
 なのに、「宮廷女官チャングムの誓い/大長今」を経て、選んだ作品が、女囚の復讐ものですよ。
 その心意気といったら、「花様年華」と「2046」の間にベタな香港ラブコメや「インファナル・アフェア」に出演したトニーさんに通じ……通じませんかね……?
 とにかく今のところ、トニー・レオンと共演してほしい女優ナンバー1なのだ。トニー、のんびり休暇取ってる場合じゃありませんぜ。チョウ・ユンファ兄貴が先に共演しちゃうかもしれませんぜ。

 オープニング。まるで「♪美しさはー罪ーー」とばかりに、画面いっぱいにうねうねとイバラが伸び、小さな深紅のバラが咲く。
 刺青のようでもあり、アールヌーボーの紋様のようでもある。
 虫プロには珍しかった官能アニメラマ映画「哀しみのベラドンナ」や、同作の美術を担当した深井国のタッチさえ連想させる(古すぎ)。
 英語題は「SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE」。
 レディーでっせ。
 ウーマンの復讐への共感、とちゃいまっせ。

 音楽は弦楽器やおそらくはハープシコード(ピアノの原型)による、ワルツが主旋律。
 時々「夢二」「花様年華」で用いられた、梅林茂の「夢二のテーマ」っぽかったりして。

 しかし本編はまあ、劇画「女囚さそり」シリーズからレ○プだの輪○だののオトコがうひょうひょ暗く喜ぶ部分を削除した、調子だった。
 女囚の皆さんって、あのキョーレツなレズビアンな人以外は、泉ピン子や南果歩(渡辺謙夫人!)が出てた女子刑務所ドラマと、そう変わんなかったし。
 さすがに、神聖なチャングムさんをけがすわけにはいかなかったですか。同性としては、ちょっぴりホッ。しかしそれでは、女優として、殻を破ったと言えるんだろうか? いや殻を破らなきゃ絶対ダメッ!てわけじゃないけど。
 子どもの頃、劇画全般も梶芽以子も(見ちゃいけない、怖くてイヤらしいもの)だったのだが、今ではなんだってそんなふうにタブー視してたのか、バカバカしくなる。多分、いま「女囚さそり」の復刻DVDなんか見たら、腹抱えて笑えそうだ。トシ食って図太くなったのかなあ。だから、この「親切なクムジャさん」も、昔の自分なら到底見られなかっただろうけど、今だから、平気。「オールド・ボーイ」の"悲しゅうてやがて可笑し"いオフビート感とも共通するってのも、エグそう吐きそうなんじゃ…という危惧を薄めてくれた。

 梶芽以子の「さそり」は、黒くてつばの広い帽子と黒革コート、ブーツを"制服"にしていた記憶がある。
 イ・ヨンエさんも後半、赤いアイシャドウに黒アイラインに黒ずくめの姿で、雪の街頭や、がらんとした廃校の小学校で大活躍。
 ……怪しいって……そんな姿、目立ちすぎますって、ご両人さま。
 ヨンエさんご本人いわく"不良女子高生"姿も、むっちりした制服と不満げにとがらせた唇が可愛くて、あああ、ツイィーの小娘の援助交際的淫らさなんて全然無く。
 不良というより、愛情に素直すぎただけだよね? 好きっ!彼氏にオンナノコの大事なモノをあげたいっっ!と思ったら、後先考えず周囲の叱責どこ吹く風で、一途にのめりこんじゃっただけだよね? としか思えない(ひいきの引き倒し)。

 何より、………痛い。痛すぎる。
 昨今の日本人には、身につまされるプロットが、満載。

ワタシが嫌いなニッポンだらけだった「WASABI」

WASABIの海外DVDジャケット 何を隠そう、nancixはリュック・ベッソン監督/ジャン・レノ主演「レオン」を見たとき「うおーーーっやられた!」と叫んだニンゲンである。
 実をいうと、チョウ・ユンファと、日本の中学でいじめに遭い、場面緘黙症(選択性緘黙症)となり、逃げるように引っ越した香港で父親&弟を惨殺され心を閉ざした日本人美少女(誰でもいい)が香港で逃避行を繰り広げる妄想……
 を密かに胸に温めていて、それがかなり「レオン」とシンクロしてたんである。
 「サブウェイ」「グラン・ブルー」「ニキータ」とリュック・ベッソンワールドにハマっていた身としては、「レオン」に(さすがはリュック・ベッソン! さすがはジャン・レノ!)と心酔したもんである。

 しかーし。
 ハリウッドに行き、プロデュースに手を染めるようになってから、リュック・ベッソン必ずしも巨匠に非ず、と思うようになってしまった。ツイ・ハークのように。
 そりゃね、スー・チーちゃんを起用しただけでなく、ジェット・リーだってメジャーに押し上げてくれたよ。感謝すべきなんだろうけど…だんだん「リュック・ベッソン製作総指揮!」だからって、ハイハイと見る気になれなくなっちゃった。
 で、ヒロスエちゃんが抜擢されてジャン・レノと共演!と話題をまいた「WASABI」も、何となく見逃していたのだ。

 職場でむしゃくしゃして、でも「それを言っちゃおしめえよー」と理性が止めて罵倒を飲み込んで、定時でさっさと帰ったらテレビ大阪で「WASABI」を放送してたのです。それで、思わず最後まで見ちゃった。
 …………鼻につんと、来ない。
 すり下ろしたばかりの生わさびでなくて、ギンギラギンの着色料入り、香港のスーパーでは大容量で売られてる、チューブ入りのメーカー大量生産品だった。
 いやぁ…こりゃ……怪作だわ…「SAYURI」(未見)ともちょっと異なる意味で…。

 パリ市警の敏腕刑事、ユベール(ジャン・レノ)。47歳にしていまだ独身、たった一人の友人以上・恋人未満の同年代の女性にもあいそを尽かされそうな彼のもとに、生涯忘れられない日本女性、ミコが死んだとの悲報がミコの弁護士から舞い込んだ。

 突然蒸発して19年、まったく音沙汰がなかったミコの葬儀に出席するため、急遽来日したユベール。さっそく税関で職員を殴って、日本国警察に拘留される。実は19年前の彼は情報部員。同僚だったちび男のモモ(ミッシェル・ミューラー)が身元保証人として現れ、なんなく彼を釈放させた。ミコの弁護士に会ったユベールは、自分にユミ(広末涼子)という娘がいることを初めて聞かされ大ショックを受けた。隣室にいたのは、やんちゃなコギャルそのもののユミ。母の友人と名乗ったジェラールに「パパはママを無理やり襲って自分を産ませ、あげくに捨てた」と思い込んできたから、父親を憎んでいると告げる。いまさら「父親はオレだ」とも言えず、ユベールとユミはミコの遺産をめぐる捜査を進めていく。ミコの遺言により、20歳になれば自動的にユミのものになるはずの大金だが、それを狙う連中の黒い影が、似た者同士の父娘の行く手を阻む…。

 まず、ジャン・レノのキャラクター設定が、荒唐無稽。

立体絵本、「靴に恋する人魚」

 「人魚朶朶」ポスター 「靴に恋する人魚/人魚朶朶」は「東京まで見に来てよかったなぁ」と思える、細部まで丁寧に作られた、リリカルな小品佳作。10年前なら香港のUFO電影人有限公司が出資していそうな作品でした。何せ、登場した猫の実名まで、キャスト表にプロメテウスとティファニーつって明記するんだもんねっ。
 予告編は[こちら]

 可愛い。
 小粋。

 生理的に合わなかった「西瓜/天辺一朶雲」のいい口直しになりました(あっ…その…(-.-;))。
 ティーチインが始まるまで、ロビン・リー李芸嬋という監督が男か女か知りませんでしたが、脚本や企画は間違いなく女性だろうと思っていました。
 話し言葉と書き言葉が乖離していて言文一致ではないせいか、基本的に読書をあまりしない香港人と違い、台湾では日本でも人気のあるジミー幾米の人気ぶりを見れば解るように、絵本文化が発達しています。西宮市大谷記念美術館で毎年見ている「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」に応募の台湾作品を見ても、レベルの高いところで絵本作家が切磋琢磨しているんだな、それを育てる土壌が、裾野があるんだなということが、よくわかります。この映画は、その絵本的世界を映像で表現しているかのようです。それが、かなり効果を上げている。アニメチックだったり、ディズニー児童向け特撮映画っぽかったり。
 こういう「神が細部に宿る」映画も、男性の映画批評家にはバカにされるだろうけど、もっともっとジャパニーズ・ウーマン観客パワーを結集して「可愛いんだから、いいのっっ!」と声を上げ、日本で観られるようにすべきだと思う。

 絵本を読んでもらうのが好きな少女、ドゥドゥ朶朶は、実は足が不自由(先天性の骨や筋肉の障害?)。外に出たがらず内向的な彼女のために、両親がせっせと絵本を買って来ては就寝前に読んでやりますが、唯一読ませまいとするのがアンデルセンの「人魚姫」。しかしドゥドゥは童話の暗い部分ばかり指摘し、やがては「人魚姫」に気づいて、読んでほしいとせがみます。
 魔女から地上を歩ける2本の足を得た代わりに、美しい声を失う人魚姫。ドゥドゥは足の手術を恐れ、手術中に魔女が来るのではないかと怯えます。
 魔女(金髪のカツラをかぶっているけど、明らかにアジア人女性…!)は、「あなたは海の泡にはならない」と麻酔をかけられたドゥドゥの夢の中に登場し、お告げをします。黒い羊と白い羊を見つけるのがあなたの幸せよ、と。
 夢から醒めると、手術は成功し、ドゥドゥはすんなりと長く、まっすぐで、美しい足を得ていました。そりゃあもう、主治医が得意がって彼女を成功例として学会などに引っ張り出し、海外にも連れ出したほどです。両親が最初に彼女にプレゼントしたのは、真っ白なスニーカーでした。

 かつておとぎ話を愛したお姫様は、靴を愛する少女になります。それこそ、彼女の美しい足に履かれたいと靴そのものが望み、買ってもらえなかった靴がシクシク泣き出すほどです(赤いサンダルの白水玉が、落ちて消える! 可愛い!)。
 成人したドゥドゥは、一人暮らしを満喫しています。給料を自由に使っても暮らしに困らないほどです。
 ドゥドゥの勤めるジャック出版社は、折り紙マニアのジャック(朱約信、ってことは台湾の異色シンガーソングライター猪頭皮じゃないか! こんなオタクな顔だったのか…)が気ままに経営しています。
 データ入力担当の同僚達はノートパソコンから全く顔を上げず(……nancixの職場にかなり似ている…身につまされる…)、会社の会計はドゥドゥに任せきり。計算は電卓ではなく、イマドキそろばんですよ! そろばん! 台湾ではまだ作られているのか? 日本国兵庫県小野市製の播州そろばんか??

 しかも彼女はたった一人の女性社員として、お茶くみ、トイレ掃除、原稿取りもこなさなければなりません。女子社員の雇用契約書にだけ、あぶり出しインクでそれらの雑用をこなすという条件が書かれていて、ドゥドゥは(私が社長になったら、これを男性社員の条件にしちゃうのに!)とつぶやきます。いやまったく、同感! 自分の仕事に没頭してて、何でいきなり「来客があったら、女が気を利かせてお茶入れずにどうすんねん!」と怒鳴られなきゃならんのか。納得でけん。ぷんぷん。
 ジャック社長は時折り、イラストレーターのビッグキャット大猫の作品をもらってこいとドウドウに言いつけます。このイラストレーターは変わり者で、どうやらノッポすぎるのを苦にして対人恐怖症。ドゥドゥがノックして声をかけても決して出て来ず、鉄ドアの隙間から作品を差し出すだけなのでした。
 ドゥドゥはビッグキャットの家の近所にある、小さな靴店のショーウインドーを覗いて、美しい靴を眺めることで、日ごろの憂さを晴らすのでした。彼女は欲しいと思える可愛いおしゃれなサンダルやパンプス、ミュールを見ると我慢できず、衝動買いしてしまうのです。

 ある日、ドゥドゥは口の中に異変を感じます。虫歯でした。頬を腫らして電話応対もうまくできない彼女に、ジャック社長もビッグキャットも黙ってセイロガンのような黒い丸薬をレンゲに載せて、差し出すのでした。さらに、ビッグキャットは近所のスマイリー歯科への略図まで描いてくれる。

 仕事が速いよ、ビッグキャット!

 ドゥドゥはおそるおそる、スマイリー歯科へ。
 何だか玄関先のタイルのカラフルさが「地下鐵」絵本で見た色合いだ…。
 そこはちっぽけな、「癒し系の」個人経営歯科医院で、看護師も笑顔。若い長髪歯科医(やっと出た! 「僕の恋、彼の秘密/十七歳的天空」「セブンソード/七剣」出演、注目株のダンカン・チョウ周群達!!)は親知らずを抜くことを彼女に勧め、ドゥドゥは毎週通うはめになるのでした。
 治療台の上で、痛みをこらえかねた彼女は思わずミュールをすっ飛ばし、歯科医はそのミュールを拾って一瞬、見とれます。

 ぼーい・みーつ・あ・がーる

「セブンソード」は中華ロード・オブ・ザ・リング?

七剣中華版ポスター 「セブンソード/七剣」、映画の日に神戸で見てまいりました!
 世界標準公式サイトは[こちら]。要英語か中国語。

 いやあ、冒頭部分が始まったとき、エスキモー…じゃなくて政治的に正しくはイヌイットだかなんだかですけど、その北方民族の夫婦を主人公にした別の映画の予告編なのかと思いましたですよ。
 初めて見る方は、要注意です。

 真夜中に落下してきた、隕石。

 そして、めでたい結婚の祝宴中に黒(グレー?)の軍団に襲撃を受け、全員虐殺された村の惨状が描写される。
 黒の軍団といっても古代中国の秦国軍じゃないよ。
 解るか、それくらい。
 紅い布、紅くて丸い大紅燈篭は、結婚式の装飾です。
 その紅い燈籠を、なるほど、あのように目くらましと防御に使うか。
 使った人物は、今までにも死人の名札を、黒の軍団の手から奪って来たらしい。
 歯噛みする女武将。
 彼女を含め12人の隈取り武将は、清朝政権から出された「禁武法」に反する者を皆殺しにして、死人の数に合わせて礼金をもらう賞金稼ぎ・十二門将として、人民に恐れられていた…。

 というわけで本題に入る前に。

 えー、正直申しまして、ワタクシ。
 21世紀のツイ・ハーク徐克とレイモンド・ウォン黄百鳴を、見くびっておったと、真摯に反省しております。

ツイ・ハーク巨匠 彼は昔の彼ならず。

 第57回カンヌ映画祭の審査員(因縁の…「2046」が出品間に合った2004年度)にも選ばれ、自信を回復したツイ・ハークはもう、
 どこぞの機動戦士もののブームに便乗してザクそっくりなモビルスーツに香港で暴れ回らせ人殺しにしたり、
 ゴジラの頭そっくりな作り物くさい化け物を女幽霊と書生の悲恋アクションにわざわざ出して悦に入ったり、
 何度もなんどもトニー・レオンを崖から落としてコロコロ転がらせたり、
 いかにも作り物のツルにアニタ・ムイやトニー・レオンを乗っけたり、
 「男たちの挽歌」続々編をアニメにしたいとマジにキャラクター設定のセル画を事務所に張ってたり、
 ハリウッド入りしたものの、ジャン・クロード・バンタム主演映画で大いに苦労したり、
 のアニメ・特撮オタクなツイ・ハークではないのですね。
 ベネツィア映画祭のオープニングを飾れる、世界的巨匠の仲間入りなのですね。

 一時は香港での配給路線(東宝系とか、松竹系みたいな)の1ラインを運営していながら、ドル箱スター+自分を並べて旧正月の「えー毎度バカバカシイお笑いを一つ、皆様どうぞファミリーでお越しいただいて福々しい初笑いをですね…」のマンネリ旧正月コメディを連発し、幾つも不入り記録を作って没落してしまった"のび太君"ではないのですね、もうレイモンド・ウォンは。

 七転び八起き、どんな逆境にも耐え、中国or東南アジアor欧米日本の微妙な綱引きの中で、したたかに不死鳥のごとく蘇る彼らには、本当に敬服つかまつる。

 思えば「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、特に2作目の「二つの塔」を見たとき、
 どうしても「HERO 英雄」の中国人民解放軍による人海作戦を連想し、
 人民解放軍のご威光を持ってしてもCGを駆使したモブシーンが迫力負けしていると痛感し、また(ああ、これほどの一大プロジェクトを、潤沢な資金と、オーストラリアの優秀なCGスタッフと、中国大陸の変化に富んだ雄大なロケ地と、金は出すが口はなるべく出さない太っ腹なスポンサーを、香港のツイ・ハークにもテディ・チャン陳徳森にも与えたい…)と念じ、
 ハラハラと心の中で涙を流したことであったよ。
 「3年だ! 3年待った! 一緒に巻き返そうぜ!!」と「男たちの挽歌」の鬼の形相のマーク哥と化して、ツイ・ハークに迫ってみたいよ、とも。

 同じような?思いが、ツイ・ハークの中に煮えたぎっていたにちがいない。
 北京でド派手なプレミアショーを繰り広げ、国家の威信をかけて海賊版を取り締まらせ、配給権をオークションにかけて吊り上げ、せっかく積極的にラブコールして来たアンディ・ラウ劉徳華にあーんな役を割り振って平然として、ブイブイ言わせている世界の巨匠チャン・イーモウ張藝謀を横目に見て、内心歯噛みしていたかもしれない。
 予算不足や俳優との衝突に苦しみながら寝食(+入浴)を忘れて数々の武侠映画を作り続け、世の人々をあっと言わせて来たのは、この俺様なのに!と。

 そんなツイ・ハークに、北京の北京慈文影視製作有限公司と、韓流で世界的にブイブイ言わせている韓国の著名な映画製作会社「ボーラム・エンタテンメント(寶藍電影製作公司)」と、フジテレビはたまたライブドア以上の(たとえが悪いか…)多角経営・国際企業のシティ・グローリー・ピクチャーズ(華映電影有限公司)が思い切り気前よく出資し、あの「HERO」「LOVERS」のワーナーブラザースが配給権を買ったんである。
 彼が本領発揮とばかりに、大張り切りしないわけがないではないか!
 
 いやしかし、大張り切りすればするほど、
 ツイ・ハークの血が沸き肉が躍れば躍るほど…ひとつ、問題が。

 暴力&セックス描写である。
 今でも忘れられない。香港の尖沙咀東、シネコンの最も小さなスクリーン(試写室かと思った)で見た「ブレード/刀」(95)の衝撃を。
 足手まといそのものの娘が案の定罠にかかり、彼女を救おうとした主人公の片腕が、容赦なくぶった切られるのである!
 刀を振り上げるシーンの次には、硬直する被害者、そして腕の先は見せない、というハリウッド式描写に慣れた身には、腕の切断面と噴き出す動脈からの鮮血、「腕が! 俺の腕がぁぁぁぁぁ! 返せ戻せええええぇぇぇ!」と絶叫しながらのたうち、地をずりずり這い回る主人公、という、実に衝撃的なシーンは到底、正視しかねるものであった。
 nancixは「仁義なき戦い」シリーズの洗礼を全く受けていない、年代ですからして。

 そして、女への扱い。
 「ブレード/刀」には、「恋する惑星」でトニー・レオンを翻弄し、理由も告げずに飛び立ってしまったあのスチュワーデスの元カノ役を演じた、ヴァレリー・チャウ周嘉玲が出演していたのだが、実にじつに荒々しくも妖艶で野性的な娼婦を演じさせられていたのである。
 もーそりゃもう、食いつくかのように男に挑みかかる、目つきがみだらな妖婦。
 高名な刀匠の娘もたいがいワガママ女でおいおい勘弁してくれや、だったんだが、いやはや。好感を持てたのは、まだ男とも女ともつかぬ、色気づく前の野生少女だけだとは。
 主人公が手塚治虫先生の「どろろ」に出てくる百鬼丸、野生少女が旅の相棒のどろろの役回りなのね、と納得はしたものの、あれですかねえ。永遠のアニメ・特撮オタクであるツイ・ハークにとって、大人の女の色香は、剣士や拳法家にとって恐るべき敵・あやうきに近寄らずと肝に命じるべき存在なのだろうか、と思ったことであった。
 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナシリーズ」(以下ワンチャイ)の黄飛鴻だって、史実では正妻の他にも複数の女性の存在があり、晩年にはなんと女弟子をめとってしまうというのに、映画版ではウブすぎるほどウブでしたよねえ。

 ……ツイ・ハークの世話女房、ナンサン・シー施南生さんがどんな女性なのかは存じませんが。

 まあ、あの「ブレード/刀」の調子で、「セブンソード」も演出されているのなら、腕が足が首が、女子供も容赦なく血しぶきを挙げて飛び散るに決まっているから、ひぃぃ、ご勘弁をぉぉ、だったわけなんですよ。

 
 その点については、幸いなことに杞憂でしたね。
 ちゃんと欧米市場も視野に入れ、グローバル・スタンダードな演出に、抑制していました。
 えーと、スクリーンにボールのようなものが飛んでましたが、ボールに目鼻口がついていたような気もしますが、気のせいでしょう。
 腕の先に手首がついてない、いや逆か、とにかく胴体と泣き別れの手がケイレンしてたような記憶も少しありますが、まあこれぐらい「ロード・オブ・ザ・リング」の化け物軍ぶった斬りに比べりゃあねえ…ツイ・ハークにしては抑制…はははは……はは_| ̄|○

 しかし相変わらず、女の扱いは…。
 今回は男まさりでありつつ、胸に秘めた牧童への失恋の悲しみに耐える少女、
 頭領の娘というプライドを持ちながらも死への恐怖、殺人への罪の意識におののく少女、
 故国から引き離され支配者の奴隷として苛酷な運命に落とされ、自由の意味すら、もはや見失いかけた高麗人の女

 と、3人もタイプの異なる女性を描こうとしましたが、やはり欲張りすぎたとしか。
 高麗人女性の存在とドニー・イェン甄子丹の設定の改変は、韓国スポンサーを得た限り、やむをえない措置だったのでしょうがねえ。
七剣士…顔が見えないぃぃぃっ!

 トンマなnancixは、頭領の娘がいったい幼馴染の村の男を差し置いて、七剣の誰に一目惚れしたのか、わからなくなりましたよ。
 河岸での2人の女の、言葉の通じない切実な対話で、やっとわかったぐらいです。

 もっとトンマなことに、村の牧童と、七剣士の帽子青年を何度もなんども見間違えたという…。
帽子のムーランと、カノジョとヤリたい盛りの牧童
 2人が馬を放ちに行くシーンでやっと、別人だと解りました。それでもまだ、帽子青年の過去と、剣との関係性と、性格がよくわからない。
 さあ過去の紹介か!と思えば「いつも笑顔なんだな」っていうようなセリフだけだったし。

 新聞広告やCMで「犠牲」と銘打たれている坊主頭の少年の「犠牲」の意味も解らないし。
 てっきりあーんなことやこーんなことになるのね!とハラハラドキドキひぃぃぃとなっていたのに!

 帰りにケンチキで「五香醤チキン」に、高麗女よろしく思い切りかぶりつきながらパンフを読んでいたら、なんと!
 「狼に育てられたんだぁ」と言っていた坊主って、あの「キラーウルフ/白髪魔女傳」のレスリー卓一航さまの弟子だというではないですか!
 なんてぇこったい! それなら過去の描写で、雪山にすっくと立つ乱れ髪のレスリーのシルエットでも登場させて「お師匠様ぁ」と幼い坊主に呼ばせてくれれば!

 ……あかんか_| ̄|○

 ええと、それとせっかく真打ち・御大登場!のラウ・カーリョン劉家良師父。
 できればですね、彼を「ロード・オブ・ザ・リング」の魔法使い、灰色のガンダルフ並みに手厚く扱い、クライマックスで本領発揮シーンを用意していただきたかったです。
 途中から頭巾の文人レオン・ライ黎明と、ドニー・イェン甄子丹の共同掃討作戦になってしまって(泣)師父ーーーどこですかぁぁぁ!

 「HERO 英雄」では「男女の刺し合いの繰り返しなんかウザくてどうでもいいから、ジェット・リーVSドニー・イエンの夢の対決をもっと見せろ!」という男性陣のご意見をたくさんいただいてnancixをシクシク泣かせた、ドニー兄貴。
 今回はもう、何という美味しい役なんだか(笑)。
 もーもー、ドニーさん言って言ってよ! 「今宵の由龍剣は、一味違うぞ」と「また、つまらぬものを、斬ってしまった…」を!
 と、一人で念じておりました。
 って、斬鉄剣の石川五右衛門かーい!(殴)

 で、「ワンチャイシリーズ」などを見てきた者としては、
 敵の大ボス風火連城との、狭い壁の間にわざわざ入っての対決に、思わずニヤリとしてしまうわけですよ。
 あの時とは武器が異なりますが、制約あってこそ迫力の増す真剣勝負。
 たまりません。
 手に汗握り(いけ! いけーっ! ああっやられるな! うわーん頼む!)とか心の中で絶叫できるわけですよ。

僧侶のようなドニー兄貴
 そう、直情径行の正統派二枚目よりも、暗い過去を持つ陰ある男に、女は胸キュンで惚れるもの。
 大鷲のケンよりもコンドルのジョーに人気が…たとえが古すぎるな。
 熱血刑事よりも、二重生活を余儀なくされる潜入捜査官に人気が…これも、ちと…。

 黎明さんの過去よりも誰の過去よりも、故国から無理に引き裂かれ奴隷にされるという屈辱を受けた過去は、重い。
 できればですね、ドニー兄貴、もうちょっと女の扱いを優しく……
 それと、ラブシーンで、鍛えに鍛え抜いて肌理の細かい美しい背中を見せてくださったのは、大変にワクワクドキドキでありがたいのですが、
 背中だけかい……?
 もうちょっと!
 もうちょっと下まで…その……お見せいただくと…
 腰の動きとか……。

 やはりですね、フンヌフンヌと鼻息も荒くツイィーたんを……する赤の残剣トニーや、「2046」のトニーさんを見てしまった者としては、ああもうちょっとセクシィなドニー兄貴を、たがが外れたように女を愛しまくるドニー兄貴を見たい! 結婚もなさったことだし、何もチェリーボーイのふりしなくてもいい年齢のわけですし!
 と、ないものねだりしてしまうわけですよ。

 レオン・ライさん、少々心配な点があったんですが(やはりトニーさんと同じく、幼児期からのカンフーの素養がないこととか、お顔の横幅が10年前より広がってないかとか…)、やはりファンも「動いてるときのレオンの方が素敵ーっ」と認めるだけあって、スクリーンで見る彼は渋さが加わり、なかなかよかったです。
王家衛作品経験済みの2人。黎明と楊采[女尼]

 黒澤明監督の「七人の侍」と違って、さっさと敵の本拠地を襲う思い切りのよさ、7人で多勢の軍隊を圧倒してしまうのも爽快だったし、
 敵の大ボスのヘンタイぶりと孤独、屈折を描いて、不気味さを煽るのも、単なるゲームキャラクターとは違うって感じでは、あるまいか。
 あっでも、ゲーム化はしてほしいなあ。
 キャラクターにドニー兄貴を選んで、暴れにあばれまくりますよぉ。

 武荘の馬を放つシーンでもやっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで、白馬が駆け寄って来るシーンを連想してしまいました。
 それにしても長すぎたよ、このエピソード。来福があきらめた時点で、さっさと本筋に戻ってほしかった。
 あと、もう一つ、ええいだらだら描写してないで、簡潔に抑えて次進め!と怒鳴りたいシーンがあったけど忘れた。
 記憶細胞から抹消しました。

 アクションは、京劇系のド派手な振り付けが主でしたね。このビュビュン! 決めポーズをピタッッ!のリズム感は、現代っ子のトニーさんには無理なんでした。京劇もしくは観せるためのカンフーの訓練をみっちり受けていないと。
 ただ、時々カメラが、猛スピードで展開する(香港映画お得意の早回しはしてなかったと思う)ドニーさんらのアクションについていってなかった。
 あさっての方角を撮影していたのは、わざとか?
 撮影スタッフの一人に「ブエノスアイレス」などでクリストファー・ドイルの撮影助手を務め「2046」などで一人前に成長したライ・イウファイ黎耀輝さんの名前があったのですが、彼のせいではないと信じたい…。

 この物語は結局、満人と呼ばれた少数民族が支配する清王国と、政権に刃向かい「反清復明」をスローガンに漢民族の前政権の復活を願った後の秘密結社・天地會との争いが背景にあるわけですから、トニーファンとしてはどうしてもテレビドラマ「鹿鼎記」を想起してニヤニヤせずにはいられない。
 友情を誓った少年康熙帝と、命の恩人・お師匠様のいる天地會の間で若き日のトニーさん、いや袁小寶くんがおたおた、おろおろする大冒険は、もうちょっと後の話でしょうけどね。
 それにしても、愛新覚羅溥儀のご先祖様なのに、マイケル・ウォン王敏徳が親王役では、バタ臭すぎやませんか?
 もうちょっと京人形風の、目鼻口が上品で小さめの一族なはずなのに。
 やはりTVB版「鹿鼎記」で、康熙帝をやはり濃い顔のアンディ・ラウ劉徳華が演じたので、そのイメージの踏襲でしょうか?
 
 勇壮なBGMと映像のシンクロに酔い、緩急自在なアクションのリズムに気持ちよく身を任せ、
 スカッとした気分で映画館を出て、過ぎた時間に仰天したわけですが(夜の早い神戸では、飲食店が開いてないよー!)、
 ……
 …………??

 やっぱりよく考えれば、穴だらけ…_| ̄|○
 さすがに、映像でしか発想しないツイ・ハークだ。

イツキ? ナツキ?「頭文字D」吹替版鑑賞

頭文字Dディスプレイ

アカデミー賞を買った男―夢を追いかけて映画バイヤーになった 昨日の昼休みに同僚に見せてもらった雑誌「クロワッサン」に「頭文字D THE MOVIE」の仕掛け人、梅原健さんが紹介されていました。
 現在、某音楽会社・エンタテインメント映像事業本部に属しているそうです。

 ほーーー。「アカデミー賞を買った男―夢を追いかけて映画バイヤーになった」という著書が出版されているのかあ。読もうかな。米国アカデミー賞作品の買い付けの話ばっかりだったら、立ち読みにしておくけど…。
 
 香港でブイブイ言わせているワニマーク服屋=メディア・アジアと某音楽屋のコラボレーション、今後も続くんでしょうか?
 「互いにインスパイヤしつつ、アジアを股に掛けて儲かりましょうなー」と握手してるんでしょうか?
 それも日本で公開される香港映画の本数を増やし、気鋭の監督に資金繰りの苦労をさせないために致し方なし、でも「カネは出すけど口は出さない」でなるべくいてね、と思いつつ、某音楽会社には決して見向きもされないだろうトニー出演の佳作小品をぼそぼそっと愛でたい、マイナー志向のnancixであった。

 レディースデーだった昨夜、やっとこさ、「頭文字D」吹替版を鑑賞できました。先週の水曜は、残業が長引いて到底無理だったもんなあ。
 なかなか面白かったですよ。字幕を読む一手間がないだけ、画面の隅々、台詞の一つひとつに気を配れて。
 吹き替えだと、ジェイの「もごもご…とつとつ…」感、ちょっと薄れちゃったかな。
 アンソニーおやぢと阿Bおやぢが、一層魅力的に思えました。
 だってアンソニーおやぢの声、磯部勉さんなんだもんなー(はあと)!
 声質は渋いのに軽快さを併せ持ち、おとぼけと真剣味が絶妙のさじ加減。
 磯部さん、チョウ・ユンファの「狼たちの絆」「ハード・ボイルド」吹き替えだとやや声質が重すぎたけど、今回のアンソニーおやぢなら、ピッタリでした。
 字幕版との違い、間が空きすぎてあんまり覚えてないけど、気が付いたのは、アンソニーおやぢの台詞。
 泥酔爆睡から目が覚めた後、ジェイに「学校行く」と言われて、字幕だと「休みだろ?」だけだったのですが、「休みだろ? カラダ売りに行くんか?」と言ってた。

 をいをい、オヤヂぃぃぃぃぃ。
 普通、息子にそんな心配しないぞー。
 息子がデビュー当時のニコラス・チェーやショーン・ユー君のように美少年なら、大いに心配だが(いや、その…)。

 そして、チャップマン・トゥのオーバーアクションも、日本語台詞だとややマシかな?
 「ガンガッテー、阿海!」が、ちゃんと「ガンバーレー、拓海!」になってて、違和感払拭。
 どういうわけか、鈴木杏ちゃんのアフレコがややぎごちなかった。口パクに合わせて声を出すって、やっぱり経験の浅い俳優さんには難しいんですよね。

 エンディング・テーマ、やはり安っぽいロボットアニメ(&巨乳美少女)のテーマソングみたいで、違和感ありまくりでした。
 拓海が失意のずん底にいる時に流れるのも、青臭い女の歌声じゃなくて、ジェイの生声じゃないとぉぉぉぉ。

 何よりハッとさせられたのは。

お子さま連れには不向きです「チャーリーとチョコレート工場」

映画館前の張り紙。レディースデーで満席でした ウィリー・ウォンカはマッドデンティスト(歯科医)の父親との不和というトラウマ持ちの、アダルト・チルドレン。地図にも載っていない南海の孤島ウンパ・ルンパ王国を侵略し、酋長(政治的に正しい表現なら民族統括リーダー)を籠絡、先住民族をたぶらかして独自文化を破壊し、さらには奴隷として米国に密入国させ、自分の巨大チョコレート工場に閉じこめ、日夜絶え間なく働かせて身の回りの世話もさせ、搾取し、巨額の利益を得ているのであったーーー!
 そのいまわしい工場の秘密を暴くべく、全世界(政治的に正しく言うと欧米のみ)から集められたちびっ子レンジャー5人! それぞれに特殊技能を持つ彼らが、ウォンカの仕掛けた罠だらけの危ないチョコレート工場に侵入し、囚われの身のウンパ・ルンパ一族を解放して見事生還することができるか!
 清く正しく少々おバカな、宇宙を駆け抜ける戦士たちのテーマはただ一つ!「キスの記憶……」って、そんなもんは放課後の教室か下校中の土手でやりなさい! 全面宇宙戦争中に恋人たちだの何だの、不謹慎な!

 …失礼しました。どうもガンダムむにゃむにゃの予告編と話が混同してしまったようです。
 「チャーリーとチョコレート工場」は、そのような戦隊ものではありません。あんなに小学校の図書室にあった児童書という児童書を貪り読んだのに、「怪盗ルパン」シリーズ、「シャーロック・ホームズ」シリーズ、「飛ぶ教室」「長靴下のピッピ」に「赤毛のアン」「ふたりのロッテ」「さすらいの孤児ラスムス」「ミオよわたしのミオ」「秘密の花園」「ナルニア国物語」「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」「点子ちゃんとアントン」「紅はこべ」と何でも手当たり次第に読んだのに、この映画の原作を読んだ記憶がさっぱりないもんで。申し訳ありません。

 ウィリー・ウォンカは支配欲にかられた搾取者でも、ネバーランドに美少年を招き寄せて「寂しいから、人肌が恋しいから一緒に寝ようよ♪」とせがむピーターパン・シンドロームの大富豪青年でもなく、単なるお菓子おたくで、接触恐怖症で、潔癖で、引きこもりなので時代錯誤で、子どもにムキになって張り合う精神年齢ヒトケタの、だけど内心は小心者で孤独な"裸の王様"だった。
 ……ジョニデ、切なくも、かわええ……(よだれ)
 「ネバーランド」より、こっちの方が断然いいですよ、「月イチゴロー」で「ジョニデがイッちゃい過ぎ、ファンでも引くでしょう」とのたまわったゴロちゃん! ジョニデファンならこれしきのことで引きません! がぶり寄り・押し倒しです!
 だいたいねえ、ゴロちゃん融通きかな過ぎ。アンソニー・ウォン黄秋生の日本公開作だけでも全部制覇してごらんなさい! 人肉饅頭やエボラシンドロームが趣味でなければ、もう少し品よくトニーさんの全日本公開作制覇(もちろん「大英雄」含む)でも。あなたの人生観・俳優観大きく変わります!

 そしてウンパ・ルンパは「♪森の木陰でドンジャラホーイ」「♪ハイホー! ハイホー!」の、三角帽子をかぶった可愛い小人さんでもトロールでもなく、天国から呼び戻された故・荒井注(大好きでした)クローンの軍団としかいいようがありませんでした。

 その故・荒井注ウンパ・ルンパ軍団の、七変化ダンシング・パレードときたら!

 抱腹絶倒!

「四月の雪」は、ありえなくもない。

 ホ・ジノ許秦豪監督最新作「四月の雪(外出)」の完成披露試写会に行ってきました。
 ブッキーの「春の雪」じゃないですよ。韓国映画の「四月の雪」です。
 すでに映画館には「春の雪」のポスターも張ってあったけど。
ロッテリアも応援、うらやましいねえ
 最近はすっかり成瀬巳喜男ワールドにハマってしまい「よくってよ、知らないわ」「まあお母様ったら、いやァねえ」「わたくしの前から消えて。どうか二度と現れないでちょうだい!」と、脳内で美女の美しい日本語がこだましております。
 ですから"メロドラマ上等、市井の人々の繊細な情感おおいに結構"。ヴィスコンティ好きのヨドガワナガハル氏が「まあ、あんな貧乏たらしい映画なんて」と眉をしかめても全然平気な気分です。
 いや、ホ・ジノ監督作品は貧乏たらしくなんかない。寡黙だけど豊穣、日本人にも充分に伝わる心象風景とよーく練られた脚本が酔わせてくれる、大人向けの佳作小品です。
 できればシネカノンやシネリーブル、単館系ミニシアターで、しっとりと、味わいたい作品なのになあ。見終わったら女の友人と、赤ワインとチーズでしみじみと余韻を味わいたいのに、なんで独りでビールに餃子なんだ、トホホ。

 完成披露試写会なのに、なぜか客席には、いつものスーツ組のおっちゃんらや年中クールビズのマスコミ系が少なく、50or60歳代の女性の皆様が多い。案内状が業界人の奥様連に回ったのか。皆さん華やいで、にぎやかなことでございます。
 上映前解説に登場したのは、我らが大阪が誇るCINEMAコミュニケーターの森川みどりさん。さすがにソツなく、ユーモアもあり、安心して聞けます。
 韓国では日本よりも早い9月9日公開予定なこと(実は公開が7日に早まったそうですが)、不倫をテーマにしているという理由でR-18指定を食らっていること。アジア9カ国・地域で公開が決まっていること、日本では前売りが18万枚はけているので、ヒット間違いないということ。
 主人公役は当初、職業が定まっていなかったが、キャスティングが決定してから、監督がペ・ヨンジュンの光に対する感覚の鋭さを見抜いてコンサートの照明技師にしようと考え出したこと、そういえば監督の「八月のクリスマス」では写真館の主人、「春の日はすぎゆく」では録音技師が登場し、その鋭い感覚が劇中で見事に生かされていましたっけということ。
 また、監督は現場での直感であれこれ決めていくタイプ(王家衛に似てる?)だが、ペ・ヨンジュンは事前に脚本をじっくり読み込んで周到な準備をしたがるタイプ。当初はペースが合わず、ペ・ヨンジュンは3kg痩せてタバコの量が増えたということ…。

 脚本は元から台詞が少ないのですが、特に主演の2人が酒を飲むシーンでは、脚本には台詞が一切無し。監督の指示だけで、ごく自然に言葉が交わされたそうです。成瀬巳喜男監督が、バシバシと脚本に赤線を引いて削ってしまう、「浮雲」でも危うく屋袖島ロケを全カットするところだった…という逸話を連想させてしまいました。
 これはプレスシートにも書かれていないことですが、ペ・ヨンジュンの眼鏡は監督が選んだポール・スミスのものだそうです。レイバンでなくていーのかしらん(^_^;)
 これらのことを森川さんの解説で知ることができ、とってもオトク気分。

ランダム・ハーツ コレクターズ・エディション ところで、プレスシートや公式サイトであらかじめ頭に入れていたあらすじは、ハリソン・フォード主演・シドニー・ポラック監督「ランダム・ハーツ」(99)+「花様年華」(00)か?というものでした。
 「ランダム・ハーツ」では、飛行機墜落事故で出張旅行中の妻が死亡。しかし出張というのはウソで、実は隣席で死んでいた男と夫婦と偽っての不倫の旅だったと分かり、夫はとりつかれたように妻の足取りを追います。「二人の関係はいつからだったのか」…真相を探るうち、妻の不倫相手の未亡人と出会い、いつしか恋に落ちるのですが、フォードはInternal-affairs investigation=ワシントンD.C.警察の内務調査室の巡査部長、未亡人は下院議員。互いに寡夫・寡婦とはいえ、シドニー・ポラックだけあって、政治だの選挙だのが絡んで一筋縄ではいかない。
花様年華 「花様年華」では60年代のモラルと世間体が、隣人同士・間借り人同士の2人をがんじがらめにする。日本に駆け落ち?した伴侶を携帯電話で呼びだして「どういうつもりだ、え?」となじることも不可能。せいぜいが手紙のやりとり、ラジオでの曲のリクエストしか連絡手段がない。
 そういえば「四月の雪」、当然BGMはピアノソロやバイオリンの調べなのですが、ある曲のイントロのバイオリンパートが、「花様年華」BGMにかなり似ていました。

 「八月のクリスマス」以来ずっと、ホ・ジノ監督と組んでいる音楽監督の作品なんですがねえ。

 「四月の雪」は、現代劇です。製作会社のロゴが出終わった後、スクリーンは闇に覆われます。その闇を切り裂くかのように鳴り響く、電話の呼び出し音。
 この演出、ラストまで必ず覚えておいてください。いいですね?

 登場したのは眼鏡をかけた、おなじみヨン様カットの照明技師。すでに暗ーーーい、悲痛な顔つきでうなだれてます。

 もしもし、そこはコンサート会場ですよ? 本番中ですよ?
 電話を受けたのは、彼なんですか?
 その説明もなく、技師は部下に「仕上げを頼む」と言い置いて出ていきます。

 あなたが今夜の照明監督でしょうにーーー。

 車は、雪の夜道をひた走ります。
 電話の内容は、照明技師の名前は、まだ観客に明かされません。

 唐突に、涙ぐみながら寒さをこらえて座っている若い女性の横顔が映し出されます。
 そこは、病院の手術室前。
 照明技師は、女性の座っているベンチにいったん座りますが、また立ち上がって携帯電話をチェック。女性は視野にも入ってないようで。
 ようやく、技師は病室に入ることができます。開放型の集中治療室なのか?
 顔を打撲で痛々しく腫れ上がらせ、昏睡状態の女性。
 所在なくて、ただただその手を握る、照明技師。

 集中治療階の看護婦詰所前で、夜明かしした技師。部下に電話で経過報告し、次のシーンは警察署内のようです。先にあの若い女性ソヨンが来て、事故処理担当の警官と話しています。
 技師の妻スジンと、ソヨンの夫ギョンホは事故車の外で発見された、と警官は説明します。
 大破した乗用車、田畑に横転したトラックの現場写真。警官に「スジンさんは酒を飲んでいました」と聞かされて思わず「妻は酒が飲めません」と反論する技師。「しかし酒気が検出されたのです」と警官に言われ、さらにショックを受けます。
 事故現場から回収された遺留品を、技師とソヨンは取り分けなければなりません。
 コスメ各種、何らかのチケット(ホテル宿泊予約券かなあ?)2枚、小型デジカメ……そして、2人とも手が出せない、コンドームの小袋。

 嗚呼、不倫は決定的。

 技師がさっとコンドームの小袋を取って、席を立ちます。
 デジカメをそっと手に取るソヨン。

 2人は事故車の中も確かめます。
 転がったハイヒールの片方。
 フロントミラーに引っかかった、ペンダントだかマスコットだか。
 
 ソヨンは食も進まず、デジカメに入っていた動画を見て(観客には声しか聞かせません)打ちのめされ、トイレに閉じこもって目を閉じます。
 集中治療室で、昏睡状態の夫を見つめる彼女の心中、いかばかりか。

 一方、技師は妻の勤め先と思われる「サイデザイン事務所」に電話します。「出張中のスジンのことで」としか言えない、名乗れない彼に、事務所の女性スタッフは「彼女は休暇中ですが」と不審そうに告げます。妻に嘘をつかれていたと、またもショックを受ける技師。
 病室には、妻の父、つまり技師にとっての義父がやって来ました。
 変わり果てた姿の娘に、義父は声も出ません。
 男2人で食事をしますが、義父には「出張中の事故」としか説明できない、技師です。

 翌日、ソウルに戻り、妻の携帯電話のメールを見ようとしますが、パスワードがかかってきて見られない。カッとなって投げ捨てても、そりゃ仕方ない。
 職場に戻ると、上司(舞台照明プロダクションの社長?)らしい男に「おまえが昨日職場放棄したことで、企画会社と気まずいことになったんだ」と、しばしの休養を言い渡されます。ここでようやく、照明技師の名前がインスだと解る。
 やるせなーーーい。
 では、と妻が入院している総合病院の横の「サムン・モーテル」に部屋を取ると、斜め向かいの部屋にあのソヨンが泊まっていた。
 彼女の部屋番号は??? 思わずチェックですよ!
 2046ではありませんでした。
 しかし、210号室でした。ニアミス。
 硬い表情のソヨンに、インスはきっぱりと「二人は"仕事でここに来た"と、話を合わせてください」と言います。
 このあたりの細かなエピソードの積み重ねが、素晴らしい。

 「花様年華」の二人は、レストランで差し向かい、ネクタイとハンドバッグの話をします。
 「四月の雪」の二人は、喫茶店で差し向かい、伴侶の携帯電話に記録されたメールを互いに読みます。(どうやってパスワードを??)
 絵文字?入りで「昨夜は頑張りすぎたかしら?」なんて内容です。ゲスです。下流です。裏切られた伴侶としては、言葉も出ません。
 ソヨンに「夫のものではありません」と返されたデジカメの動画を、観客はインスと一遜にモーテルの部屋でかいま見てしまうことになります。ベッド上で、下着姿ではしゃぐ恋人同士。
 インスはたまらず、トイレで吐くのです。
  
 何も知らず、眠り続ける病床の妻。
 その傍でうなだれ「…死ねばよかったのに」と呟くインス。

 「八月のクリスマス」で諦念をもって自らの死を待っていたはずの青年が揺らいだのは、親友との酒席で、のことでした。飲めない酒を無理に飲み、泥酔して「俺、死ぬんだ」と冗談っぽく打ち明ける。あのハン・ソッキュの哀しい姿は、決して忘れられません。
 「四月の雪」でも、ペ・ヨンジュンは飲みます。わざわざモーテルまで訪ねて来てくれた(でもロビーの自販機のコンドームについつい見入ってしまう)気のいい部下を相手に。酔って絡みます。
 韓国男の絡み酒はやっかいです。部下は「帰れ、帰ってくれ」と言われて帰れるもんじゃありません。部下が視野に入らなくなった途端に号泣すんなよ、んもう。

 酔ったままソヨンの部屋(間違えてる、間違えてる、彼女はその隣だ!)のドアを叩き「開けてください」と呼ぶインス。あああダメだ、「開門ーー!、ホーイムーーーーン!」とすっとんきょうな声で叫ぶ「2046」の周慕雲さんの面影がぁ。
 不埒な周慕雲と違い、インスは床に転がって寝入ってしまうだけなんですが。
 翌日、二度も頭を下げて「すみません」と謝る姿は、確かに可愛いのだ。
 恐縮するとやたらにペコペコ頭を下げるのは、日本人だけでなく韓国人もやることなんですかね?

 さらに、インスとソヨンの二人には、巻き添えを食らって亡くなった地元の男性(正面衝突したトラックの運転手?)の葬儀へ、弔問に行かねばならないという厳しい試練が待ち受けていました。

 農村地帯の風景は日本とちっとも変わりませんが、被害者の兄がヨン様に跳び蹴り食らわせようとするから、いやはや、韓国人の情念は、すごい…。

 弔問帰りの車で、こらえきれず車を降りて号泣するソヨン。言葉もかけず、傍にも寄らずに黙って暗くなるまで彼女を待つインス。ハリウッド映画なら安易に抱き寄せてしまうところです。
 次には、車内で泣き疲れて眠る彼女をはばかり、車を降りてタバコを吸うインス。
 こんな気配り万全男が、韓国に本当に存在するのか? ちょっと信じられない。
 
 悲しみとひそやかな怒りを抱え、それぞれのやり方でまぎらわしつつ、看護の日々を送る2人。駐車場で雪玉をブロック塀にぶつけ続ける、ちょっと少年っぽい(ファンのハートを直撃?)インスの姿を見下ろすソヨン。彼女に気づいて照れ笑いするインス。
 それが、二人が親しく言葉を交わすきっかけになりました。
 どうやら、インスの妻とソヨンの夫は同じ大学の写真サークルにいて、結婚前から知り合いだったらしい。インスは舞台写真を撮りに来た彼女と知り合って恋愛>結婚、ソヨンは学校卒業後に親の勧めで見合い結婚。専業主婦です。
 眠り続ける伴侶は、結婚前からだらだらと関係していたのか? 結婚後に偶然再会して焼けぼっくいに火がついたのか?
 不倫の進行は、動機は、この映画では問題にされません。
 「どちらから誘いかけたにしろ、もう始まっている」(From 「花様年華」)のですから。
 「主人が目覚めてくれれば…せめて言い訳が聞きたい」と溜息をつくソヨン。
 一方、インスは「奥さんが目覚めたら?」とソヨンに聞かれて「復讐します」とぽつり。

 この台詞、後々の彼の決断をひも解くキーワードになります。
 「不倫しましょうか? 2人を驚かせるの」と冗談めかして言うのは、女の方です。

 ありえるのか? こんなに重たい状況において?
 ええ、ありえるでしょう。
 成瀬巳喜男監督作品「乱れ雲」では、交通事故の被害者の妻と、加害者の青年でさえ、深い悲しみと生き抜く苦労の中で、いつしか情を通じてしまえたのですから。(肉体関係は当時の日本のモラル上、すんでのところで思いとどまるのですが…)

 生き死にで左右されたわけではない「花様年華」がああもややこしかったのは、ひとえに内向的なインテリ・周慕雲が仕掛けた"高等遊民的ゲーム"のせいです。互いに互いの伴侶を演じ、または"別れの予行演習"をするという入れ子構造で、回りくどく本音を吐かせ真情を引き出そうとする。まるで映画監督が俳優からよりよい演技を引き出そうとするかのように。そのために、ますます演技と真意の違いが見えなくなる。口数少なく一見穏やかそうで、実は心の奥底に虚しさと復讐の念をギラリと光らせつつ、一方では子が母の乳を求めるように人恋しさに飢えている男だったから、観客も人妻も大いに惑わされました。

 しかし、ホ・ジノ監督はそこまでややこしくはしません。台詞ではなく、心のひだを丁寧に、丹念に、誰にでもわかりやすく描写することで、伴侶に裏切られた男女の心がどう障壁を越えて接近し、相手の何にどうしようもなく惹かれていくかを表現します。国際映画祭参加狙いではないので、これはこれでいいのではないかと。
 日本語字幕(根本理恵さん)も、物語の格調を保つのに寄与しています。つまり、インスとソヨンは徹底して敬語遣い、ですます調を貫き通すのです。
 肉体的に結ばれたら、途端に馴れ馴れしくなるのが日本の男です。そりゃあーんなこともこーんなところももう知っちゃった仲なんだから、他人行儀にすんなよという気持ちも解るんですが、寝たからって「オマエはもうオレのもん、オレの言いつけを聞け」的態度の勘違い野郎には時々頭にきます。そこへいくと、インスは事故直前に妻が不倫旅行を楽しんだらしい竹西楼(ジュクソル)のリゾートホテルに行き、ソヨンと結ばれた後も、礼節をわきまえ、他人行儀を崩しません…あれ? まあそりゃ他人なんですが。

 そのくせ、妻の父にいきなりモーテルに訪ねて来られて、慌ててバスルームにソヨンを隠し、カギを忘れた造りして駆け戻ると、贖罪の思いをありったけこめて抱きしめる。浮気とかちょっかい出すなんて軽い気持ちではないのです。
 じゃあ、どうするか。

 そうこうしているうちに、昏睡から醒め、意識を取り戻すインスの妻。意識が戻らないまま、身体機能が低下していくソヨンの夫。
 集中看護階から一般病室に別れわかれになり、せっせと看病する互いの姿を窓の外からかいま見て、淋しさを噛みしめるインスとソヨン。

 この"覗き見"も、効果的に使われています。覗かれる側は、別に日本語を練習しているわけでも、ベッドをギシギシ言わせているわけでもないですよ。
 彼らが竹西楼のリゾートホテルで再び体を重ね、帰りが遅れたその日、ついに明暗が分かれていく。
 二人の選択は…決断は…?
 それは、見てのお楽しみってことにしましょう。

 切ないぞ。

「姑獲鳥の夏」は凝りすぎ。

姑獲鳥の夏PerfectBook 夏風邪らしくて、寒気はするわ、鼻水出るわ、上唇にできものができるわ、見られたもんじゃない外見なんですが、1日の「映画の日」に出歩けなかったので、せっかくのレディース・デーの3日に「姑獲鳥(うぶめ)の夏」を見て来ました。
 ようやく懸案事項の一つ、達成。

 今度は昼休みに、チケット買いに走って。でも真ん中より1つ前の列か最後列しか空いてなかったよ。
 定時に飛び出して、それでも入場がギリギリセーフだったんで、空腹しのぎに生ビールと…フライドポテト買ってしまった…。ざんげ。

 客席は女性だらけでした。多分、原作のコアな客は封切り直後に見てるだろうから、出演者目当ての皆さんかなあ。
 隣のキャミソール重ね着にミニスカートのギャル(死語)は「HERO」も「ムサ」も何とか(「グリーン・デスティニー」じゃないかな?)も見たけど「LOVERS」の方がよかったと言ったら、カレシ?だか映画通の友だちだかに、くそみそに言われたとぼやいていました。まあ「LOVERS」にも突っ込みたいところはいろいろあるよね、と相棒が返していました。
 ……ん、いや、黙って聞いてましたよ。ははは…はは。

 「姑獲鳥の夏」で何より言いたいのは、
 久々に ラ ス ト シ ー ン で 失 笑 が 洩 れ る 邦 画 を見ましたよ
 ってことでした。
 ……この世には、不思議なだらけです。
 なんでまた、こんなダメ押ししちゃうかなあ。
 制作者は、試写会や初日舞台挨拶有り以外の映画館で、一般観客の反応をちゃんと見たんだろうか? その上で、他の京極堂シリーズも同じスタッフで映画化するかどうか決めてください…。あ、製作には「オペレッタ狸御殿」を作ったところと同じ事務所の名前が…(苦笑い)。

 まあ、nancixは同じ実相寺昭雄監督作品の映画「帝都物語」(88)でも、魔人・加藤保憲=嶋田久作の他はキャスティングに文句があった奴なので(特に狂言回しの辰宮兄妹がよくない! 背徳やエロスのかけらもない石田純一に姿晴香って!)、実相寺監督の演出とはあんまり相性がよくありません。「ドグラ・マグラ」(88)を監督した松本俊夫の方が…向いてたかも…。
ドグラ・マグラ んーーーなんで自分は、「ドグラ・マグラ」での絵巻物での女体腐乱の説明や精神病院の中庭に巨大仏の頭がゴロンと転がってるシュールさは許せて、紙芝居(あんな題材を子どもに見せちゃいけません!)やカストリ雑誌のイラストでの猟奇のお茶濁しや実相寺監督の作り物っぽさは受け付けないんだろう? これはとっくりと考えるべき問題。
 とにかくツイ・ハークといい、特撮好きの映画人に男女のセクシャルなどろどろした情念をねちっこく演出させるのは難しいのかも…(暴言)。ところがこの「姑獲鳥の夏」からドロドロの情念を取り去ると、単なる「ウンチク野郎の横溝正史的名探偵ごっこ」になっちゃいますから。

 ……あやうくなるところでした。京極堂はフケの飛び散りそうなもじゃもじゃ頭だし(誰かが明智小五郎や金田一耕助らが、なぜクセ毛でもじゃもじゃ頭なのか、の秀逸な謎解き論評を書いていた気がする)、田中麗奈の服装が小林少年してたし。チラシなどのビジュアルは、かつての角川文庫の横溝正史シリーズ表紙を彷彿とさせる無気味な色使い。
顔色の悪い京極堂・堤真一
 「名探偵 みんなを集めて さてと言い」そのままの全員集合があったし。あ、この謎解きシーンは原作にもあったっけ。

 おまけに、突拍子もないスポットライト多用。
 ライトを当てられた人物が、カラオケマイク持って歌い出すのか、ミラーボールが回り出すのかと杞憂したぞ。イマドキ、小劇団の舞台劇だってもうちょっと自然なピン当てするんじゃないだろーか。

 せっかくこれだけのキャストを集めたんだから、撮影は正攻法で、奇をてらわずに、俳優のアップと絡みの化学的作用の魅力で、勝負した方がよかったんじゃないだろうか。
  上半身すっぽんぽん?の女優が熱演して姑獲鳥が飛び回るのも、一瞬のイメージだけで充分だったなあ。せっかくの特撮の腕は、妊娠20カ月の妊婦の腹が割れる!シーンに集中させて、炎上シーンはもうちょっと短く切り上げた方が(炎が建物と比べると大きすぎて、ミニチュアばればれじゃん)と、観客に思わせなかったんじゃないだろうか。映画「バックドラフト」「カル」もあったわけだし、大火災現場の衝撃的瞬間の映像も、もはや現代の観客は見慣れているわけで。

 主役が坂東玉三郎と「天守物語」も演じたことのある堤真一だから、長台詞で舞台劇っぽくなるのは仕方ないけど、それならいっそニナちゃん蜷川幸雄に演出してもらいたかったなあ。粘るだろうなあ、NG50回!とか=原田知世に。
 実相寺監督、全然NG出さずに「さっさと撮り終わって、いい酒を飲みましょう」なんつって、とっとと撮り終えたみたいだもんなあ。粘りすぎる王家衛をどやしてやってください、監督ぅ。

 知世ちゃんがこの1人2役に挑むと知ったときは、おおっ女優開眼! ついに汚れ役も辞さずか!と思ったものですが、……あかんかった…。いつもの、声の細ーい、表現の薄い「知世ちゃん」でした。
 スリップ1枚で松尾スズキを押し倒してまたがってほしかった。そこに飛び込んでくる医学オタクな気弱な夫に、目を吊り上げて激しく食ってかかってほしかった。
 15歳の少女らしく可憐に小首をかしげ、次の瞬間妖艶に色目をつかって「遊びましょうよぉ」と学生・関口巽にしなだれかかってほしかった。手を取って、無邪気に自分の体をすりすり撫でさせてほしかった…のに…。10数年前の毬谷友子だったら、令嬢の天真爛漫さと欲求不満の人妻の淫蕩さを、両方演じられたかなあ。

 でも関口巽も、香港スターを見慣れた目にはいまいち表情に乏しい永瀬正敏だしねえ…萩原聖人の方が…いや、いっそこれがトニー・レオンだったらなあ。10代少女へ無体なことをしでかしたと、おどおど、びくびくっ、深刻に悩んで 鬱病、対人恐怖症、多汗症、赤面症、失語症を患い、悲痛でトホホで可哀想で思わず男も女も守ってあげたくなっちゃうだろうなあ。アンディ・ラウ京極堂中禅寺秋彦にさりげなくかばわれて、元子爵の坊ちゃまで薔薇十字探偵社のレスリー榎木津礼二郎探偵に、ズケズケ言われてほぼ壊れかけの、30代前半トニーさんが見たかった…。などと。
 …で、フランシス・ンー呉鎭宇さんはどの役がいいだろう??

 嗚呼、なぜ日本にはスタンリー・クァン關錦鵬監督がウィリアム・チョン張叔平美術監督がいないのだろうか。彼らが手がけていたら、もうちっと…。だってせっかく日本の人気男優がこれだけ…(小声:同人誌もホイホイ作れそうな面子なのに…)。

 白タビはいてる猫、柘榴ちゃんが何より救いでした。
 もうだめー、猫にゃんの姿見てるだけで表情ほころびまくり。きゃわいい、きゃわいい。
 ええ、発情期のオス猫ちゃんは赤子そっくりの鳴き声出しますが、全然不気味なんかじゃなくてよ? 68歳過ぎても生き延びたら、化け猫ババアになる予定のnancixの繰り言。

 脇役に、「赤いシリーズ」ではいろんな敵役に扮して山口百恵と三浦友和をいじめていた原知佐子が出てましたね。って、ええ?? 原知佐子さんが実相寺監督夫人だったの! 初めて知った! ネットって凄い! じゃあひょっとして実相寺監督が書いた自伝的小説「星の林に月の舟 怪獣に夢見た男たち」に出てくるスクリプターの則子のモデルなの??…いや、あれはフィクションか…。三上博史が主人公を演じたドラマ版「星の林に月の舟」では、南果歩が則子を演じてたなあ…。

 久遠寺家に代々伝わる秘薬研究をしつつ、令嬢に性的いたずらを加えていたとされる人非人・菅野博行医師を演じていたのが、よもやあの特定非営利活動法人「阪神淡路大震災1.17希望の灯り」代表・堀内正美さまとは。はーっ! ビックリ。公式サイトにもパンフにもお名前がないような…?? あったっけ?

「バタフライ・エフェクト」はアンディなら演れそう

 大阪・梅田ブルク7初体験の職場の同僚にせがまれて「バタフライ・エフェクト」を見てきました。
 デミ・ムーアとアツアツだと伝えられつつ、そのゴシップのせいか幾つもの大役を逃していると聞く、美男アシュトン・カッチャー主演作です。
 とっても見覚えがあるなあ、と思ったけど、典型的ファッション雑誌を飾る有名ブランドモデル顔なんですよね。「CUT」の広告ページにも出てきてたかも。
 タイトルは確か「北京で蝶が羽ばたけば、ロサンゼルスでハリケーンが起こる」というカオス理論の法則に基づくものだったはず。
 しかし北京の蝶、何万匹といそうなんですが…。
 ブエノスアイレスでファイが(恋しい、会いたい)と思えば、世界の果てのチャンから台北の屋台街の実家に送られた写真が封筒から出されて店に飾られる、というようなもんなんでしょうか(絶対に、全然違う)。

 パンフレットを買わなかったので、アシュトン・カッチャーとヒロイン(ソバカスだらけ、あんまり可愛くない)以外の俳優名などが解りません。特に主人公のパパ役。まあそれはいいや。
 何より哀しかったのは、"ペドフィリア・ヘンタイ・隣のおやぢ"を演じていたのが、エリック・ストルツだったこと…。
 1961年生まれ、アンディ兄貴と同い年ですよ?
 「マスク」(84)でルックスに頼らない演技派若手としてもてはやされ(だって、容貌に障害がある難病少年の実話の映画化だから! ジム・キャリーの不気味な緑マスクじゃないから!)、「恋しくて」(87)ではヒロインの憧れの君、「シングルス」(92)にも出た美形だったのにー!
 そりゃ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズには、抜擢されて撮影にまで入りながら、翳りあるルックスや演技がどうも合わないとおろされ、当時はのーてんきでいかにも楽観的に見えたマイケル・J・フォックスにとって代わられてしまったけど…。いーじゃないか、憂愁があったって! 透き通った瞳がゾクゾクするほど怪しくても!
 「キリング・ゾーイ」(94)でも驚かされたなあ、なんせ当時夢中だったジャン・ユーグ=アングラードとの共演! しかもただの関係じゃなくて、ドラッグ漬けのジャン・ユーグ・アングラードが惚れてほれて、娼婦のジュリー・デルピーと張り合う男の役!

 ああそれなのに、卑屈にへらへら笑いながら「ロビン・フッドの結婚式のシーンを撮ろう…花嫁と花婿はあーんなこととかこーんなことをするんだ…さあ、お風呂と同じように服を脱いで♪」ですかっっ!
 ………_| ̄|○

王家衛耽溺者が見た「バッド・エデュケーション」

 何だか映画づいてるヒマな今週。レディース・デーに「バッド・エディケーション」を見てきました。
 折しも今年も始まったカンヌ映画祭の2004年度のオープニングフィルムに選ばれ、遅刻未完成「2046」と共に(?)話題をさらったんですよねえ……いやぁ、やっと見られた…。せっかく6時台の上映に間に合ったら「お立ち見になります」と言われて断念、食事してネットカフェのヤンを決め込んで=リクライニングシートで仮眠=いました。
 そして午後9時からのレイトショーなのに、ほぼ満員ですよ。ほとんどが単独行の女性。映画が始まる前からけたたましい笑い声をあげていたやや年上女性3人組が、異様に思えるほど。

 みなさん、快進撃を続けるガエル・ガルシア・ベルナル君のファンなんですかねえ。監督作品のファンなんですかねえ。

 いやしかし、王家衛作品に耽溺してきた者としては、見てよかったのか悪かったのか、解らない。
 「キサス・キサス・キサス」といえば、「花様年華」のトニマギが、スローモーションで並んで夜道を去って行くシーンにぴったりなBGMのはずじゃないですか! そう刷り込まれてますよもう!
 それなのに…髪をアップにして、流し目で歌う女装のガエル君のシーンが閃光のように脳裏に割り込んで来て……あああああ_| ̄|○
 白ブリーフといえば、「恋する惑星」の「ブエノスアイレス」のトニーじゃないですかぁ!
 なのにガエル君の罪作りな"男じらし”(字幕:松浦美奈さん)の、白ブリーフ一丁での水泳シーンが……あぁぁぁあ!

 ジャン・ポール・ゴルチェの衣装といえば、nancixにはレスリー・コンサートなんですよ!
 あの衣装を見事に着こなしたレスリーの、今にして思えばなんと精悍&可憐だったことか。
 それなのに…ガエル君のジャン・ポール・ゴルチェ衣装、シャラポワの付け○○どころじゃないんですよ! 肌色ラメラメの上に、全部付きなんです、全部!
女装ガエル君、3点セット全部付きドレス着てマス

 "女装癖をお持ちの方々に、この一枚でお得な3点セット"なんです!
 その嗜好のない者にとっては、悪趣味にもほどがありますよ…。
 あぁあぁあああぁぁぁあ…。

 逆にアルモドヴァル監督作品に浸ってる方々が、王家衛作品たとえば「ブエノスアイレス」「愛の神 エロス」を見たりしたら、どう感じるんだろう。
 興味深いです。
 「なんじゃこりゃ、アジア人が真似すんな」でおしまいでしょうか?
 …………ぁぁぁ…………_| ̄|○

 ところで、ガエル君が「○○じゃなくて、アンヘルと呼んでよ。でなきゃ返事しないよ」と言い張る名前。実は自分で付けた名前アンヘルって、綴りがAngelなんですよね。


 エンジェール カミング アイムヒアーーーーー……。

 両性に愛されてやまない、地上に降りた天の使い。

「愛の神、エロス」余談

 メモ代わりのエントリーです。

 ・どうせ3作オムニバスにするなら、王家衛監督、スタンリー・クァン監督、「美少年の恋」「桃色」のヨン・ファン楊凡監督もしくはシルヴィア・チェン監督で競作してほしかったなー。もちろん男女だけじゃなく、組み合わせは自由自在ってことで。ただし、ウィリアム・チャン張叔平が過労死するかも…。トニーがどの監督と組むかももめそうだけど、いっそ全く性格や年齢の違う男を、3作全部トニーが演じるってことで…イッセー尾形にできることが、カンヌ影帝にできないはずがないっっ!

・「花様年華」本編を見たとき、唯一の不満が「カンヌ版ポスター図柄にある、背後からマギーを抱きすくめて肩に顔を埋めるトニーの官能シーンがなーーーい! 期待したのにー!」だった。
 で、その仇を「エロス」で取る王家衛(仇じゃないだろ)。
 ちゃんとチャン・チェン君がコン・リーを背後から抱きすくめてます。どーしてこれを本編で、誰が相手でもいいからトニーにやらせないかなーーー! 王家衛!!!(……まさか、身長の釣り合いの問題ですか…? うっく(;_;))

・「これってトニー&コン・リー、トニー&マギー、カリーナ・ラウ&チャン・チェンでも作れるじゃん」的な感想を他blogで見かけたけど、いやその、多分無理。
 チャン・チェンは生硬さが魅力の持ち主。喜劇にはあまり向かないほど硬質な外観。(そこを突き崩し、もろい内面を剥き出しにさせるのが演出家と共演者の醍醐味)。トニーは一見柔弱で、相手が思い切りぶつけてくる激情をにへらーんとした微笑でやんわりと受け止めて包み込むようで、実はなかなかどうして、中身はダイヤモンドのように堅固で頑固。氷のような一瞥をくれるとわかっているのに、セクハラなんか絶対できません(単に、惚れた弱み?)。トニー自身も"僕は大男人主義"と自称してるけど、「女王様にお仕え」したりは向いてない。女のべたべたした甘えを許さない。しがみついてもやんわり腕をほどいて、飄然と去ってしまう男です。
 そしてマギー・チャンは、胸がないせいもあるけど、実は性的に未分化な少年のようにしかnancixには感じられない。性格もサッパリしてて闊達そうだし。ジーンズで付き合える同性の友人としてはいいけど、ベッドシーンを見たい女優さんではありません。
 きゅっと締まった細腰、なで肩、頼りなげな首筋。性的に未分化な少年のような体型のトニーと、マギーは相似形のコンビ。香港スペシャルバージョンの「花様年華」付録で二人のベッドインシーンを見たけど……多分マギー自身のあえぎ声も入っていたけど…エロくなかったです…今までに見てきたトニーのキス耽溺&抱擁シーンの方がよっぽどエロい……ごめん、トニー…カットした王家衛は正解。ていうか、撮ろうとしたこと自体がそもそも…撮る前にわかりそうなものなのに。
 カリーナ・ラウも娼婦の爛熟した味わいを表現できる女優なんだけど、何だか彼女だと蓮っ葉さ、遊び心が前面に出てきそうで。「ウブな若者をちょっとからかってみたけど、もちろん本気じゃないのよ、遊びよーん」的な浮わついた雰囲気になりそうなのです。で、若者が引いてしまうとマジに怒りそうな。泣くときは身も世もなく号泣しそうな。
 やはりオンナのきつさに母性を兼ね備えたコン・リーと、硬質さに上目遣いの慎ましさを加え、内心は苦悶して身もだえするのが似合いのチャン・チェンでこそ、この物語が成立するんじゃないかな。

・コン・リーが安旅館のベッドに腰掛けるとき、やっぱり中国風ビーズ刺繍のあるミュールを脱ぎ捨てた。ベッドでもすんなりと長いすねの方から撮影する。王家衛&クリストファー・ドイルの脚フェチ、健在。共犯者のごとく、思わずニヤリ。

・ドレスの仕立てだけ頼まれてるはずのシャオ・チャン、黒のパーティーバッグと黒手袋も紙包みに入れた。
 黒手袋……。シャオ・チャンをイカせたのは片手…だからって、ホァ小姐が奇跡的に回復してマジに旅立って女賭博師・黒蜘蛛姐御に変身! シンガポールでやさぐれた周慕雲に出会って賭博レッスン!なんて本気にしないよーに。
 妄想し過ぎ。

「愛の神、エロス」雑感

 ……大阪「梅田ガーデンシネマ」まで、職場を定時+3分に飛び出し早足で約30分。
 何とか間に合いましたがな。
 観客は約30人。
 前3列には、スーツ姿の中年男性3人が分かれて座る。
 こらこら、予告編が終わっていよいよ始まった途端に高いびきをかくな、関西のオッサーーーン!
 ペコペコ頭を下げるのに疲れきって転職を考える、J○○日本の社員さんでは…ないですよねえ?
 
 香港では、伝統的に自分の住みかに男を迎え入れて春をひさぐ娼婦、ってのがいるようです。「裏街の聖者」でラウ・チンワン劉青雲がほれ込む娼婦、阿メイがそうでしたよね。自分の個室に男を迎え入れる。このスタイルを「一樓一鳳」(一つのビルに一羽の鳳)って呼ぶみたい。現在の香港の法律では、2人以上が同居して春をひさぐ商売をやってたら法の手が入って罰せられるけど、女の一人暮らし+自由恋愛だと、罰則に値しないらしい…。
 かつての日本なら、別宅で1人の金持ちに囲われる妾か、女郎屋などで不特定多数の客を相手にするお女郎さんや飯盛り女、茶屋か船宿で逢い引きする女、ホームレスで川べりの土手なんかで客を誘っては野外で相手をする夜鷹ってのが春をひさぐ女の代表格で、あんまり自分の生活空間に報酬目当てで不特定多数の男を引っ張りこむタイプって、聞かない。
 危険だし、第一所帯じみた食う寝る着替える空間と、男の相手をする擬似恋愛空間は分けるのが、男と女のエチケットでありエロスを持続する知恵ってもの。現に、仕立て屋見習い青年にあえぎ声が丸聞こえってことは、使用人にも聞こえまくりってことじゃないですか。
 でも、あえてその「一樓一鳳」の原型とも言える商売をやってるのが、娼婦のホァ。
 1963年のある日、仕立て屋見習いの青年シャオ・チャンがチャイナドレスの入った紙袋を抱えてホァの部屋を訪れる。
冒頭の初々しいチャン・チェン

 ちなみに、2人の中国語役名はホァ・イーパオ花怡寶とシャオ・チャン小張(…張震の愛称そのままやん)。
 あーあ、「2046」といい、まったく王家衛は60年代商売女が好きよねえ…と嘆いてしまうけど、考えてみたら60年代香港ではまだ、親の決めた許婚と結婚し貞節を守るのが一般の「女の道」。自由恋愛を謳歌し、オンナを張って気ままに生きられるのは、ダンサーやホステス、娼婦などの商売女しかいなかったのだ。
 そして、仕立て屋といえば、連想するのがスタンリー・クァン關錦鵬の「赤い薔薇、白い薔薇」(94)。主人公と結婚した世間知らずの若い妻は、世間体ばかり気にする夫が外国で飾り窓の女=娼婦を買って気ままにみだらに過ごしているのを知ってか知らずか、出入りの仕立て屋の若者と微妙な浮気の雰囲気をかもし出して、主人公を絶望させるのでしたっけ。
 あれも、採寸シーンがとってもエロチックだったです。
 そりゃ日本の時代小説にも、花魁のために精魂込めて豪華な着物を織ったり帯を作ったり、結ばれぬ運命のお嬢様にかんざしや履物を作って忍ぶ恋を伝える職人…てのが出てきますよ。しかし、着物を作る以上に旗袍(チャイナドレス)は細部まで採寸する必要がある。なんと18ヶ所も採寸するんだと、オーダーメイドした人に聞いたことがある。そりゃ……エロい
 ペニンシュラホテル内のテーラーで1回だけ、身の程知らずにもツーピースをオーダーした経験しかないnancixだって、デブのおっちゃんに「Oh、巨乳」と呟かれながら、ハァハァ息を吹きかけられ「えっそんなところまで? あらっこんなところまで?」とあちこち採寸されるのは実に恥ずかしかった。ましてあのおっちゃんが、チャン・チェン君だったら…ツーピースじゃなくてチャイナドレスだったら…平然と他の男に電話なんてしてられっかー! 悩ましいため息のひとつもつくってもんである。

 しかし、ホァは百戦錬磨の娼婦である。
 共産主義者が圧力をかける上海から流れながれて香港にたどり着いたか、食い詰めた両親に子供の頃に売られたか知らないが、純朴な青年を手なずけて、将来は自分のお抱え仕立て屋にもしてやりましょうぐらいの気概と向上心を持った職業婦人である。
 今後、有閑マダムに呼びつけられ、採寸しまくり無理を言われまくる宿命にある初々しい若者に、職業人の厳しさを教えるのも、一種の姉心である。いちいち荒い息しながら女にメジャー当てるんじゃないわよっとショック療法で鍛えるのは、決して加虐趣味とか、性的虐待とか、性的いたずらなんてものじゃないのよ、オホホホホ。
 男の悦ばせ方を熟知している彼女の手が、指が、青年の最も敏感で率直な反応を示す部分を愛撫する。
 たった一度の、
 手・淫。
 苦悶するチャン・チェンの、秀でた額に浮かぶ汗の玉。
 その羞恥と快感を我慢する苦悶の表情が…………エロい…。
 男だったら、思わず前かがみでトイレに走るところ…(こらこら! ちがーう!)

 思い切り引き付けておいてうっちゃり食らわすのが、王家衛作品で恋の優位に立つ側の男女。
 「欲望の翼」の旭仔(レスリー)は、女に親だの結婚だのを口にされた途端に露骨にしらけるし、ミミ/ルルはサブ(ジャッキー・チュン)がどんな憧憬のまなざしを向けているか充分承知の上で「私に惚れてもダメよ!」と言い放った。「2046」の周慕雲はピチピチの女体を貪ったすぐ後に、無粋なお金のやりとりなんか持ち出して牽制食らわす。
 ホァも、他の男(従兄弟?)との別れ話の腹いせに、辛抱強く待ち続けていたシャオ・チャンを図々しいと罵り、彼が精魂込めて作ったドレスを「最悪の仕立て!」とさえ言ってしまう。
 姐さん…あんまりだ…。
 男にとってたまらない屈辱の時も、シャオ・チャンは耐え抜く。
 現代日本男子なら憤然と立ち去るか、女を殴りつけて怒鳴るところだ。谷崎潤一郎の「春琴抄」以来、この手の男は日本では絶滅してるはず…いやいや、そうでもないか…。
 
 パトロンと別れて、新たな男を見つけられず落魄したホァは、使用人のおばあさんも解雇して、独りで街を離れる。
 再会したとき、ホァは態度を軟化させて、シャオ・チャンの私生活まで心配してみせる。それが却って痛ましい。
 せっかくやっとその両腕に彼女を抱きすくめたのに、ホァは病身で街娼を続け、またもや安宿に男を連れ込んで体で稼いでいるのをシャオ・チャンは知ってしまう。
 ランニングシャツ姿で、仕立て屋の作業場で、空しく持ち帰ったドレスのすそに手をくぐらせ、前かがみで上へ上へと愛撫していくシャオ・チャン。
 手・淫。
 ………痛ましくも…エロい…。
 トイレタイムその2をください…(こらこら! 我慢しろー!)。

 いや、白い大きなぬいぐるみさんに話しかけるだけで、エロなフェチズムに走らなかったトニーさんは、思えば可愛かったよなぁ…。
 石鹸を手でまさぐって苦悶してたら、フェチズムじゃなくてヘンタイか…。

「オペラ座の怪人」も見てきたぞ。

 「オペラ座の怪人」を、親友Oちゃんへの励ましもあって一緒に見に行きましたよ。
 劇団四季ファンクラブ会員のOちゃん、身内の悩み事でへろへろなもんで。

 二人で最初に劇団四季ミュージカル版「オペラ座の怪人」を見に行ったのは、堂島に昔あったMBS劇場だったと思う。旧毎日新聞社社屋のところにあった劇場でした。
 ファントムが市村正親、クリスティーヌが野村玲子だったかなあ。ラウルはWキャストで…あれえ? 山口祐一郎さんだっけ、石丸幹二さんだっけ?
 あの頃は夢中になりましたねえ。Oちゃんと「5番のボックスは空けておけと言ったはずだー!」
なんて台詞遊びしました…いまだにしてます。
 ガストン・ルルーの原作小説もJETさんによるハロウィンコミックス版もさっと読破。テレビ映画版(83)もテレビ放送で見ワした。映画「ある日どこかで」、ドラマ「ドクタークイン 大西部の女医物語」のジェーン・シーモアがクリスティーヌ役と、怪人の妻で自殺する歌手の2役を演じてましたが、クリスティーヌが芸のためなら有力者の床にだってはべる女の役で、何か違ってました…。確か「シャンデリア落下がクライマックスでラスト!」というとんでもない筋立てだったかと。
 あ、ホラー仕立てバージョンは一切見てません。ブライアン・デ・パルマ監督のロックオペラ「ファントム・オブ・パラダイス」だけは大毎地下劇場で、ワタシの記憶が正しければ、確か「ロッキー・ホラー・ショー」と2本立てで見たよーな。実に濃い客層だったよなあ…。

 追憶はこのへんにしておいて、今回は何といっても! 全編アンドリュー・ロイド=ウェバーの名曲ですよ! そりゃもうフィルムコンサートだと考えてもお釣りが来ますよ! スワロフスキー・クリスタルのシャンデリアに灯りがぽっとともり、ぐわーっと上昇し、炎がぼっぼっぼっと劇場内に自動的にともされていき…はーーーーーったまらん!
 試聴はここで
 サウンドトラックに特化したSONY musicのサイトもなかなか。

 舞台劇では自らの妄想…もとい、想像力で補強する努力が必要でしたが、今回は不要! オペラ座だけでなく、墓場の彫像も凄い。どう見ても日本人なカルロッタや短足のクリスティーヌを、乏しい想像力で補強する必要なし! まんまワガママプリマドンナ、まんま怯えがちな可憐なヒロイン! 舞台裏の猥雑さも想像以上。
 その上、ですよ。衣装が衣装が。お耽美がくるりと輪を描くヴィスコンティの「山猫」を参考にしたというんですが、ラウルの雪上にもまばゆい白ブラウス! まさに「ポーの一族」で、貴族階級出身の美少年エドガー・アラン・ポーが着ていたような白ブラウスなんです。あうあうあう「どうぞバラを、僕は君からもらう」ですよ!(何興奮してるんだろ、自分) それで白馬にまたがって疾走するですよ! 銀の剣(推定)でフェンシングですよ!

 可憐なクリスティーヌも、胸の谷間露出のドレス着まくりです。楽屋から拉致されるわけなので、ほとんど下着にガウン状態で地下に下りていくのです。コン・リーだとトニー・レオンでなくても(あ、ちょっと、窒息しそうで巨乳怖い…)と後ずさりしたくなりますが、芳紀17歳(撮影当時)のエミー・ロッサムです。かまへんかまへん。足でもちちでも減るもんじゃなし、どんどん出したって。でもすっぽんぽんで風邪引きなや(関西オバチャン口調)。
 でも、お口は閉じなさい。何ですかその、いつもいつもいつも半開きの唇は。品が無いしだらしない。マダム・ジリーと化して杖で打ちますよ!

 そして圧倒的なセクシーダイナマイツ! 目だけで妊娠させるのがトニー・レオンなら(…濡れ衣です)、歌声だけで処女を奪わんばかりのファントムですよ! おフランスの話なのに、なんでラテン系なんでしょう…。黒マスクをつけたときなんて「よっ怪傑ゾロ! アントニオ・バンデラス兄貴!」と大向こうから声をかけたくなりました。とても地下でフィギュア作って愉しんでいる、引きこもりオタクとは思えない。四季版でも等身大フィギュアが出てきてのけぞりましたが、今回は輪をかけてます…。あれですか? マン盆栽の世界とか教えてさしあげると、大いに話が弾みますかね? それとも速攻で絞首刑ですかね?(怖)

駆け込み「オールド・ボーイ」

image/nancix-2004-12-01T23:55:17-1.jpg  3日に上映終了なので、映画の日に「オールド・ボーイ」をレイトショーで見てきました。
 梅田のTOHOプレックス・スクリーン7は、ほぼ満席でした。若いストリート系カップル率多し。

 原作劇画、連載中に目にしていたはずなんだけどなあ。絵柄が好みじゃなかったんで、全然覚えてないや…やたら観念的なモノローグが多かった気がする。

 まずは俳優から。
 あー、チェ・ミンシクさん、トニー・レオンより1歳下なんだよなあ。見えないよぉ。オジサンなんだけど、確かに単なるオジサンにはない男の魅力がある。つぶらな瞳のせいか? 意外に敏捷な動作のせいか?
 (15年の想像訓練の成果は役に……)で下半身見つめて(立たなかった)としょぼん、は最高にトホホで可愛い!

 ユ・ジテくん…「リベラ・メ」の若造消防士の役どころ、「春の日は過ぎゆく」の繊細演技は、まだ数年前のことなのにぃ。男の子ってちょっと目を離すとすーぐ男に成長しちゃうんだから。シャワーシーンやオールヌードには何の意味が? サービスショット? 背中の下からお尻の上にかけての入れ墨は何の意味が? いろんな役を与えられる度量の広さも、昨今の香港映画界が忘れかけてしまってるもの。ショーン・ユー余文楽君やF4に、どんどんいろんな役を演じさせないと!
 そして昨今の中華映画界に決定的に欠けているもの、それは。

 ロ・リ・ィ・タ。

 透明感があって初々しくてみずみずしくてはかなげで、守ってあげたくなるようなあどけない女の子がいない。
 デビュー当時のジジ・リョンみたいな子が、皆無。
 今のツインズじゃあ、イーキン・チェン鄭伊健より強いし(爆)。
 若手女性歌手が覚醒剤不法所持で逮捕されてるようじゃ、先行きが思いやられる。
 これじゃあロリコン大国・日本にアピールできないよ? ミドちゃんみたいなベッドシーンもOKなタイプ(どうせおっぱいはNGだとしても)を、早急に育成しないと。

 しかし、まさかこんなに要所要所の小ネタが「インファナル・アフェア」の影響を受けていようとは。あれも、これも、あのヒトの最期の場所も。「インファナル・アフェア」の香港公開が2002年12月、「オールド・ボーイ」が2003年11月? 監督は映画評論家でもあるというし、当然、韓国でも話題の映画だからチェックしてたんだろうなあ。どーして誰も教えてくれないのよう。知ってたら試写会に行くか、もっと早く見に行って取り上げてたわよう。言わないことにする暗黙の了承でもあるんですか?
 「素晴らしい企画があったら、ぜひ声をかけてほしい」と手紙で売り込んだというアンディ・ラウ兄さん、了承済みなんですね?

  監禁部屋やラブホテルの壁紙の模様、どうしてあんなにもウィリアム・チョン張叔平テイストなんだろう。時間経過を日めくり的文字板で示すのも、香港製時計で時間経過を示すのが好きな王家衛作品に通じている。左右入れ替えや静止画から動画への滑らかな場面転換テクはMTV風。テンポのよさは、クライマックスまでは抜群。
 あと、監禁解放直後の場所が草原だと思ったら、実はビル屋上…を俯瞰で種明かしするっていうのは「シクロ」で、トニーが変態男をボコボコにするシーンを喚起させた。
 もちろんタラちゃんことクエンティン・タランティーノを筆頭に、映画ファンにそれと気づかせるほど露骨な「好みの映画のパッチワーク」は有りになってしまってる。でもオリジナルが尊いという気持ちも、忘れたくはないなあ。

「狼~男たちの挽歌・最終章」再見。

 実はnancixが入手していた「狼~男たちの挽歌・最終章/喋血双雄」は、レンタル落ちの中古ビデオで途中で映像が乱れるしろもの、しかも日本語版でした。だからずっと、
 主人公の仕事人=ジェフリー(チョウ・ユンファ周潤發)
 主人公の親友で殺しの請負人=シドニー(チュウ・コン朱江)
 ジョンを追う刑事=リー刑事(ダニー・リー李修賢)
 その相棒の年上刑事=チャンのおやっさん(ケネス・チャン曾江)
 ヒロイン=ジェニー(サリー・イップ葉倩文)
 極悪非道な殺しの依頼人=ジョニー(シン・フィオン成奎安)
だと覚えてたんですよね。

 広東語音声で、中国語字幕で見たら、全然印象が違ってました。最初に見たときは「アジア映画らしからぬ、フランス映画のようにスタイリッシュでキザなまでにダンディ、ニヒルな必殺仕事人」の話だと夢中になったんですわ。
 それが、
 主人公=阿荘または蝦頭(マヌケ頭)
 主人公の親友=四哥
 刑事=李鷹または細B(ちびのあかんぼ)
 その相棒の年上刑事=老曾
 ヒロイン=ジェニー
極悪非道な殺しの依頼人=標的の甥
 となると、まぎれもなく熱い血のたぎる香港映画です。
 ちなみに日本の配給会社が勝手に挽歌シリーズにしてしまっただけで、ストーリーは「男たちの挽歌」3部作と関係ないです。

 まだ字幕ではなく日本語吹き替え版で見たから、違和感はなかったにせよ、やはりとっさの作り話でつけた渾名を、友情の証として守り通すユンファ兄貴の心意気、「俺たちは同種の人間なんだ」とユンファに微笑みかけ、「俺だって(自分なりの)正義を通したい。なのに誰も信じてくれない」と目を伏せる李鷹刑事の"組織の歯車になりきれない孤独"がぐっと胸を詰まらせました。
 でもどこの国だろうが、警告なしに発砲しちゃいかんのは当たり前。

 確かに演出はところどころ、大げさ。喜劇の一歩手前でかろうじて踏みとどまっている。李刑事が警察でユンファ兄貴の似顔絵作らせるところなんて、容貌の特徴なんか全然言わない。「そんなノロケを聞かされて、絵が描けるかーーっ!」と似顔絵担当者が暴れ出さないと絶対おかしいぐらいの傾倒ぶりが笑える。しかもその絵(アニメのキャラクター設定調だがかなり似てる)を、自室の壁面いっぱいに張り出して、惚れ惚れと眺めるか。
 愛ね、愛。
 追う者と追われる者、ジャン・バルジャンとジャベール警部orリチャード・キンブル医師とジェラード捜査官の絆を通り越した、一目惚れって奴よ。
 と全世界的に誤解しますよそりゃー。

ペ様の「スキャンダル」

 イって、いえ行ってしまいました。

 アレです。ペ様の「スキャンダル」。中国語(繁体字)で「挑情寶鑑」。

 浮世の義理で、神戸で。レディースデーにちなんで、女3人で。
 さすがに満席ではなかったです。
 それに、アレです。韓国映画って、いつのまにハルモニとオモニが乳児連れで見るものになったんですか? 「おもち」「いしうす」「桑の葉」なんてコリアンエロスものしか入荷しなかった時代には考えられなかった、ペ様効果です。
 乳児ですよ乳児。おっぱい見ても(ごはんー)としか思わない年頃のいたいけな子どもに、何という情操教育を施すことでしょう。恐れ入りました。

 上映中に結構「あー」とか「アンアンアン」とか、いたいけな声が聞こえてました。
 …なんてこったい。

 つくづく思ったのですが、ほうちゃんこと侯孝賢はこんなふうに「フラワーズ・オブ・シャンハイ」を解りやすく撮影すべきだったのです。
 あの時代の上海高級娼婦がどんなふうにメイクし、どんな下着をつけ、どんな装飾具を愛好してたのか、どんな床入りの用意をしていたのか、しっかり見せて欲しかったのです。
 ほうちゃん、アップを使いなさいアップを。せっかくあれだけの骨董品をそろえながら、遠景で終わりとはなんたること、フィックスでカメラを据えるでない。%n 眠気を誘う現代音楽なんか使わずバロック音楽でも使うべきだったのです。

 ホントにほうちゃん、今からでも反省して「スキャンダル」方式で撮り直してほしいです。せっかくミシェール・リー、カリーナ・ラウ、トニー・レオン、カオ・ジェという一流俳優+評価保留の日本女優を使いながら、痛恨の極みです。
 ガラガラの今はなき広~い梅田劇場で「フラワーズ・オブ・シャンハイ」を見たnancixが言うのですから信じて。

 実はnancix、気が重かったんです。ペ様には何のセックスアピールも感じないのに、全編これあ~んなことやこ~んなことを延々と繰り広げるのを見なくちゃいけないのかと。

 …すいませんでした。あ~んなことだけで、こ~んなことはなくて、「陰陽師」を短くしたようなチャンバラシーンが一応ありました。やたらと剣の修行に励むペ様。筋肉誇示だけが、理由ではなかったのね。
 でも「HERO 英雄」の残剣様並みに、殺気を察知するレーダーが時々故障してましたけど。

 油断大敵。

 何せペ様がたらしこもうと手練手管を駆使する相手が、MV「THE NAME」でトニー・レオンの相手役を見事に演じきったチョン・ドヨン全度研です。おきゃんな不良娘と妖艶なヤクザの情婦の2役を、台詞なしに演じきった彼女ですから、ついつい応援したくもなる。(あかんあかん、そんな見え透いた歯の浮くようなペ様の台詞に動揺するでない。あーたにはトニーに与えたキスの操を守ってもらわなくちゃ! そんなに困ってたら背中向けたペ様がホクソ笑むに決まってるでしょ!)と思えば、その通りにほくそ笑むペ様。

 あー「花様年華」の周慕雲さんがこんなにわかりやすい色男だったら、話は簡単だったのに。

 周さんもペ様も、お互い雨に濡れまくって「水もしたたるいいオトコ」ぶりをアピールしてたし。

 で、勝手に確信しました。

 勝てる……! 絶対に勝てる!

 「2046」で国民的大女優コン・リー鞏俐も小娘チャン・ツイィーもたらし込むはずのゲーブルひげトニー・レオンは、必ずや貴族ひげペ様に勝てる! あの程度の微笑み力に負けるトニーさんじゃない!

 ぺ様が慈悲、親しみ、愛情、蔑視、失笑の5種類の意味を持つ微笑を武器とするなら、トニーは微笑に10種類の意味さえ込められます。伊達に普段から微笑みの威力で非力な身を守ってきたトニーさんではありません。
 おまけにお尻出してのベッドシーン熱演。んーふふふふ~(田村正和風スケベ笑い)、お楽しみに。

韓国映画「ブラザーフッド」泣いた黒鬼。


 大阪での、韓国映画「ブラザーフッド」の完成披露試写会に行って来ました。
完成披露試写会招待状 最初は「太極旗を翻して」とか訳されていた、朝鮮戦争当時のお話です。

 日本との戦いでなのか父を亡くし、熱病で声が出なくなった母と高校生の心優しい弟(キ○タク)、そして幼い妹弟を抱えて働く婚約者(松たか子)を養うため、靴磨きになった武蔵こと市川新之助。
 北と南の戦争が始まったある日、避難民のはずのキ○タクと新之助は18歳~30歳の男というだけで緊急召集され、ろくな訓練も受けることなく過酷な戦場に駆り出される。弟の除隊のためにとスタンドプレーに励み奮闘する兄は、徐々に殺し合いの快感と英雄視される喜びに酔いしれて黒鬼さんに変わり果てていき、弟はそんな兄を畏れ、反発し…。

 違いますね。新之助=チャン・ドンゴン張東健、キ○タク=ウォンビン元斌、松たか子=イ・ウンジュ李恩朱です。でもホント、学生服に学生帽姿のウォンビンは、斉藤由貴主演でドラマ化された「おとうと」(90)でのキム○クを彷彿とさせます。「姉さん、僕あんパンが食べたいよ」…の代わりに「アイスキャンデー、先に一口食べてよ、兄さん」です。
 戦闘シーンに、何だか特殊な撮影技法を使っているのでしょうか。コマ落とし? まばたきもできないぐらいリアルで迫真のシーンが繰り広げられます。腕も足もバンバンもぎとられていきます。「ウィンドトーカーズ」のジョン・ウー、負けてるよ…。
 同じ民族、同じ見かけの両者の戦いだから、日本人でも余計に血肉をもぎとられるような痛みを感じます。北側を操る中国人民軍兵士もちょろっと出てきますが。

 しかしこの兄弟、あたりをなぎ倒す勢いで愛憎をぶつけ合います。そりゃもう、
「兄さんっっ」「弟よ!」ぐわしっっっ!
 です。
 犠牲者多数、周囲大迷惑。「男たちの挽歌」の兄弟の相克&男の友情で香港映画にハマったnancix、大狂喜。
 戦場だろうが街中だろうがおかまいなしです。壮大な兄弟喧嘩の前には、国家イデオロギーも共産主義も自由主義もふっとびます。「国を守るためには~」「国なんかどーでもいい! 俺には弟がーっ!!」「兄さん、もうやめようよーっ」「うるさい、弟最高、弟が全てなんだーーーっ!」です。いや、そこまでは言ってないけど。
 こんな兵士の上官にはなりたくないもんです。
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